Payday Loans
   
「未来選択」は言論NPOが運営するマニフェスト評価専門サイトです。
【メイトになると最新情報】がメールで届きます。
言論NPO

 

2012年衆院選対応「未来選択」新サイトオープン

 2012年衆院選対応の「未来選択」はこちらに移動しました

言論NPOとは

日本のメディアや言論のあり方に疑問を感じた多くの有識者が、日本の主要課題に対して建設的な議論や対案を提案できる新しい非営利のメディア、言論の舞台をつくろうと活動を始めた認定NPO法人です。
⇒詳細はこちら

▼参加したい方はこちら


▼言論NPOのツイートはこちら

▼お問い合わせはこちら

経済 印刷 Eメール
評価基準 評点
現時点の到達点についての実績評価(40点) 形式要件(20点) 12
実質要件(20点) 8
実行過程(30点) 8
説明責任(30点) 4
合計(100点) 32

評価の視点

   菅政権の経済政策を評価する基本的視点は2つある。第1点は、適切なマクロ経済政策運営がなされたかとの観点からの評価。評価対象は、①予備費9179億円を活用した「円高・デフレへの緊急対応」、②補正予算(円高・デフレ対応のための緊急・総合経済対策、③日銀が実施した包括緩和の3点とする。 
    2点目のポイントは、政府の新成長戦略がどこまで実行に移されたのかの評価。これは、上記の予備費の活用や補正予算、および23年度税制改正、予算編成を対象とする。その際、どこまで経済対策や税制改正、当初予算等に盛り込まれたのか(形式評価)と政策内容自体の妥当性(実質評価)に分けて評価する。

argaiv1089

実績評価

  まず、マクロ経済政策運営について評価すると、その具体的アウトプットは、①9月10日に閣議決定された予備費9179億円を活用した「円高・デフレへの緊急対応」、②11月26に成立した補正予算(円高・デフレ対応のための緊急・総合経済対策、③10月5日に日銀が実施した包括緩和の3点である。
  9月の「円高・デフレへの緊急対応」では、雇用を基軸とした経済成長の実現を目指してステップ1~ステップ3までの三段構えの対策を示し、その中でのステップ1と位置付けられている。その内容は、①雇用の基盤づくり(1750億円程度)、②投資の基盤づくり(1200億円程度)、③消費の基盤づくり(4500億円程度)、④地域の防災対策(1650億円)、⑤規制改革の5本柱となっている。本対策の効果は、GDPを0.3%程度押し上げ、雇用創出・下支え効果を20万人程度と発表されているが、これらの政策の大半は、従来事業の延長、拡充に止まっており新規性には乏しく政策効果も一部を除いてさほど大きくない。例えば、家電エコポイント制度の延長が一定の需要押し上げ効果を持ったと判断されるが、いずれ大幅な反動減を招くという意味で割り引いて考える必要がある。また、最も重点を置いた重点分野雇用創造事業については、都道府県に設置された事業基金の積み増しによってどの程度の雇用か創出されたかは不明である。
  次に、ステップ2と位置付けられた補正予算だが、総額は4兆8513億円、公共事業の前倒し2000億円を加えると5兆円を超える規模となり、具体的内容は、①雇用・人材育成(3199億円)、②新成長戦略の推進・加速(3369億円)、③子育て、医療・介護・福祉等の強化による安心の確保(1兆1239億円)、④地域活性化、社会資本整備、中小企業対策(3兆706億円)となっている。本補正予算は、成長戦略関連の他、社会保障関連、学校耐震化、地域活性化交付金など地域対策に集中しており、成長率押し上げ効果は0.6%程度、雇用創出効果は45~50万人程度と発表されているが、短期的な需要拡大効果はそれほど望めないとみられる。
  また、日銀の包括緩和は、8月に米国FRBの量的緩和第一段の際、日銀として機動的な対応が遅れ、円高・株安を招いた反省を踏まえて、米国に先んじる形で、大胆な緩和策を実行した。その内容は、政策金利0%~0.1%と実質ゼロ金利にする、②消費者物価上昇率が1%程度になることが見込まれるまで、実質ゼロ金利を続ける、③5兆円程度の基金を創設し、国債、社債、CPの他、ETF(株価指数連動型投資信託)、REIT(不動産投資信託)の買い入れという非伝統的な金融政策を含むもので、社債プレミアムの低下、株価下支え、REIT価格上昇など「リスクプレミアムの縮小」という所期の目的をある程度達成している。
  総じて、マクロ的な観点からは、財政政策は新規国債を一切発行せず実施した点は評価されるが、その分、政策効果も小さく緊急対策としての色彩も薄い。結果的に、金融政策に大きく依存する政策運営であった。
それでは成長戦略の実行という観点から、経済政策をどう評価するか。この点については、本来、新成長戦略の工程表に盛り込まれた各種施策がどこまで予備費の活用や補正予算、ステップ3としての23年度予算に反映されたかという観点から評価すべきであるが、現段階では、正確な数値は政府より公表されておらず評価は難しい。したがって、評価者の定性判断を加えた概略的な評価を行う。
  ステップ1の予備費の活用では、雇用の基盤づくり1750億円と投資の基盤づくりの中にある「低炭素型雇用創出産業立地支援」1100億円などを中心に、3000億円程度が計上されたとみられる。また、補正予算では、雇用・人材育成(3199億円)、新成長戦略の推進・加速(3369億円)などを中心に、6500億円程度が盛り込まれているとみられる。さらに、23年度予算「日本復活特別枠」2兆1千億円のうち、4千億円以上は、小学校教員人件費や思いやり予算など成長戦略とは関係のない予算が含まれている他、マニフェスト関連予算も含まれており、成長戦略として計上された部分は7500億円程度に止まるとみられる。したがって、トータルでは1兆7千億円程度が成長戦略として支出されることになる。この他、特別枠以外で成長戦略関連予算が計上されているが、金額は不明である。規模的には、夏の概算要求時の各省の要求総額2兆9千億円を大きく下回っており、経済成長へのインパクトは限定的であり既存予算の看板を付け替えて特別枠に計上する事例も散見され、質の吟味がどの程度なされたかは疑問だ。
  次に、内容面の評価を行うと、評価される点は、企業の活性化、対日投資促進の観点から法人実効税率の5%引き下げを実現したことである。財源難により、法人課税の課税ベースの拡大を合わせて実施したことで、実効性はそれだけ低下することになる点は割り引く必要があるが、自民党前政権時からの大きな課題を実行したという意味では評価できる。
  他方、衆議院マニフェストとの比較で言えば、財源難から子ども手当ては3歳未満児のみ2万円に引き上げに止まった他、高速道路料金無料化は、社会実験に1200億円を計上したのみで、「土日・休日1000円」「平日上限2000円」に姿を変えることとなり、政策としての複雑さ・分かりにくさも露呈した。マニフェストに沿った「農家戸別所得補償」や「高校無償化」は、依然としてバラマキ色が強く、高い評価は出来ない。
  なお、予算・税制上の措置を伴わない政策として、ステップ1に「日本を元気にする規制改革100」が盛り込まれた。しかし、このうち現段階で成果として措置済みとなっているのは、9件程度に止まっている。鳴り物入りで実施を表明した「幼保一元化」については、現行制度の温存を含めた5つの案が出てきており、内容が後退するリスクがある。100のうち残りの規制改革については、年度末までに予定されている「行政刷新会議規制・制度改革に関する分科会」のとりまとめを待つ必要があり、現段階で高い評価を与えることは難しい。
 

実行過程

  補正予算の編成による経済対策の実行過程については、様々な問題点が露呈した。「ねじれ国会」の下で、与党民主党は、経済対策を最優先課題とし、臨時国会開会以前から野党との協議を呼びかけた。補正予算の規模を巡って、野党や与党国民新党からは4~5兆円規模の大規模な対策が必要との声が強く、政府は国会対策の意味合いから、要求された金額をほぼ丸呑みする形で、先に総額を決定し、中身は後から来年度に予定する成長戦略関連支出を中心に積み上げたというのが実情である。その結果、緊急対策と謳いながらも、緊急性の強い施策は少なく、主に成長戦略の前倒しという形で、補正予算が編成されたのはすでに指摘した通りである。
また、税制改正、予算編成のプロセスにおいては、政府と民主党間のみならず、政府内での対立の構図も浮き彫りとなり、例年になく決定が遅れ、混乱が目立つ形となった。
  税制改正では、法人実効税率の引き下げ財源(1兆5千億円)を巡り、また予算編成では、子ども手当3歳未満児の引き上げ財源(2500億円)、基礎年金国庫負担の財源(2兆4千億円)を巡り、財務省、政府税制調査会、民主党税制改正PT、民主党政策調査会などの間で激しいさや当てや攻防が繰り広げられた。基礎年金国庫負担を巡っては、財源が見出せないとの理由から、3分の1に引き下げる案が財務省から出たが、民主党がこれを否決し、結果的には、昨年度に続いて「埋蔵金」で手当てするという問題先送りの決着となった点は、大きく評価を下げる要因である。また、高速道路料金については、マニフェストに謳っている無料化のための社会実験を来年度も行う一方で、「平日上限2000円」という新たな制度を国土交通省が打ち出し、民主党は従来の「土日・休日1000円」を継続するよう強く要望するなど全体的に整合性を欠く政策となっている。
  さらに、政府内部でも、行政刷新会議による事業仕分けの対象に成長戦略関連支出も含まれ、農林副大臣からは「仕分けの役割は今回で終えるべきだ」、総務副大臣から「新成長戦略を否定するのは仕分けの権限を越えている」など激しい反発が高まるなど対立と混乱が目立った。
  菅政権における政策決定プロセスは、行政の無駄の見直しと規制改革を行政刷新会議が、新成長戦略は総理を議長とする「成長戦略実現会議」が担う形となっている。両者の整合性を取り、一体的に議論・検討するかつての「経済財政諮問会議」に相当する組織を廃止し国家戦略室も局への格上げもできず、調整プロセスに混乱を来たすことになった。税制改正や予算編成についても、政府・与党間の意見調整の機能が玄葉成長会長に国家戦略担当大臣を兼務させただけでは、十分にワークしなかった。
 

説明責任

  説明責任については、その前提となる情報開示の度合いが、自民党前政権時の経済財政諮問会議が存在していた時期と比べると大幅に低下していることは否めない。行政改革や税制改革、成長戦略の推進主体が分かれているが故に、調整に混乱を来たす結果、最終的な政府としての意思決定がどのようなプロセスを経てなされたのかを事後的に知ることは極めて困難である。例えば、政府税制調査会では、政治主導の名の下に、政治家・閣僚が委員となり議論・意思決定をしているが、開示される資料は両・質ともに低下した感がある。民間の専門家委員会は、政府税調の下部組織とされ、民間専門家は重要な意思決定に間接的にしか関われなくなっている。このことが、税制改正の必要性についての説明責任を低下させ、国民の関心を低下させることにつながっている。
  法人税率の引き下げについては、菅首相のリーダーシップが一定程度発揮されたとみられるが、所得税増税の一方で法人税減税をしなければならない理由や、法人税減税で具体的にどのような経済活性化効果があるのか、法人税減税以外の代替的手段との比較考量をどの程度行ったのかなど、国民に対する説明責任の不十分さが外交政策の失策と相俟って菅政権の支持率低下につながっていると見なければならない。
 

⇒評定一覧表に戻る