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第5話 日本はどんな国を目指すべきか工藤 最初に白石先生がおっしゃったことが非常に気になっていて、要するに答えはないのですが、日本が将来、世界の中で何を目指すべきな のか、という点です。外交はその中でそれを実現する手段になると思うのですが、こういう体系性はまだ感じられない。鳩山政権の動きを見ていて何か感じるも のはあるのか、それともないとしたら、今、何を考えるべきなのでしょう。 大国意識を捨て、ミドルパワーの発想を白石 その答えの一つの可能性は添谷さんがまえから言っているミドルパワーだと思います。あるいは少し妙な言い方をすれば、「ミドルパ ワー」とは言わないで(というのは、このことばはいろいろ誤解を招きやすい言葉ですので)、しかし、同時に、日本は超大国ではない、大きなオランダ、オー ストリアでもない、日本はイギリス、フランス、ドイツ、カナダなどと同じクラスの国だ、それをどういうかだと思います。 明石 それは「ミドルパワー・プラス」だと思いますよ。 白石 ミドルパワー・プラスでもいい、そういう一種の思い切り、それが国民的に合意される必要がある。それが あってはじめて、どういう国を作り、世界の安定と繁栄のために寄与していくか、みんな納得できるだろう、というのが僕の考えです。しかし、ミドルパワー・ プラスがはたして日本の多くの人たちに受け入れられるのか。日本人のあいだにはまだずいぶん大国意識があると思います。 明石 ありますけどね。日本は安保理の拒否権をもった常任理事国を目指して、ダメになった。それで、拒否権のな い常任理事国を目指そうという動きに切り替わりつつある。誰もまだはっきりとは言っていないですけど。添谷さんのミドルパワーの延長線上にある日本の国際 的な役割というのがこれから具体化していくことだと思いますけどね。
北東アジアは核保有国がひしめき合っている明石 今まで国連で日本が取ってきたいくつかのイニシアティブのうち、国連大学を作るとか、国連の分担金制度の 改正とかでは多数派を作らないと達成できないので、かなりミドルパワー的な弾力性を持って行動し、成功した。そういうケースはあります。 添谷 ええ。そういう意味では、アメリカとの関係を前提にしながらですが、僕は韓国やASEANは日本にとって 非常に重要な協力相手、パートナーだと思います。これはレトリックじゃなくて、同じ目線で同じアジェンダを追求しながら、同じ地域秩序を語る対等なパート ナーですよ。だけど日本はそう見られていないので、そういう言い方をしても彼らは胡散臭く思い、「お前ら何か魂胆あるのか」みたいな反応をされてしまう。 それで、結局、日本外交が立ち行かないとか、戦略が出ないとかいうことになっている。ただ民主党政権になって、もう一度、周りが日本の変化を考え直したと いうのは非常にいいきっかけだと思います。 工藤 そういう意味では今の民主党にとってはチャンスでもあるわけですね。ただ、今の民主党は国民の世論だけを 利用して、選挙的な対応だけで動いているような状況なので、足元が崩れ始めているわけです。 添谷 やっぱり戦略論がないのです。 明石 この政権には、さっき白石さんがおっしゃった「言葉の軽さ」というものをもっと意識してほしい。それと、 アイデアの重さをもう少し意識してほしい。「主体性」なんて曖昧な言葉に逃げ込まないで、具体的なことで、環境問題でも、軍縮問題でも、日本らしいイニシ アティブをとれる問題はたくさんあると思います。 添谷 民主党の中で、そういう政治家を育てていくしかない。戦後初めての本格的政権交代で、画期的な変化です よ。だから時間をかけてゆっくり、ということでやるしかない。 明石 それだけの時間が果たしてあるのかということもありますね。 添谷 だからこそ、変なことをやらないでほしい。 工藤 そうですよね。修復するのがすごく大変ですから。前に行くのが大変なのに、壊すのは簡単です。 添谷 アメリカがいるうちは沈まない。鎖がつながっている。でも、そこにやっぱり気付かないといけない。底まで 沈んでやっと気付いて、引き揚げられるというのは、この国の未来にとっても悲劇だと思います。 <了> |