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安倍政権実績評価(郵政民営化) 印刷 Eメール

郵政民営化

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言論NPOでは、これまでに安倍政権が行った政策の実績評価をしました。

   
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1.評価の視点

 この分野の評価に当たっては、以下の視点を評価のポイントとします。

(ア)政治論のレベル 

(イ)公的システム論のレベル

(ウ)郵政が持つサービス機能の持続的な提供に向けたシステム設計とマネージメント論のレベル


郵政民営化は、上記3つの次元から意義を捉えるべきです。具体的には(ア)は既得権益の打破・構造改革への国民合意の再確認とそれによる推進力強化、(イ)は郵政民営化で「小さな政府」「官から民へ」に向けた改革を進展させる、(ウ)は将来破綻が懸念される事業をデット・エクイティー・スワップにより民間事業化し、事業再生を図る、ことです。

 安倍政権では基本的に、

 小泉政権時が敷いたレールの上に民営化プロセスを着実に実行することが課題です。そして郵政民営化は、2005年公布の郵政民営化法に基づく「郵便貯金銀行」「郵便保険会社」の準備会社設立と、その全株式を保有する日本郵政会社による「実施計画」作成という準備期を経て、2007年10月の民営化開始に向け移行期に入りました。

 移行期には、2017年の最終的な民営化を控え、日本郵政会社の下で、4事業の経営が順調にいくよう経営の自由度を拡大しつつ、民業圧迫に配慮して、バランスをとりながら段階的に国の関与を軽減することが求められます。

 そのため現在は、3つの視点でも特に、(ウ)の適切な実現に向け、政策が動いているかが評価されるべき段階だといえます。

 その結果、4事業を民間企業として成り立たせる設計が課題となります。そこでは、次の3つの大きな論点が考えられます。

 ①民業圧迫論との関係

 民間企業として成り立たせるために必要となる事業の自由度の拡大、特に金融2事業の様々な金融機能の拡大は、常に民業圧迫論を喚起しています。両者の論理を、説得力ある形で整合的に説明することが求められます。

 民営化後、郵便貯金銀行に限らず、民営化4社のそれぞれが企業として成り立つための出口を模索することになります(郵便事業は国際物流に、郵貯はクレジットカードなどに、郵便局会社はカタログ販売や不動産開発等に進出)。 民間では自己責任による迅速な裁量が求められます。新規事業進出の是非を個別に「当局」が査定するような世界ではありません。

 また、もう1つの論点は、完全民営化前の上場に向けた準備段階から新規業務に進出するのか(右肩下がりの事業の再生はタイミングが遅れるとその分、再生可能性も低下)、上場後のタイミングで実施するのか(官業のままで未だ経済合理性が貫徹するに至っていない段階では民業圧迫となる)という点です。

②郵便局ネットワークは完全に維持するのかしないのか

 政治論として、特定郵便局長等を既得権益と捉えれば、郵便局ネットワークの維持は改革に反するという議論になります。

 しかし経済合理的に考えれば、ネットワークそのものを完全に維持することこそが、最も合理的であると言える部分もあります。

 個々のヘッドクォーターでは儲からなくても、全体として儲かる(どこにでも届くからこそ使われる)というのがネットワークビジネスの本質です。そのため、膨大な雇用を抱える郵便局会社の生産性を高める必要があり、

 地域の公的な顔として政治的インセンティブを持ってきた特定郵便局長たちのマインドを、経済合理的なものとするアップサイドのインセンティブをどう付与するか(多角経営に向けて知恵を出す等)が課題です。

③郵政事業の「企業再生」の国民経済的なメリットをどう描くのか

 全体として巨大なストックの事業が、しかも全国ネットワークを維持しつつ民間経済に参入するインパクトは、それが従来のジリ貧状態ではなく民間企業として成り立つ形で入ってくるため、非常に大きくなる可能性があります。

 しかし、スケールメリットを既に享受している事業が、民業の機能を拡充し参入することは、パイの奪い合いによる民業圧迫につながるのか、

 あるいは、物流・銀行・保険など日本経済の中でも生産性の低いとされる分野に競争を促進し、日本経済の活力強化と消費者利便の向上につながるのか、いずれが正しいかは現時点では予想できない面があります。

 他方で、例えば通常の銀行となった郵便貯金銀行や他の一般の銀行や外資であれ、あるいは、通常の生保会社になった郵便保険会社や他の一般の生命保険会社であれ、いずれもが民間企業として、官が長年にわたり築き上げてきた郵便局ネットワークを、手数料を払って自らの事業に活用できることに、郵政民営化の本来的な意義を求める見方もあります。

 いずれにせよ、ジリ貧状態の郵政事業を企業再生の手法で建て直すという、民営化のいわば消極的な意義を超えて、それが日本経済や消費者にどのような積極的なメリットをもたらすかを構築、実現してこそ、民営化政策は完成するといえます。


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2.政策課題の妥当性 7点/30点中

■形式評価 5点/20点中 

【独自の課題設定はなく、小泉政権下で決まった理念や内容を、予定通り進めているだけ】

 政権構想では郵政民営化について言及すらなく、その位置づけは、政権の基本的方向性の柱の一つである「自由と規律でオープンな社会」の下に置かれた「官と民との新たなパートナーシップの確立」の下の「小さく効率的な政府の推進。民間活力フル活用」に見出すしかありません。

 所信表明や施政方針では、「国や地方の無駄や非効率を放置したまま、国民に負担増を求めることはできない…行政改革を進め…『筋肉質の政府』を実現」との上位理念の下、「郵政民営化法の基本理念に沿って、平成19年10月からの郵政民営化を確実に実施」(*)とあるのみです。

 また「進路と戦略」でも、「21世紀にふさわしい行財政システムの構築に向けて」内の一項目の「効率的な行政の推進」の下に上記(*)に「円滑かつ確実に」を加えた文言が盛り込まれただけの内容となっています。しかし、何らかの問題点が発生していることが背景にあるとしても、この表現だけでは抽象的に過ぎます。

 このように、安倍政権における郵政民営化は、同政権が掲げる簡素で効率的な「筋肉質の政府」に向けた行政改革の一手段として、既に小泉政権下で決まった改革の理念や内容を予定通りに実現するに過ぎないものです。すなわち、安倍政権としての課題設定はなく、既定の政策手段の実施の約束を、期限の明示とともに確認しただけの内容となっています。

■実質評価 2点/10点中

【小泉改革路線は継承されましたが、安倍政権として必要な課題設定はなされていません】

 郵政民営化について、安倍政権のミッションは既定路線の確実な執行にあるのは事実です。そのため、民営化プロセスに課題が発生していなければ、安倍政権が小泉改革路線を継承することを表明し、「守旧派」の巻き返しを排除する上でも、こうしたマニフェストに、一定の意味はあったでしょう。

 しかし、本評価でみるように、郵政を民営化するだけでも大きな課題が発生しており、また国民経済に与える影響は大きいため、懸念も各方面から表明されています。それにも関わらず安倍政権は、その解決の道筋も、民営化の着地の姿も示していないのであり、こうしたゼロに近い課題設定で済まそうとする姿勢は評価できません。

 ちなみに、2007年「骨太の方針」においても、郵政民営化は、「21世紀型行財政システムの構築」の一項目である「独立行政法人等の改革」の中で、上記(*)に「円滑・確実に」を加えただけの同一の文言での言及があるのみです。このように、これまでの政権期間を通じて、本分野に対する課題設定への、安倍政権としての関心の薄さが覗われます。


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3.実行プロセス 15点/20点中

■形式評価 10点/10点中

【2007年10月の民営化開始に向けては、想定されたプロセスが着実に実行されています。】

 現在、評価の視点でも述べた準備期にある郵政民営化プロセスは、小泉政権時に引き続き、同政権時に確立された体制と手順の下で、安倍政権でも、2007年10月の民営化開始に向け想定されたプロセスを着実に歩んできています。

 本年4月には、日本郵政株式会社が、民営化後のグループ各社の経営計画となる「日本郵政公社の業務等の承継に関する実施計画」の申請を総務大臣に対して行いました。この実施計画では、2011年度の日本郵政グループ全体の税引き後利益を5870億円と見込み、その半分以上を郵便貯金銀行が占める姿が示されています。

 そこでは、郵便貯金銀行の収益の柱は国債などへの資金運用益であり、長期金利が民営化後5年で4%まで上昇した場合に2011年度の税引き後利益は、現在の金利水準で推計した3040億円から780億円に激減することなども示されました。

 また、郵便貯金銀行が住宅ローンやカードローンに新規参入する方針や、店舗の一部は顧客に資産運用を提案する「コンサルティング特化型」にする計画も盛り込まれ、郵便保険会社は医療特約の改善や保障限度額の引き上げに取り組むことなども示されました。さらに5月には、日本郵政公社の第4期(平成18年度)決算も公表されています。 

■実質評価 5点/10点中

【施策インプットは着実ですが、郵政事業を民間企業として成立させる道筋がみえません】

 民営化に向けた施策のインプット自体は着実ですが、評価の視点で触れた①~③の論点については、政権としての考え方の発信が不十分です。そうした中で、民業圧迫脅威論や、日本郵政の西川社長の下での特定郵便局長の動きなどについて、一部に議論の混乱もみられ、関係者の基本認識の共有が十分に進んでいません。

 そもそも、これだけ国民生活に関わる巨大事業の民営化であるにも関わらず、マニフェストにも見られるように安倍政権の関心は高いとはいえません。そのため、問題の所在についても、国民に共有されるには至っていません。

 現在の計画では2017年まで10年もの長期間、郵政事業の完全民営化は未実現の状況が続き得ることになります。しかもその間は、4社の再生にあたる親会社の日本郵政株式会社の株式は、政府が保有したままです。しかし、郵政事業の再生を民間企業再生のプロセスを通して実現するならば、日本郵政株式会社の株式も上場する必要があります。

 この点について、2007年1月に総理は同社に対し、金融2社の株式上場の早期実施のための具体的な措置の検討と、株式の早期上場及び政府による処分を可能とする準備を急ぐよう指示しました。政府保有株売却の時期を早期決定した後は、その着地点に向け、政府ではなくマーケットを相手に経営を構築する民間経営的ガバナンスを課すことも急務です。


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 4.実績 15点/20点中

■形式評価 10点/10点中

【マニフェストが設定した課題は、達成されていると評価できます。】

 マニフェストが設定した課題が本年10月の民営化の実施であるならば、それが実現した時点で成果が達成されることになります。すると現時点では、それに向けたステップが着実で、10月の民営化が可能な状況となっているかがポイントになります。そして、実行プロセスの形式評価や18年度決算を踏まえれば、その状況は達成されていると評価できます。

■実質評価 5点/10点中

【民営化初期の政治プロセスを終え、その時点で9兆円の資産を残した点は評価できます】

 小泉改革における郵政民営化の所期のねらいからみれば、現状には、積極的な評価を与えられると結論付けられます。

 そもそも、郵便事業がインターネット時代ということと、国際物流の世界に乗り遅れたことなどからジリ貧状態であるにも関わらず、2万4000もの郵便局ネットワークを持っており、それを会計上支えるのが郵便貯金と簡易保険でした。

 それは、郵便貯金(基本的には簡保も)が財投システムに支えられ、政府保証により資本コストがかからないという構図の中で、いわばイリュージョンがもたらしていた儲けでした。しかし今や銀行業全体が厳しい状況で、融資のできない郵貯が立ち行くはずはなく、かつての国鉄以上の破綻が待ち受けていたのを、民営化で回避するのが郵政改革でした。


その結果、郵政の破綻状況は改善の方向に動き、再建のチャンスが残りましたが、再建の答えは完全に描かれてはいません。また国際的な物流再編に入る以前の橋本行革で民営化していれば、郵便も立ち直れたことを考えれば、小泉民営化も遅すぎた感はあります。

 しかし、生田総裁が引き受けた時点ではほとんど債務超過に近い状況だったことを踏まえれば、18年度決算で9兆円程度の資本が残されたことは、民営化プロセスがそこそこの成果を挙げたものといえます。

【株式上場により、民営化を通じた事業再建を実現するには、まだ課題が残されています】

 政治プロセスが終了した今、民営化による事業再建の梃子は、株式上場です。それによって民間企業らしい事業構築プロセスに乗せ、やる気のある人材が支えることで、郵便事業の生き残りが模索されていくことが期待されます。

 最大の懸念要因は金利情勢如何で郵貯が持ちこたえるかどうかで、そのためにも、業務や運用の多角化は避けられません。全体に資産規模は徐々に縮小するにせよ、国債以外に運用対象を拡大し、資産効率を高めつつ、外部から人材を集めることで、カードローンなどから徐々に融資機能のノウハウを蓄積していくことが必要です。

 そしてその結果、西川社長が目指す「地域密着のリテイルバンク」を本当に実現できるかどうかが問われています。しかし、その道のりは未だ長いと考えられます。


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5.アカウンタビリティー 10点/30点中

【必要なパラダイム転換】

 日本郵政が提出した実施計画などが公表されているため、それを仔細に読んでいけば、本評価で述べた郵政民営化の実態や、それが抱える課題は、ある程度は把握できます。しかし、評価の視点で指摘した①~③の論点で触れたように、それは各界関係者や国民に十分共有されていません。

 例えば、郵政民営化のために必要な郵政事業の再生に向け、西川社長が自民党の集票マシンのイメージが強い特定局長へインセンティブ付与(自立性や人事制度など)を講じると、「改革の後退」と捉えられ、郵便事業の生き残りに向け金融機能の多角化を打ち出せば民業圧迫論が出るという現状があります。

 これは、郵政民営化問題を見る思考の枠組みが、未だ前記の視点ア(政治論)や視点イ(小さな政府、行革論)に留まっていることを示しています。しかし本評価を踏まえれば、現時点の課題は、民営化→株式上場に向けて、郵政事業の再生をいかに達成するか、すなわち、視点ウ(民営事業の構築)へと、思考の枠組みは既に転換しています。

【民営化が直面する中長期的なジレンマ】

 視点ウの立場から、株式上場までの思考パラダイムを確定させた場合、焦点は、民営事業としての郵便貯金銀行のビジネスモデル構築の成否に当てられることになります。そして、その成否の度合いに応じては、次の3つのシナリオが考えられます。

[シナリオ1]  
民営ビジネスモデル構築が進捗しない中で、金融情勢の変動などにより郵貯銀行に資金ショートが発生。

⇒  この場合、郵貯銀行の国債売却、それがもたらす国債金利の上昇が郵貯銀行の財務内容をさらに悪化させるというスパイラル的現象により、郵政民営化そのものが頓挫するだけでなく、国民経済にも悪影響が及びます。

[シナリオ2]
郵貯銀行の業務多角化などの経営努力が郵貯の預金減少をオフセットする程度の成果を挙げ、現状が維持される。 

⇒  最も蓋然性が高いシナリオ。このときは、基本的に定額貯金などを集め、それを国債に運用する郵貯銀行のあり方が問われます。

 そもそも民から官への資金の流れが問題とすれば、その原因は巨額の国債発行残高という官の側での資金需要の大きさです。むしろ郵政民営化で資金の流れを民に戻すことの本質的な意義は、郵貯の巨額な資産が民間の生産的な分野でのリスクテイクに向かうことにあるはずです。


[シナリオ3]
郵便貯金銀行が将来にわたって持続的に存続できるだけのビジネスモデルが構築される。

 ⇒  これは、郵便貯金銀行が銀行業として存立し、資産運用面でリスクテイクを行える状況です。その一つの理想的な姿が「地域に密着したリテイルバンク」ということになります。

 この達成は中長期の将来になりますが、その時点で地方金融機関の経営が現状のままであれば、それは地方銀行にとっては明らかに脅威で、民業との競合問題が発生します。また。地域でのリテイルバンクに限らず、例えば、巨大に投資ファンドとして成り立っていく場合にも、民業との競合は問題になるでしょう。

 このように、郵政民営化は、それが現時点で突きつける課題を解決しなければ国民経済的に大きな悪影響が生じ、逆に、それを解決すれば、中長期的に民業との関係で困難な問題を抱えかねないという、「ジレンマ」を内包するものであるといえます。

【必要な将来像の提示】

 こうしたジレンマがあるとすれば、郵政事業の民間企業としての再生が成功した後に基本となる考え方は、既存の民間金融との競争的補完関係の構築だと思われます。そこでは、民営化された郵政事業が、地方銀行を含む民間金融と一定の競争をしながらその効率化を促すと同時に、ビジネス面で有機的につながっていく姿が望まれます。

 これを可能にするためにも、民間金融の側で金融技術革新を進めるとともに、依然として経営が安定しない、地方銀行の再編や競争力の強化を進めておくことも必要です。

 こうした官・民両者にわたる全体的な見取り図を描いてこそ、郵政民営化はその出口の解が描かれるはずです。それが現時点でなされていない以上、アカウンタビリティーが十分に果たされているとは評価できません。

 また郵政事業は郵便局ネットワーク=長年官が蓄積してきた国民共通のインフラ、を有す事業です。安倍政権が「美しい国」を実現する要素に「官と民のパートナーシップ」を打ち出すならば、その下に、そうした官のリソースを「民」のセクターと有機的に組み合わせ、国民経済的メリットを生み出すことをアジェンダに設定すべきではないでしょうか。


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