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【北城恪太郎氏&佐々木毅氏 座談会2】 印刷 Eメール

「マニフェストの実行プロセスは定着したか」


北城 恪太郎(日本アイ・ビー・エム株式会社 代表取締役会長,社団法人 経済同友会 代表幹事)
profile
1944年生まれ。67年慶應義塾大学工学部卒。72年カリフォルニア大学大学院(バークレー校)修士課程修了。67年日本アイ・ビー・エム株式会社入社。93年同社代表取締役社長、99年12月代表取締役会長に就任、現在に至る。99年11月から2003年3月までIBMアジア・パシフィックのプレジデントを務めた。2003年より経済同友会代表幹事。



佐々木 毅(東京大学前総長・学習院大学教授,21世紀臨調共同代表,言論NPOアドバイザリーボードメンバー)
profile
1942年生まれ。65年東京大学法学部卒。東京大学助教授を経て、78年より同教授。2001年より05年まで東京大学第27代総長。法学博士。専門は政治思想史。主な著書に「プラトンの呪縛」「政治に何ができるか」等。




工藤泰志
(言論NPO代表)
profile
1958年生まれ。横浜市立大大学院経済学博士課程中退。東洋経済新報社で、『週刊東洋経済』記者、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長を歴任。2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。


マニフェストの実行体制における課題

 工藤 マニフェストのことであと2点聞かせてください。1点目はマニフェストの実行体制の問題です。党のマニ フェストが選ばれ、政権を確保したら、政府の施策となり、実行に移されるというマニフェストサイクルが確立されていればよいのですが、実際にはそのように なっていません。マニフェストは依然曖昧で、選挙後は、例えば税制調査会をめぐる税制議論のように、政府の審議会や党内などいろいろな箇所で異なる意見が 出てきて争っている状態で、有権者の側ではそれを見ているしかない。有権者側からみて、政策の実行プロセスをもう少しマニフェスト型にするように努力する ことがもっと必要ではないか。

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 もう1点は連立政権の評価をどのように行うのか、ということです。評価側としての悩みは、最初から連立を組むことを前提として選挙に臨むのであれ ば、与党間で政策調整を行い、両党の公約をあわせて一つのパッケージとすることは分かりますが、1党の政権公約としてみた場合はどうしても物足りない。公 明党は、生活密着型の政策ばかりを掲げ、国家の基本となるような骨太の政策が提示していませんが、自民党を補完するという立場でよいと主張します。でも、 それでは独立した政権公約とはいえない。この点についてどう考えたらよいのでしょうか。

 北城 1点目について、実行体制も含めて有権者は政権を選択していると思います。与党の場合には今までの経験 があるため、掲げた政策の実現可能性については、国民が実行過程の中身までよく見ずに選択しているのではないかと思います。たとえば、今回の選挙では、郵 政民営化については公約内容がはっきりしていましたが、税制については抜本的な見直しを2007年までに行うとしていますが、曖昧なまま政権公約になって いたため、有権者はその後どこまで進んだのかという判断ができません。消費税はこのくらい上げる、あるいは、歳出はこれだけカットする、社会保障、医療、 年金はこれだけ抑える、その代わりに消費税増税は行わないというように明確に書いていただくと、評価しやすく、政策がどう進展していったか分かりやすい。 一方、野党の方は、政権を任せてもらえれば確実に実行する体制がとれるということを、与党以上に有権者に説明しなくてはいけないため、詳細に記す必要があ ります。

 2点目の連立政権の評価については、連立政権としての調整を行った公約をいくつか提示しましたが、必ずしも十分ではありませんでした。公明党は自 民党の政策を中心とした上で、それらのどこを変えていくのかという姿勢でしたが、連立を前提としている政権公約のつくり方としたら、それ以外のところは自 民党の政策をもとに政策を運営しますという形でも良いのではないか。しかし、そのことは、国民に説明すべきです。公明党が単独で政権を担うということを前 提に政権公約をつくったのであれば、別の形があったと思う。

 工藤 北城さんがおっしゃったように、医療、社会保障、財政などについてマニフェストで具体的に書かれていれば、有権者にとって政策の進展が分かりやすい。しかし、マニフェストにはそのようには書かれず、相変わらず選挙が終わってから議論している状態です。

 北城 前回の選挙はそうでした。しかし、その一方で、先ほど述べたように独占禁止法の改正については、少なく とも課徴金の大幅な引き上げを含む独占禁止法の改正案を国会に上程すると書いてありました。これまでは大企業の談合に伴う課徴金が6%でしたが、それを公 正取引委員会は12%にしようとした。結果は10%になりましたが、マニフェストで大幅な引き上げと書いてあったことは、10%という結果をもたらすのに 政治力学としては非常に意味があった。選挙が終わった後で、自民党内、経済界も含めて、課徴金の引き上げに対して強い反対がありましたが、引き上げは政権 公約で約束したことだから実現しなければならない、として党の幹部が結局まとめました。あれを見ていると、マニフェストに具体的な記載をしていなかった場 合は、この法案は通らなかったと思うくらいです。

 工藤 マニフェストはその意味では政策形成に定着し始めているといえます。ただ、この前の総選挙の時に、社会 保障問題では年金改革を私たちは評価の軸にしましたが、冷静に考えると、医療制度改革の考え方がかなり固まっており、政党がそれを具体的に提示すべきだっ たのにそうせず、年金問題と同様、選挙では有権者にその中身が説明されないのに、選挙後に決定されてしまいました。評価はまだかなり甘かったようにも思い ます。

 北城 次の選挙ではもっと残った課題についても政策を提示すべきです。

 佐々木 前回の民間臨調の検証大会の時にいろいろ議論になったのですが、自民党の与謝野政調会長は医療制度改 革の案を持っていなかったわけではなく、ただ役所のレベルの段階で、それを党としていえない状況だったのではないでしょうか。でも、むしろ積極的に出して もらうべきでした。

 それと、先ほど少しお話がありましたが、マニフェストではいろいろな項目を並べていますが、これらを分かりやすく相互に関連付ける作業を行う必要 があります。これは野党にも当てはまりますが、党内の部会でまとまったものをただマニフェストで並べてしまい、各部分は大変詳しいのですが、全体としてど のようなものを訴えようとしているのかイメージが湧いてこない。個別の項目が具体性をもっていることは重要ですが、それらを中間でまとめて全体イメージを つくる作業がないと、国民にはよく伝わりません。

 もう1つ、先ほど審議会の話が出ましたが、審議会にも実施段階で具体的な知恵を集めるものや、根本的にどのような方向で行うのかを検討するものな ど多くの種類があります。しかし、それらの関係を整理しないとこっちでもまたゼロから議論している、こっちでもやっているという状態になってしまう。せっ かく委員に時間を使っていただくので、こういう範囲で議論してください、こういう前提で議論してくださいと、従来の官主導の流れを整理する意味でも、もう 少しアジェンダセッティングをきっちりして、従来からの官主導みたいな流れをここでもう少し整理すべきです。

 工藤 政策形成のプロセスがまだマニフェスト型になっていないということですね。

 佐々木 それは、まだマニフェストが選挙の時の話になっており、新しく内閣が発足したときに、選挙で掲げたマニフェストをどのように政府の政策に落としていくかというプロセスについては余り考えられていないという問題もあります。
選挙で国民に対して向かい合うという点では政治の意識が変わっていますが、約束した政策をどのように実行するのかという点はまだ不十分で、もっと議論が必要だと思います。

 北城 小選挙区になって、1党から1人しか候補者が出なくなりましたが、前々回の総選挙では党の総裁の公約と異なる考え方の人まで候補者にしてしまったため、本来のマニフェスト選挙を分かりにくくしてしまいました。

 工藤 その点は昨年の総選挙で確かに解決しましたね。ある意味で、党のガバナンスが機能し始めた。

 北城 これは非常に大きなことだと思います。これまでとは異なり、政策を決めるまでは党で議論するけど、決 まったら、それを党として国民に約束するため、反対者は党の公認を受けるべきではないということが非常にはっきりとしてきた。政策を掲げ、それを党として 承認してしまうと、反対できない仕組みになってきた。今後は、マニフェストを作成する前に、代替案も含めていろいろ政策について議論して、これで実際に行 うと決めたものをマニフェストに書いていただく。任期は4年間であるから、全部分からないことはあるにしても、少なくとも最初の1年、2年間の具体策を示 し、何を約束するのかはっきり示す必要があると思います。

 工藤 そういう形になると日本の政治は非常に分かりやすくなります。もう1点お伺いしたいのは、マニフェスト の評価を行うと野党に甘く、与党に厳しくなる、とよく与党の方に言われます。中には、もうマニフェストで協力しないよ、という関係議員もいます。これをど う思われますか。

 北城 そんなことはないと思います。野党は政権をとった場合に、本当に政策の実行能力があることを示さなければならない、という点では野党に厳しい。そのために、野党も政権500日プランなどを出しているのだと思います。

工藤 例えば、野党であっても予算案ぐらい出すべきだという人もいます。

 北城 野党は別途、予算案をつくっています。少なくとも財源の検討なしに、あれをやります、これをやりますと 書くことは強い批判を受けるため、野党のマニフェストの方が財源の枠組みについて随分考えていたと思う。予算案がなければ、それだけ批判される。それだけ に、野党は挑戦する側として、何を実行するか、なおかつ政権をとったときに、本当に実現できるかということを、より国民に示さざるを得ないため、野党への 評価は決して甘くはなかったと思います。

佐々木 与党の人がもし野党に対して甘いし、従って、協力しないというのであれば、そうであれば、マニフェス トを出すのをもうやめたらどうか、と言えばよいと思います。国民が日本の政治を監視し始めている時に、僕はそんなことはできないと思います。そんなことを したら与党は自滅します。マニフェストはもう以前に戻れないということを与党も認識すべきでしょう。選挙が終わると、負けた側の野党はそれ以上追及されま せんが、勝ったほうの与党は執拗に評価される。政権を握った方は当然責任があるわけで。これは野党と違います。与党と野党の責任は全然違うもので、その責 任の重さがあるから国民が与党のマニフェストの評価に関心を持つこととつながっています。責任の重さが嫌なのであれば、野党になってもらった方が筋として は一番通ると思います。

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