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雇用 印刷 Eメール
評価基準 評点
現時点の到達点についての実績評価(40点) 形式要件(20点) 10
実質要件(20点) 5
実行過程(30点) 6
説明責任(30点) 5
合計(100点) 26

評価の視点

   雇用分野の評価の視点は以下の三点である。
   第一に、雇用の受け皿づくりに的確に取り組んでいるかどうか。経済環境が変わってくる中で、新しい産業を興すことが必要であり、持続可能な経済成長を実現するための産業構造転換を前提とした雇用創出に取り組んでいるかを問う。
   第二に、セーフティネットの構築に取り組んでいるか。現実問題として、産業構造の変化に伴って労働移動がある以上、一時的に就業できない人々に対する支援策が必要となる。また現在の厳しい雇用環境の中で、働く意思のある新卒者の未就労問題が深刻になっている。新卒者の就労支援や求職者支援制度、失業保険など、そうした現実に対応できるシステムが適正に構築されているかどうかが第二のポイントである。
   第三に、労働市場の再設計に取り組んでいるか。雇用分野では、以上二点の対応とともに、新しい労働市場のもとで安心出来る仕組みを作ることが雇用政策最大のアジェンダであり、経済の変動や就業形態の変化に伴い、公平性、柔軟性をもった労働市場を設計的できているかが問われる。
 

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実績評価

   菅政権は、所信表明演説で「経済社会が抱える課題の解決を新たな需要や雇用創出のきっかけ」とするとともに、雇用の安定確保、実践的な能力育成の推進などに取り組むことにより、「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の好循環を一体的に実現していくとしていた。具体的には、マニフェストにおいて、「「求職者支援制度」の2011年度中の法制化」や「マンツーマンでの就労を支援する体制整備」、「新卒者の就職の支援」、「均等待遇、仕事と生活の調和」を挙げた。また、新成長戦略においては「『出番』と『居場所』のある国・日本」として2020年までの目標を掲げ、雇用を内需拡大と成長力を支える原動力として明確に位置づけている。
   まず、「受け皿づくり」については、平成22年度補正予算では昨年から継続されている「重点分野雇用創造事業」に1,000億円が計上され、事業の実施期間も23年度まで延長されている。12月には雇用戦略会議において「雇用戦略・基本方針2011」についての合意がなされ、医療、介護、環境・エネルギー等の分野で雇用創出の具体化の方針を打ち出している。こうした取り組み自体は評価できるものの、持続的な成長、つまり、良質な雇用の創出につながる産業構造転換のビジョンやその実現に向けた道筋は提示されていない。
   セーフティネットの構築については、マニフェストで掲げた個別政策について制度創設や財源確保の道筋を立てるなど、形式的に評価できるものは多い。まず、政府の緊急雇用対策本部推進チームが定期的に検討を重ねており、新卒者への就労支援では今年度補正予算で511億円を計上し、「パーソナルサポート」や「キャリア段位」といった様々な仕組みを導入している。ただし、こうした個別の対応はある一方で、スポットごとの施策実施となっており、ワンストップで一体的なサービス供給体制はなお整っていない。また、求職者支援制度についてはその延長のために補正予算で1,000億円が計上されたうえで、12月に恒久的に実施することが決定され(23年10月施行予定)、23年度予算でも初年度628億円を計上(うち一般会計からの繰入173億円)、年明けの通常国会に関連法案を提出する方針を立てている。ただ、当初は一般会計での恒久化を目指していたが、労働保険特別会計からも支出がなされる方向であり、制度の設計思想が曖昧化。新制度の具体的設計は現在労働政策審議会などで検討がなされている段階であるが、その実効性にとってコアとなる職業訓練について、有効な内容とするための仕組みが構築されるかどうかは疑問。失業保険の適用が終了した求職者をつなぐ第二のセーフティネットの設計に遅れが生じている点で、評価を落とさざるを得ない。
   一方で、失業給付に充てる雇用保険の国庫負担割合については、衆院選マニフェストにおいて雇用保険法の本則で定める25%に戻すことを掲げていたが、財源確保が難しいことから11年度は現行維持が決定している。以上より、セーフティネットの構築については、カウンセリングや職業紹介、職業訓練、生活保障などの施策が個別に進んではいるものの、一体化したスプリングボード・セーフティネットとして体系的に進められておらず、評価は低いものとなる。
最後に労働市場の再設計という観点からは、まず「均等待遇」について、キャリア段位の仕組みを導入するなど、評価できる点もある。ただし、鳩山前政権時から肝いりで進めていた非正規雇用を含めた労働市場全体の在り方について、菅政権はいまだに答えを出していない。そもそも、派遣労働は労働市場において深く浸透しており、それを禁止することは企業の機動的な経営を阻害するばかりか、労働者の多様な働き方を困難にすることにつながる。そうである以上、その設計にあたっては、派遣が技能の不足する労働者に雇用の機会を与えると同時に、スキルアップを図る柔軟な仕組みであると積極的に位置付けた上で個々の政策を構築すべきであって、現在政府が国会に提出している労働者派遣法改正案は非現実的な政策と言わざるをえない。派遣労働の解消に固執した社民党との連立を解消した現在、菅政権は、本来であればこの法案を通じて何を目指しているのかを明らかにした上で、新たな方針のもとで労働市場の整備に着手する必要があるが、その点について進展はない。
 

実行過程

   雇用政策については、官邸の「緊急雇用対策本部」が主導し、個別施策の一定の進展が見られる。とりわけ、新卒者の就労支援や求職者支援制度等のセーフティネットの構築については、同本部のもとで様々な推進チームやタスクフォースが立ち上げられ、今年度補正予算で制度の新設、拡充、延長のための措置が講じられている。
   しかし、そもそも菅政権のマニフェストにおいて期限が明確に設定なされているのは「求職者支援制度の2011年度中の法制化」のみである。掲げられたその他の施策については、検証可能な形での目標や期限の設定が十分でない。数々な会議体を発足させるなどインプットの投入はたしかに認められるが、それらを使って、いつまでに何をどう実現するのかが不明確なままであって、マニフェストサイクルが動くための前提が整っていないと評価せざるを得ない。
   菅首相は、厳しい雇用情勢の中で繰り返し「雇用の拡大」を訴えてきてはいるが、雇用政策全体としてのビジョンが不明確で、個々の政策が有機的に結び付けられ、優先順位をつけた上で、ひとつの目標を達成するという形にはなっていない。政労使で首相が何らかの形でリーダーシップを発揮したという印象は無い。
 

説明責任

   雇用政策は多くの国民にとって日々の生活に直結するものであるために、政府による的確な対応と説明が特に求められる分野である。雇用を最優先に位置づけ、足元の問題に対して補正予算などで対応をしてきたことは評価はできる。半面、中長期の包括的なビジョンが不明瞭で、そもそも明確な目標設定がないままに、いつまでに何を実現するのかという説明が十分になされているとは言いがたい。
   また、派遣労働をめぐる対応でも、社民党を除く野党の根強い反発の中、菅政権として明確な方針を打ち出すこともなく、継続審議のままである。政府の提示する改正法案は、定義が曖昧な「常用雇用」に対して製造業派遣を認めることで、その解釈や運用に幅を持たせ、法案の趣旨自体を骨抜きにしているものであるが、そうした実際の効用はともかく、この法案が派遣労働の存在を禁止するというメッセージを発していることは事実であって、それによる労働者や企業側の混乱は計り知れない。働き方や労働市場についてどのような姿が望ましいのかを国民に対して明確に語っていない点で政権の説明責任は不足しており、評価は極めて低いものとなる。

 

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