Payday Loans
   
「未来選択」は言論NPOが運営するマニフェスト評価専門サイトです。
【メイトになると最新情報】がメールで届きます。
言論NPO

 

2012年衆院選対応「未来選択」新サイトオープン

 2012年衆院選対応の「未来選択」はこちらに移動しました

言論NPOとは

日本のメディアや言論のあり方に疑問を感じた多くの有識者が、日本の主要課題に対して建設的な議論や対案を提案できる新しい非営利のメディア、言論の舞台をつくろうと活動を始めた認定NPO法人です。
⇒詳細はこちら

▼参加したい方はこちら


▼言論NPOのツイートはこちら

▼お問い合わせはこちら

【北城恪太郎氏&佐々木毅氏 座談会1】 印刷 Eメール

「マニフェストは本当に機能しているのか」


北城 恪太郎(日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役会長,社団法人 経済同友会 代表幹事)
profile
1944年生まれ。67年慶應義塾大学工学部卒。72年カリフォルニア大学大学院(バークレー校)修士課程修了。67年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。93年同社代表取締役社長、99年12月代表取締役会長に就任、現在に至る。99年11月から2003年3月までIBMアジア・パシフィックのプレジデントを務めた。2003年より経済同友会代表幹事。


佐々木 毅(東京大学前総長・学習院大学教授,21世紀臨調共同代表,言論NPOアドバイザリーボードメンバー)
profile
1942年生まれ。65年東京大学法学部卒。東京大学助教授を経て、78年より同教授。2001年より05年まで東京大学第27代総長。法学博士。専門は政治思想史。主な著書に「プラトンの呪縛」「政治に何ができるか」等。





工藤泰志(言論NPO代表)
profile
1958年生まれ。横浜市立大大学院経済学博士課程中退。東洋経済新報社で、『週刊東洋経済』記者、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長を歴任。2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。


「マニフェストは本当に機能しているのか

 工藤 私たちは、経済同友会や民間臨調と一緒にマニフェストの定着に力を入れて来ました。これをさらに一歩進 めて、政治を監視するという仕組みをインターネットを活用して始めたいと考えています。そこで、まず、マニフェスト導入で日本の政治は変わり始めているの か、まだそうでないとしたら、どんな課題があるのかということを議論できないかと思っております。マニフェストの政治は党首を選ぶところから始まるわけで すが、その意味では、マニフェストを本当の意味で日本に定着させるためには、今秋の自民党と民主党の党首選挙はとても重要だと考えています。その点につい ても続いて議論を行います。では、まず最初に、日本ではマニフェストは本当に機能をしているのか、からお願いします。

argaiv1074


マニフェスト導入後の評価と定着に向けての課題

 北城 総選挙で、国民に政党としての約束を行うマニフェストの仕組みは、機能し始めていると思い ます。小選挙区制で1党から1人の候補者が選ばれ、候補者は政権をとった場合に何を実行するのかという政権公約を掲げ、選挙で勝った党の党首が総理にな る、という仕組みそのものは動き出したと評価できます。
2005年の総選挙では郵政民営化以外は十分に触れられませんでしたが、少なくとも従来のように国民に何を約束しているかわかりにくい選挙から、政策を掲げてその選択を国民に迫る選挙に変わったと思います。

 例えば、自民党はマニフェストで課徴金の大幅な引き上げを含む独占禁止法の改正を約束しました。実際には、選挙後に党内で改正についての議論があ りましたが、マニフェストで国民に約束をしたことが今回の独占禁止法の改正に結びついたと思います。マニフェストに政策を掲げることが、その政策を実現す る力となってきました。ただ、具体的に何を国民に約束するか、もっとわかりやすくして、政策の目的、手段、期限、できれば財源についても示していただきた い。例えば、「公務員制度を抜本的に改革します」ではなく、いつまでにどのような改革を行うのかということを出していただくことは、掲げた政策の実現力と いう点で重要です。国民に約束したために、政党の議員もそれを支持し、官僚もその方向に動けると思います。そういう意味で、良いサイクルが始まりました が、改善すべき点はまだまだあると見ています。

 工藤 確かにマニフェストに書かれた内容が実現する政策の中心になっています。ただ、昨年の総選挙の郵政民営 化をめぐる刺客劇などの状況をみても、その前の参議院選とは異なり、候補者も国民もマニフェストを読んで候補者を選んだとは思えず、マニフェストが形骸化 している気がします。

 北城 長い間自民党で議員をしてきた人に対して自民党が刺客を立てることについては議論はありましたが、政党が政権公約を掲げて、それに基づいて候補者が選ばれるとしたら、自民党の公約は郵政民営化なんだから、反対する人が候補者になる方がおかしい。

 工藤 その点だけは確かにすっきりしました。しかし、郵政以外の項目が白紙委任のような状況になったという批判がありましたが、どこに問題があったのかということを少し考える必要があるのではないでしょうか。

 北城 確かに前回の総選挙は期間が短く、題目のみの項目や「抜本改革」としか書かれていない項目が多数ありました。しかし、郵政民営化や独占禁止法改正など具体的な項目を約束したものもあり、幾つかの面で機能し始めたと前向きに評価しています。

 佐々木 2つの観点が今のお話の中に入っています。政治を行う側にとってのマニフェストの意味と有権者にとっ てのマニフェストの意味という2つの側面です。政治を行う側としては、選挙で国民に対して約束した政策が基本で、優先度が高いということを否定することが 難しくなりました。しかし、約束した内容が非常に漠然としている場合は、何を約束したのかということが議論になってしまい、結果として約束した内容で反対 意見を抑えにくいという問題が残っています。これまでは、表と裏を使い分けた政治を行ってきましたが、マニフェストで示した表の部分を中心に、実行してい こうとする仕組みが少しずつですが、動き出したと思っています。

 また、マニフェストの内容をどのように実行するのかという実行体制も含めて考える必要があります。前回の総選挙では民主党が500日プランを出し ました。内容の評価は別として、実行方法について1つのプランを示しました。野党の場合は、それを示さないと国民が困惑するという事情がありますが、現在 の与党もあれほど膨大ではないにしても、具体的にどう行うのかというプランも示してもらえばよいと思います。

 もうひとつの問題は、工藤さんが言われた国民がマニフェストをどう受け止めるのかということです。政党はどの分野に焦点を当てたら選挙を勝てるの かという意思が選挙の時に強く働くため、あらゆる分野を満遍なく議論して、国民に関心を持ってもらう選挙とはならない可能性は相当あると思います。あらゆ る面について有権者にみてもらうというのは、政策を論ずる経済同友会や言論NPOなどの組織が担保すべき役割で、新聞、テレビ等が担当すべき面もたくさん あると思います。ただ、昨年の総選挙が郵政民営化一本に絞られたことは極端でしたが、マニフェストがなかなか読まれない原因はそこにもあると思います。今 後も同様のことが起こる可能性があります。特定のトピックに偏り過ぎないように工夫する余地はありますが、1点集中的な選挙はやめようと言っても、限界が あると思います。やはりマニフェストの書き方にも工夫が必要です。

 現在直面している具体的な課題としては、マニフェストを配布できる時期や場所が制限されているということです。現在は、あれほど多くの内容が記さ れているマニフェストを、非常に短い選挙運動期間だけで有権者に読ませる仕組みとなっています。しかも選挙期間中であっても、特定の場所へ行かないとマニ フェストを受け取ることができません。できれば今回の通常国会で公職選挙法の改正を行い、この問題を解決したほうがよいと思います。
いずれにしても、政治を行う側と受け取る国民の側の両面とも軌道に乗り始めたが、幾つか乗り越えなければいけない課題が前途にはっきり見えてきているというのが、今の段階だと思います。
 

政治の予測可能性を高め、責任を明確化することが必要

 北城 特に、国民の側で十分にマニフェストの内容を理解できる環境が整っていない面があります。 私たち同友会や言論NPOだけでなく、特にマスコミがマニフェストの比較、過去の評価を行い、国民に分かりやすい情報を伝えることは1つの使命だと思いま す。マスコミのマニフェストの扱いは十分ではなく、配布の仕組みも十分ではなかったかもしれない。それでも、前回の総選挙は政策中心の選挙になったと思い ます。郵政民営化1本に絞ったと言われますが、小泉総理が進めてきた構造改革路線を継続すべきか否かという質問に対して、国民が構造改革路線を支持したと いう点では意味があった選挙で、政策が重要な役割をしたと思います。これまで本当に総選挙で政策中心に選挙が行われたかというのは、あまり思い当たりませ ん。

 佐々木 今まで与党は、約束したくなかったために争点がないような選挙を行うことが多かったわけです。争点が ないようにするということは、選挙後になって具体的な話が始まるということです。しかし、マニフェスト選挙では有権者に約束をしなければいけない。本当に 政権を担当しようというグループにとっては、これは非常に大きな転換を求めることだと思います。

 北城 例えば道路公団改革では、選挙後に詳細を詰めることになりました。漠然とした道路公団民営化の答申を基 本に法案を作成し、選挙が終わった後に具体案を作成したため、与党内で様々な議論が出てしまった。郵政民営化の場合は、選挙時に政策の方向まで比較的はっ きりと示したため、選挙後は、それまでに反対していた参議院まで、郵政民営化が国民の世論であるため賛成しようということになった。

 工藤 私たちはマニフェストの評価活動をしていて、この前の選挙は風向きが変わった感じがむしろしました。マ ニフェストは全ての政策が書かれなくても、10項目ぐらいでもよいので、特に政権が国民と約束すべき政策の目標、そのための手段、達成期限を示し、そのマ ニフェストの妥当性や実現可能性を評価できるものでなければいけませんが、郵政民営化だけの選挙になってしまいました。

 北城 私は、前回の選挙は、郵政民営化だけではなく、構造改革をそのまま進めるのか、方針を転換するのかという選択が問われたと思います。

 工藤 それが小泉首相への期待になったのも分かりますが、その場合は、マニフェストが国民との契約だとすれ ば、今回は郵政民営化だけを問うけれども、ほかのことは委任して欲しいなど説明する必要があるのではないでしょうか。ただ、有権者が他の政策を全て委任し たとは思えません。選挙後は、医療改革、財政再建など、選挙で議論がなかったものが次々に進められています。

 佐々木 確かに自民党がマニフェストで約束した120項目のうち、郵政民営化を除いた119項目は分かりにくい。実際に評価を行う側は、残りの項目をもう少し細かく記してもらわないと、最初の1項目とどうつじつまがあうのかよく分からないと感じたと思う。

 工藤 中曽根元総理が論文で、政策の国民投票と選挙は違うと言っていましたが、政策に対して投票する行為と、議院内閣制の中で選挙を行うことはどのように異なるのでしょうか。

 佐々木 例えば、国民投票の制度は1つの政策について投票を求めるもので考えられなくもありませんが、これま でに日本はそれを行ってきたわけではなく、それによって政策をはっきりさせたわけでもありません。むしろ、何を約束したか曖昧にしておいて、都合の良いよ うにやってきたというのが現状です。ふだんからきちんと約束していて、たまたまある問題について国民投票で国民の信を問うというのならともかく、そもそも 何を約束したかわからないような状態でこれまでやってきたことを見直さずに、政策を国民投票の話にするのはバランスを欠いているように思います。

国民投票制度をつくるならつくるで議論したらよいと思いますが、そうでないとしたら、総選挙の中で具体的な政策をできるだけはっきりさせることは、政治の責任を明らかにする上では必要です。国民投票制度をつくるかどうかとは別の問題として議論すべきと思います。


⇒このページの先頭に戻る


⇒第2話を読む