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年金 印刷 Eメール
評価基準 評点
現時点の到達点についての実績評価(40点) 形式要件(20点) 5
実質要件(20点) 5
実行過程(30点) 5
説明責任(30点) 0
合計(100点) 15

評価の視点

   第1の評価の視点は、年金財政の中長期的な持続可能性確保である。著しい少子高齢化が進行するもと、賦課方式を基本とする年金財政を持続可能なものとすることは、必要不可欠かつ緊急性の高い課題である。2004 年には、こうした認識を背景に、年金給付抑制の仕組みであるマクロ経済スライド導入、基礎年金の国庫負担割合の3 分の1 から2 分の1 への引き上げ(09年度までに実施)などを柱とする年金改正が行われた。しかしながら、マクロ経済スライドは、継続的な賃金と物価上昇があってはじめて機能するという制度的欠陥を抱えているため、いまだ機能していない。約2.5 兆円を要する基礎年金の国庫負担割合の引き上げ財源も、09年度と10 年度は埋蔵金で賄われ、11 年度も再び埋蔵金頼みとなった。12年度以降の目途は立っていない。
   第2は、制度体系を、今日の雇用環境、世帯形態などに合ったものへと作り変えることである。わが国の年金制度は、「モデル夫婦世帯」を前提としているが、もはや必ずしも一般的な世帯形態とは言えない。あるいは、もともと自営業者と農林漁業者のために1961 年に発足した国民年金制度は、雇用形態の変化などを背景に、今日では、厚生年金に加入出来ない雇用者のいわば掃きだまりとなっている。さらに、現在、全国民共通に給付される「基礎年金」があるものの、満額でも生活保護に見劣りするなど「基礎」とは名ばかりとなっている。こうした制度体系の問題を認識し、作り変えることが出来るのか。
   第3は、適正な執行である。国民年金保険料の納付率は遂に60% 台を切った。厚生年金に関しても、総務省が2006 年に指摘したように、本来適用されるべき厚生年金適用対象企業のうち約3 割が未適用であるなど、執行のあらゆる点において、不備がある。こうした執行を適正化していくことも極めて重要な課題である。
   この第1と第3の評価の視点は、政権与党としての制度運営の確からしさと表現しても良い。民主党政権が掲げ続けてきた制度改革が実現するまでの間、現行制度を運営していかなければならない。また、現行制度の財政健全性を維持、高めることは、民主党の考える制度への移行をスムーズにすることになる。
 

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実績評価

<形式要件>
   2009年衆院選マニフェストでは、次の2つのポイントが明記されていた。1つ目は、年金一元化、所得比例年金と月額7万円の最低保障年金の組合せを骨格とする年金制度創設のための法律を2013年までに成立させること。2つ目のポイントは、社会保険庁を国税庁と統合して歳入庁を創設することである。
   1つ目のポイントに関しては、参院選マニフェストにおいて「年金制度の一元化、月額7万円の最低保証年金を実現するためにも、税制の抜本改革を実施します」と謳われているものの、達成に向けた道筋は見えていない。制度改革の議論そのものは、2009年マニフェストの想定よりも前倒しされ、2010年3月に、鳩山由紀夫首相を議長として「新年金制度に関する検討会」が設置された。しかし、実際には、ワーキンググループで数回の有識者ヒアリングが行われたのみで、6月29日に新たな年金制度の基本的な原則(中間まとめ)が取りまとめられて以降、同会議は開催されていない。
   2つ目のポイントに関し、2010年参院選マニフェストでは、歳入庁の文言そのものが見当たらなくなっている。廃止するといっていた社会保険庁は、自民党政権時代に成立した法律に基づき、2010年1月に日本年金機構に衣替えし、既に1年経過している。

<実質要件>
   2010年6月の「中間まとめ」は、民主党マニフェストの深化ではなく、むしろ抽象化していることが第1の特徴である。これは、2つの理由が考えられる。1つは、スウェーデンの年金制度を念頭に置いていると思われる民主党案の実現が困難であるとの判断に至り、その軌道修正を図っている。仮にこれであれば、妥当な判断といえ、積極的に評価される。もっとも、マニフェストの修正となるため、そうした根拠が明示されるべきであろう。中間まとめにはそれがない。もう1つ考えられる理由は、議論が深化せず、当初のマニフェストに追加的に書き加える情報がなかったということである。
   「中間まとめ」の第2の特徴は、7つの原則の最後に、超党派の議論を重視していることである。超党派の議論自体、積極的に進められるべきものであろう。しかし、超党派というとき、党に明確なポリシーがあり、その摺り合わせであることが前提となるのではないだろうか。そうでなければ、呼びかけられる野党も議論のテーブルにつきにくいはずである。こうした観点からすると、元来、民主党の年金政策は、常に曖昧な部分があり、その曖昧さの払拭に向けた党内議論が先ず積み重ねられるべきであると思われるが、そうした形跡は見られない。
 

実行過程

   年金制度に関し、政権与党となった民主党には、マニフェスト等で掲げてきた抜本改革の道筋をつけることと、それまでの間、現行制度を維持していくことの2つの責務があるはずである。
   1つ目の責務であるマニフェスト実現の道筋に関しては、6月に「中間とりまとめ」が公表されて以降、議論の進捗がみられない。7原則の7つめに書かれている超党派の議論を実現すべく、与野党で話し合いを持っている形跡もない。最近では、官邸の改革会議において、自民党政権時代の社会保障国民会議の議論を参照することで、自民党への秋波を送っているようにも見える。
   しかし、民主党として矛盾を抱えているように見える。社会保障国民会議は、現行社会保障制度に対する課題認識が甘く、かつ、現行制度維持を目指しており、制度の抱える諸問題の根本的な解決にはつながるものとは考えにくいからである。例えば、次のような同会議の実質的な最終報告である「中間報告」の端々にそれがうかがえる。
   「今日までの一連の制度改革により、公的年金制度を始め、社会保障制度の持続可能性は向上している」(P6)、「給付の平等・負担の公平という『社会的公正』を実現している」(P7)、「マクロスライド制度(原文のママ)により・・・、にもかかわらず全額税方式への転換など公的年金の財政方式を巡る議論が活発化している背景には、現行制度に対する不信の増大がある。この不信は、制度それ自体の問題というよりは制度運営に関わる国(厚生労働省・社会保険庁)に対する信頼の低下(度重なる不祥事など)に起因する面が大きい」(P20)。
   20ページの記述などは、現行年金制度への国民の信頼がないのは、一重に社保庁問題によるものであって、制度そのものの問題ではないと言っているのであり、こうした現状認識は、民主党の主張と果たして整合的なのであろうか。民主党が、社会保障国民会議のこうした現状認識に同調するのであれば、抜本改革をもはや目指さないなどの、明確な説明が必要であろう。
   政権与党である民主党のもう1つの責務は、現行制度の運営である。この点に関しても、政権与党に求められる堅実さに疑問が残った。3つ指摘出来る。1つは、政権獲得後、年金の財政検証をやり直していないことである。年金財政の長期見通しである財政検証は、自民党政権下の2009年2月に公表され、その計算のための前提である経済前提が、楽観的であるとの批判を受けた。運用利回り4.1%、賃金上昇率2.5%などが設定され、しかも、それは、前回04年のものより上方修正されていたからである。「100年安心」を取り繕うためとの疑念が各方面から指摘された。
   野党であった民主党も、長妻昭衆議院議員、山井和則衆議院議員が中心となって、楽観的前提を批判した。それは、もっともな批判であったと判断される。その後、民主党政権発足後、財政検証を見直すポジションに就いたにもかかわらず、財政検証見直しは行われていない。これは、極めて不可解である。保守的な経済前提のもとで財政検証をやり直すのが、責任ある与党の立場のはずである。
  2つ目は、基礎年金の国庫負担の3分の1から2分の1への引き上げである。09年度、10年度に続き、11年度も予算編成の最終段階で、ドタバタのうちに、埋蔵金で賄われることが決められた。11年度以降の財源がないことははやくから分かっていたことであり、しかも、恒久財源ではない埋蔵金で基礎年金財源を賄うことは民主党が野党時代より批判してきたことである。
   3つめは、マクロ経済スライドが未だ不発動であることに、驚くほど無関心であることである。マクロ経済スライド不発動の財政的ツケは、将来世代に回されている。少なくとも、そうした問題認識を持ち、改善策が議論されなければならない。この点に関し、掛け声にとどまっている政治主導がかえって災いしている側面も指摘出来る。マクロ経済スライドは、仕組みが分かりにくく、ある程度の知識を持っていないと議論しにくいためである。
   加えていえば、国民年金の納付率は、遂に60%を割り込むに至っているものの、その改善の兆しが見えていない。この点に関し、民主党政権の年金記録問題1点豪華主義が無関係ではないであろう。年金記録問題には、膨大な人手と予算がかけられる一方で、日本年金機構の適用・徴収業務がおろそかになっており、それが保険料徴収にマイナスに作用している側面は否定出来ないであろう。現在、スタートしている紙台帳と電子記録との突合作業は、10年度の成果を見極めた上で、11年度以降については、柔軟に方針を修正することが必要であろう。
   このように、民主党政権には、年金制度に関し、政権与党としての現行制度の安定した運営と、マニフェスト実現に向けた着実な議論の推進が改めて強く求められている。
 

説明責任

   民主党政権内から、自民党政権末期の社会保障国民会議、安心社会実現会議を参照する声が聞こえてくるが、どのような理由からそれに同調しているのか、明確な説明が必要である。その際、マニフェストを修正するのか否かの説明も必要である。自らの年金制度改革は放棄したのか否か。
   04年改正の客観的検証も、政権与党として不可欠である。マクロ経済スライド不発動、基礎年金国庫負担引き上げ財源の未確定は、確実に年金財政を蝕んでいる。そのツケは、将来の世代に回されている。 
   総じて、年金政策において民主党政権は国民に対する明確な説明もないままに判断や決定を先送りしており、その無作為が、将来の世代の制度に対する信認を損なうことになる。

 

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