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財政 印刷 Eメール
評価基準 評点
現時点の到達点についての実績評価(40点) 形式要件(20点) 10
実質要件(20点) 5
実行過程(30点) 6
説明責任(30点) 0
合計(100点) 21

評価の視点

 菅政権の財政政策の100日評価は、2011年度の予算案の中に菅政権が約束する様々な政策課題がどう位置づけられたかが対象となる。2011年度の予算案は参議院選後の改造内閣発足後99日目で閣議決定されており、この予算案の評価は以下の二つの観点から行われることになる。
一つは菅政権が参議院選時のマニフェストで掲げた「強い財政」の実現に基づき、財政の際限のない膨張に歯止めがかけられ財政の規律が保たれているか、あるいはそのための努力を行い、それらが日本の財政再建の道筋と整合性がとれたものとなっているのか。
二つ目は2011年度の予算は参議院選時だけでなく、昨年の衆議院選挙のマニフェストを実現する形で予算案に的確に反映されているか、またはそのための努力を予算編成過程で行ったかである。実現しなかったり、修正を余儀なくされた場合はそれを国民に説明を行い、政権として国民との約束を実現する姿勢をどれだけ強く持ち続けたのかも、判断の対象となる。

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実績評価

<形式要件>
2011年度の一般会計総額は92兆4116億円で前年度当初を1124億円上回る過去最大となった。菅政権がマニフェストで掲げた「強い財政」に基づく財政健全化の大枠に基づいて6月に閣議決定した「財政運営戦略」は、一般歳出の大枠の71兆円以内、国債発行は前年当初(約44兆円)を上回らないことなどを目標としている。政府予算はこれらの目標は達成しており、この点は評価できる。たが、財政規模はリーマンショック以後の高い水準を続けており、2年続けて当初ベースで国債が税収を上回り、借金が発散する異常な状況となっている。
また菅政権は、財政健全化のために2020年までに基礎的財政収支の黒字を目標とし、2015年度まではGDP対比で赤字の半減を国際公約としているが、2011年度の赤字は約22.7兆円あり、前年度からの改善も小幅で、その実現の目途は現時点では立っていない。今回の予算でも一回限りの税外収入(埋蔵金)に頼る構図が続いており、今年度も7.2兆円(昨年度は10.6兆円)が捻出された。基礎年金の2分の1の国庫負担は税制の抜本改革の遅れから財源不足に陥り、埋蔵金などの臨時財源で工面した。埋蔵金は今回の措置で底を完全についており、今後はこうした臨時措置には頼れない状況になっている。
マニフェストの支出に関しては、子ども手当は昨年比倍増の満額実施は見送ったものの、3歳未満で増額し、農業の個別所得補償制度では概算要求の満額を超える額を計上するなどして3.6兆円(昨年比6000億円増)を計上した。マニフェストの実現にこだわる姿勢を菅政権は堅持しているが、財源面や政策目標で民主党のマニフェストの大部分は修正されており、マニフェスト工程との比較で言えば4分の1の実施に過ぎない。民主党は4年間で16.8兆円のマニフェスト支出の財源捻出のため9.1兆円の無駄削減を約束したが、国の総予算の徹底見直しは財源捻出の観点から行われておらず、人件費に代表される経費削減も小幅でしか進んでいない。その上、注目された事業仕分けでの無駄削減寄与は、約3000億円程度に過ぎない。
マニフェストの全体設計の破たんは今回の予算で明確になっており、今後の実施は財源面からかなり難しい状況になっている。むしろ今予算ではペイアズユーゴーの原則の導入で新規施策には財源確保が求められており、マニフェストの支出はこの面からも縛りがかけられた。

<実質要件>
2011年度予算が問題なのは、財政健全化に向かう予算でありながら、歳出規模は過去最大で、国債累増の異常な事態が回避できていないことである。政府が定めている財政再建の目標である2020年の国のプライマリーバランス(PB)の黒字化に向かう道筋は今回の予算でも見えていない。この点で実質要件での評価はかなり低くなる。
2011年度予算は6月に閣議決定した「財政運営戦略」に基づき行われ、その大部分でその目標を達成している。歳出や国債費にキャップをかけることで、毎年1.3兆円程度の社会保障関係費の自然増も拘わらず、歳出をしのいだという目標は一定の枠組となりえるが、その延長線上にPBの黒字があるわけではない。第一の理由は、こうした支出抑制と2015年のプライマリー赤字のGDP対比での半減などの目標との連動がないことである。内閣府の試算ではこの目標を実現するには8兆円程度の収入増が必要とされており、消費税の増税までの間の支出抑制という性格以上のものではない。さらに、この歳出キャップの水準や収支尻である国債発行額自体を目標として設定することの問題もある。71兆円と44兆円という水準は、リーマンショック後の異常な財政状況を前提とした高止まりの目標であり、その水準を容認することになる。そもそも収支尻は歳出削減と歳入増の増加の結果であり、この結果を先に前年並みで縛ることは、増収があっても支出増を容認してしまい、収支の改善を進めない要因となりかねない。また、「財政運営戦略」ではRAY GO原則も導入された。この原則下では支出、収入両面で新規施策に対する財源捻出を求めることで新規施策の抑制が働くことになり、現実的に今回の予算でも機能したことは評価できるが、法人税の5%の引き下げの際にその財源は確保できないなどすべてに厳格に適応されたわけではない。
この財政健全化を意識した「財政運営戦略」を閣議決定後、菅政権は5兆円規模の10年度補正予算を成立(11月26日)させている。財政再建化で税収の大幅な伸びを背景にこうした支出を行うことに疑問があるが、今回の2011年度の予算をこの補正予算と一体的に考えれば、さらに歳出規模を大幅に引き下げることはできたはずである。一体的に考えるべきとの理由は以下のとおりである。

①    経済への影響という意味では、国で補正が成立し、1700以上ある地方議会で議決が行われるなどのタイムラグを考えると、その効果は11年度にも広く及ぶこと。
②    補正には、住宅版エコポイント拡充(グリーンイノベーションの推進)、インフラ・システムの海外展開などの成長戦略や、地域活性化交付金(地方が自由に使えるお金を増やす)など、11年度本予算で対応すべき経済政策が前倒し的に盛り込まれており、11年度以降の予算で改めて支出計上が必要になる国庫債務負担行為が含まれていること。
③    補正の財源に景気回復で増えた税収増を充ててしまっていること。

景気の回復に連動して税収が伸びても、それを政治的な理由で安易に使ったり、予算の規模を高止まりさせていては財政健全化は果たせない。その点で菅政権の財政再建に関する覚悟は疑われてもやむをえまい。
そもそも補正が必要だったかも疑問である。リーマンショック後のどん底からの立ち上がりで、円高が騒がれた時期ではあったが、補正が国会に提出された10月直前の2010年7~9月期における実質GDP成長率(前期比年率換算)は4.5%で、日本経済は5%程度の経済成長をしていたことになる。補正予算のベースである10月8日に閣議決定した経済対策について、「ねじれ国会での早期成立をにらんで野党の要望を丸のみした」「補正には公共事業がかなり多く含まれている(「コンクリートから人へ」の逆流)」というのが、多くのメディアの評価だった。
最後にマニフェストの実行に関してである。今回の予算は結果的に衆議院選時のマニフェストに描かれた項目の実現にこだわる姿勢を示し、前年を上回る一般会計で3.6兆円、事業費で4.7兆円の予算を計上している。しかし、ペイアズユーゴーの原則で財源が見つからない以上、マニフェストの施策は実現できないということがはっきりと予算で示され、マニフェストの実行に関するルールの変更が明らかになった。本来であれば、修正を行うのならば資金の手当て面だけではなく、民主党のマニフェストの中で何が優先順位か、何を断念するのかを政府の意思として示すべきである。それが今回の予算では明らかになっていない。
 

実行過程

 今回の予算編成は民主党が概算要求から行う本格的な編成となった。そのプロセス6月22日に閣議決定された『財政運営戦略』で大枠のルールが決まり、さらに予算のシーリングとなる「平成23年度の予算の概算要求組み換え基準」が7月27日に閣議決定され、さらに12月16日に「予算編成の基本方針」が閣議決定され、予算案の決定となった。だが、政治主導によるこの予算編成プロセスも多くの問題点があり、高い評価を与えることはできない。
このシーリングの考え方は、社会保障の自然増の1.3兆円と元気な日本復活の特別枠の1兆円で、計2.3兆円をどう生み出すのか、という観点で構成されている。そのため、社会保障と地方交付税などを除いた歳出規模23兆円の中から10%のカットが(深堀の場合は特別要求を認める)求められ、この特別枠を生み出すために政策コンテストが導入されている。
だがこの特別枠に対する要望は2.9兆円となり、これを1.3兆円(当初の1兆円の枠に深堀分を上乗せして)に絞りこめず、結果的に予算では2.1兆円で決着することになる。つまり社会保障分の1.3兆円を加えると当初の支出予定が2.3兆円から3.4兆円に膨らみ、その分を捻出するために、事業仕分けでの削減分の寄与や経済予備費を充当して賄うという混乱を招いている。この特別枠で決定した項目も米軍の思いやり予算など、本要求で行うべきものも多く、枠の中で重視した成長戦略事情の課題は少なかった。要望をそのまま受けてしまった形で、結果としてシーリングは実質的に機能しなかったことになり、評価できない。
ここでの問題は、歳出増に向かう政治の意思を政治主導ではコントロールが難しいこと、何を削って何を優先するのか、政治の判断が曖昧だったことがある。ただ、もともと暫定的だとは言え、毎年1.3兆円増加する社会保障関係費の増加をそのまま容認して、ほかの項目で賄い続けるという考え方は持続的ではないし、財政の規律をも徹底するという点で疑問がある。
さらに今回の算編成プロセスで来年の地方選挙を意識した様々な政治的な判断が優先され、その中で編成プロセスが混乱し、財政の規律の維持で、菅首相が十分な指導力を発揮したという形跡は見えない。むしろ、物価スライドに伴う公的年金のわずかな減額自体も据え置きを一時、厚生労働大臣に指示するなど、腰の据わらなさを見せつけた。
 

説明責任

 財政健全化による「強い財政」に実現は菅政権の重要課題だが、今回の予算で示された71兆円の一般会計の歳出(国債費などを除いたもの)や国債発行の44兆円以内をこの3年間維持することで、国債公約であるPBのGDP対比の赤字半減や2020年の黒字化がどう実現できるのか、説明できていない。
そのためには社会保障の制度改革や財源としての消費税の増税の問題は避けられないが、参議院選挙時に増税を言及した以降、口を塞いでおり、国民への説明という点で評価できない。
さらにマニフェストの実現に関しては、10月の所信表明で「マニフェスト実現には、引き続き誠実に取り組みます。財源の制約などで実現が困難な場合は、国民に率直に説明し、支給の方法や対象を含め、国民が納得できる施策に仕上げていきます」と、菅首相は発言している。しかし、2011年度の予算では、すでに衆議院選時の16.8兆円のマニフェストの実現とその工程表と財源捻出手法は破たんしたことが明らかで、さらにペイアズユーゴーの原則で財源が見つからない以上、マニフェストの施策は実現できないというルール変更がはっきりと示されたのに、予算後発表後の記者会見では「相当程度前進した」と答えるのみである。すでにマニフェストの広範な修正が行われている以上、政治の意思として何を実現して何を実現しないのか、マニフェストの見直しを国民に説明するべきだが、現時点では国民に向かい合って政治を行い、必要な説明は行うという姿勢が全く見られない。
 

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