Payday Loans
   
「未来選択」は言論NPOが運営するマニフェスト評価専門サイトです。
【メイトになると最新情報】がメールで届きます。
言論NPO

 

2012年衆院選対応「未来選択」新サイトオープン

 2012年衆院選対応の「未来選択」はこちらに移動しました

言論NPOとは

日本のメディアや言論のあり方に疑問を感じた多くの有識者が、日本の主要課題に対して建設的な議論や対案を提案できる新しい非営利のメディア、言論の舞台をつくろうと活動を始めた認定NPO法人です。
⇒詳細はこちら

▼参加したい方はこちら


▼言論NPOのツイートはこちら

▼お問い合わせはこちら

【福田政権の課題】「和の政治」と「理念の政治」2/松本健一 印刷 Eメール

【福田政権の課題】「和の政治」と「理念の政治」第2回

松本健一(評論家、麗澤大学国際経済学部教授)
まつもと・けんいち
profile
1946年群馬県生まれ。東京大学経済学部卒業。京都精華大学教授を経て現職。主な研究分野は近・現代日本の精神史、アジア文化論。著書に『近代アジア精神史の試み』(1994、中央公論新社、1995年度アジア・太平洋賞受賞)、『日本の失敗 「第二の開国」と「大東亜戦争」』(1998、東洋経済新聞社)、『開国・維新』(1998、中央公論新社、2000年度吉田茂賞受賞)、『竹内好「日本のアジア主義」精読』(2000、岩波現代文庫)、『評伝 佐久間象山(上・下)』(2000、中央公論新社)、『民族と国家』(2002、PHP新書)、『丸山眞男 八・一五革命伝説』(2003、河出書房新社)、『評伝 北一輝(全5巻)』(2004、岩波書店、2005年度司馬遼太郎賞、毎日出版文化賞受賞)、『竹内好論』(2005、岩波現代文庫)、『泥の文明』(2006、新潮選書)など多数ある。

群馬に見る中曽根、福田の二つの流れ

 福田さんは群馬ですが、群馬には2つの流れがあります。中曽根康弘さんのような理念先行型の流れと、そうではない父親の福田赳夫さん型の流れがあります。

argaiv1735

 福田家はもと大地主です。大きな農家で、大きな仕組みを取り仕切ってきた伝統がある。ですから、人柄でみなを率いて、みなに合うような調和の状態 を作っていくのが上手です。悠々せまらざる態度で調整し、その上で、時勢に合わせる。合わないような政治をやったらダメだという考え方をとります。福田さ んは、理念先行型ではないのです。利害調整型なのです。

 一方で、中曽根さんは理念先行型です。青雲塾を作り、こういう国にしたい、こういう構造にしたいのだといった理念を掲げます。そして白刃を掲げて 突っ込んで行くという形です。中曽根家は材木屋ですから、その時々の情勢に応じてやっていかなければならないという環境にありました。風見鶏です。しか し、その情勢をふまえた上で、理念を追求する。ちなみに、安倍さんも国民投票法の制定までは一応中曽根さんが設定した通りの道筋で進んでいたわけですか ら、中曽根さんは安倍さんを支持していたと思います。もし中曽根さんがもう少し若ければ、どこの派に誰がいるから、その人をどう使え、内閣を作る時には全 体像をどう作れ、あるいは、憲法改正のための手順はこうしろ、と政局を仕切ることができたでしょう。

 一方、福田さんについては、小泉氏の後に出馬していればよかったという後知恵の話もありますが、彼は、理念を掲げ、熾烈な権力闘争をやって、それを戦って勝っていくというタイプではないのです。本質的にあまり波風を起こしたくないタイプです。

 9月21日の自民党総裁選公開討論会で、麻生さんから北朝鮮の拉致問題について追及されていたこともその例です。拉致被害者が5年前に帰ってきた 時、福田さんが北朝鮮と約束があるのだから、拉致被害者をもう一度北朝鮮に帰すべきだと言ったことを、麻生さんに追及された。それに対して、これは北朝鮮 との間で帰すと約束に近いものがあったので、その時に波風を立たさないということで一度帰すべきだと私は主張したのだ、と反論しています。つまり、福田さ んに政治理念があるとすれば、それは波風を立たせない、和を以って尊しとす、ということになるわけです。

 小泉氏が抵抗勢力と呼んで自民党内を敵と味方に分けてしまいましたが、安倍さんはそれに反対でした。自分の一番の側近であった木内実氏に、静岡の 選挙区で片山さつき氏という「刺客」を立てられ、落とされてしまっています。だから、安倍さんは郵政民営化で除名された人たちを、衛藤氏から平沼氏まで復 党させようとするわけです。一応は小泉政権を引き継ぐという建前も言いました。しかし、やっていることはむしろ、小泉政権の持っていた陰の部分、すなわち 格差問題などの修復をすることでした。この修正路線は麻生さんが引き継ごうとしたものです。

 ところが、福田さんの場合には、小泉改革を継続すると言っていても、陰の部分が出ていることは言いません。福田さんは小泉氏と感情的に対立して、 官房長官を辞めて閣外に出てしまいましたから、そうした陰の部分の深刻さを知り得ないできています。だから、小泉氏が改革をうまくやってのけたのだから、 その路線は引き継ぎましょうという意識なのです。そして、自分の「和」の力量を持ってすれば、今、派閥を超えて自分のところに支持が集まっているのだか ら、みんながうまくやってくれるのではないか、それを調整すればいい、と考えているのでしょう。つまり、長老ふうの希望的観測です。

 しかし、福田さんには現時点での「和」の政治があるだけです。みんなの流れが私のところに来たから、今度は私が首相になりましょう、ということなのです。自分の理念を掲げて、これをやるために私は政権を取る、断固として取る、というのとは違います。

 しかし、いずれ、諸課題をいかに解決するかというところで、自らの信念を問われる局面になるでしょう。最も決定的な対立や矛盾が出てくるのは、例えば、テロ特措法です。

 これは先のスケジュールを考えると、まず、小沢民主党は参議院でこれを否決するということは決まっています。安倍さんは先を考えたから、無責任と 言われようとも、これはもうどうしようもないと進退谷って、結局政権を投げ出してしまいました。自らの体力と根気がつづかないと考えたのでしょう。しか し、参議院で否決されたら、その後どうなるかといったことを福田さんは考えていないと思います。

 福田さんは官房長官をやっている時も、どういう方針で、そういうお考えをもっているのですか、と聞かれて、「いや、その日暮らしですよ」と答えて いました。しかし、今の時代は、「その日暮らし」ではまずいのです。その日暮らしというのは、日本の状況が平和的で豊かで安定している状況で初めて成り立 ちます。

 徳川300年のほとんどの時期は、長老がみんなの意見をききながら、「まあ、これでいいだろう」というような政治のやり方だったわけです。これが やはり日本の大農家、大地主には流れているわけで、福田さんもこの調整型のパターンだと思います。同じ群馬県の小渕氏や加賀百万石の森氏にも少し似ている と思います。自民党内はみな、いま癒しを求めていて、みんな和をもっていきましょうということになっている。何もしないかもしれないけれども、今回は福田 さんに任せましょうということです。その政治課題解決の能力は、かなり怪しいと思います。

 日本をこういう国にしていく、構造改革の結果日本をどうしていく、という旗を掲げ、自らのリーダーシップの下に権力闘争を戦って、そして、俺の理 念を実現するのだ、という政治家が今の日本に必要なのです。しかし、そういう理念を私は福田さんからは聞いたことがありません。麻生さんも、福田さんがど ういう国家デザインや青写真を持っているかということは聞いたことがないから、今度、公開討論会で聞いてみますと、皮肉を言っていました。したがって、福 田政権の先行きはかなり危ういものだと思いますし、閣僚に深刻な問題が出てくればその時点で短命政権で終わってしまうかも知れません。


⇒このページの先頭に戻る

⇒第3回を読む