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「国と地方」編 印刷 Eメール

2007年参議院選挙 有識者評価/「国と地方」編

増田寛也 (内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理)
ますだ・ひろや
profile
内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理
1951年生まれ。77年東京大学法学部卒業後、建設省入省。千葉県警察本部交通部交通指導課長、茨城県企画部交通産業立地課長、建設省河川局河川総務課企画官、同省建設経済局建設業課紛争調整官等を経て、95年全国最年少で岩手県知事となる(3期)。現在、内閣府地方分権改革推進委員会委員長代理を務める。

中央省庁の解体の姿と分権の道筋を語ってほしい

 これまで地方分権といえば、金や権限を国から地方に移そうとしてきました。多分それを、これから多少進めていっても世の中は変わらない。地方分権で問われているのは、まさに地方政府の確立ということで、中央に政府が一個あるということではなくて、それぞれの地域に本当に自分たちの政府をつくることが分権の真髄だと思うのです。

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 今、地域が疲弊し切っているといっても、それを解決していくのは中央政府ではないし、県でもないし、やはり自分たちだと思って、自分たちで解決策を提示していく。あるいは、ちゃんと自分たちが選んだ身近な議会の人たちがチェックするということを、それぞれの地域で行っていけるかどうかなのです。だから、まさに一人ひとり、個人の統治能力がそれに追いついていけるかが問われているのです。

 もしその中であえて分権を進めていこうとすれば、覚悟が問われます。夕張市のようになっても、国が助けはしない。都道府県も助けはしない。自分たちが全部解決しなくてはならないということをつくり出そうという、実は非常に大変な苦難の道を歩んでいくのが地方分権です。

 地方分権改革推進委員会の基本的な考え方も、真髄は地方政府の確立を目指すことです。まさに国の形そのものにかかわる、政治課題です。

 私は今、地方に足を運んでいます。そこで出る意見は2つあって、住民も含めて分権についていけるのかどうかという話と、責任を全部自分たちが負わなければならないのは厳しいということです。それだったら、早く合併して、足腰をもっと強くしていかないと、分権の上できちんと自分たちの責任を果たせないという意見が出ています。

 政府は分権を進めるために推進本部をつくりましたが、これには全閣僚が参加しており、その担当は、地方分権担当としての菅義偉大臣です。事務局は内閣府の中で、各省の出向者が40人ぐらいです。その上に7人の委員がいて、それが政府に対して、来年ぐらいになると思いますが、勧告します。勧告を受けて3年以内に政府の方でも一括法を提出するということですから、政府の責任の中でそれを実行していくことになると思います。

首長や地方議会がレベルアップするにはどうすればよいか

 国の本音としては、財源には、手を触れてほしくないのではないでしょうか。今、国は貧乏だと盛んに言っていますから。先日、第1回目の本部会議があって私も出ましたが、やはり財務大臣はそういう発言をしていました。

ただ、その中で次のような発言もあったのです。本当に地方にいろいろな権限を渡して、地方を自立させるというのは大事だけれども、地方の議会とか、議員さんが本当にちゃんと機能していないと、かえってぐちゃぐちゃになるので、その財源は地方に渡したくない。いずれは大きな流れはそうなるにせよ、そのとき、本当に議会がうまく機能するかという懸念を皆さん持っていますよと。今の議会のレベルが大丈夫なのかと言っている人もいました。

 確かにまだまだレベルは様々ですが、だからこそ、そこを切り替えて、レベルを高めていかないと、一歩も分権が進まない。単に金を地方の方に渡すだけだとかえってぐちゃぐちゃになって、国民がそれをやめろということになりかねない。だから、議会のレベルアップは絶対しなくてはなりません。

 議会が、今のスタッフだけで、県庁の役人に頼らないで条例を立案しようとすれば、必要な体制というのはもっと整えないと駄目です。全体の議会費を多くするのは認められないと思いますので、もっと議員を少数精鋭にして、そこにスタッフをたくさんつけて、一人当たりの経費をもっと増やす。そのかわり全部透明化するというのが一つのやり方だと思います。

 首長の多選制限については、私は一律で制限することは反対です。しかし、状況によってはやむを得ないかもしれません。分権をこれから進めていく上では。例えば道州制になったら、道州制の首長は多分多選制限を引き入れないと駄目でしょう。そのときは最大3期までとか、その中で条例で決めるとかにしておくべきではないでしょうか。議会は住民が組み立てなければいけませんが、僕は少数精鋭で、しかもプロのスタッフをつけないと首長の監視は難しいと思います。

条例の上書き権の重要性

 それから条例の上書き権は、今回のポイントです。行政の方だけの分権を今まで一生懸命やってきましたが、自治立法権も国会に独占させないで、地方に分権していく。ただし、条例で政省令を全部上書きできる(書き替える)ような権限を与えたいのですが、それにはよほど議員のレベルが高まっていなければならない。

 住民の皆さん、いい議員を選んでくださいねと、やや祈るような気持ちです。ただ、そこを否定してしまうと天につばするような話で、民主主義の否定になってしまう。そこは国が、あるいは都道府県が手助けは絶対しないという制度設計にしておくべきだと思います。

 上書き権について、政府は今のところはまだ総論賛成の段階です。これからいろいろ反対が出てくるでしょう。しかしこれによって、例えば公立保育所とか、介護施設の整備の水準が各地域で差が出てきますから、金を移すこと以上に世の中が非常に変わってくる。

 自治立法権にまで分権を踏み込んで、政省令に対して条例を優先させることを体系づけたいと思っています。これには霞が関は反対します。国会議員も反対するかもしれません。それを押さえるのは多分住民の力しかないと思います。そのためには、うちの町の議会は大丈夫な議会だなと住民が思ってくれないといけない。彼らが条例でいろいろな規則を決めても、自分は従うよというような議会にぜひなってほしいと思います。とにかくうちじゃ危ないぞと住民が思っていたら、絶対何も進みません。


地方債の債務調査の議論は、もっと進めないと駄目だと思います。先日法律で成立したのは、早期是正措置といういわば、警戒警報を発するところまでです。もっと自治体の格付けを金融機関がするとか、市場の中でリスクもとらなくてはいけません。全部を完全に自由化というのは自治体の性格上できないと思いますし、そこまで進めるべきではないと思っていますが、それでももっと自由化していく必要があります。

自治体も今までは無駄な投資をやっていました。だから、そこを自治体は断ち切らないといけません。民間の中で、それを再生させるための仕組みが必要だと思います。経済産業省の地域再生協議会はアドバイスのところまででしょうが、僕は金よりも人材だと思います。人材を派遣して、会社を立て直す人たちを出すような仕組みがあるといいと思っています。

 今後破綻する自治体が出てくれば、隠れ借金が明らかになるでしょう。今、自治体の負債201兆が199兆と若干よくなったと言っていますが、隠れ借金が非常に大きいわけで、それをあぶり出さないと駄目ですね。トータルの負のコストをどう処理するかを国とパラレルの関係で考えていかないといけないでしょう。

 政党は地方分権について、あるいは地方分権改革推進委員会が示した、「基本的な考え方」について、何らかのアクションを起こし、国民の支持を獲得していく必要があります。そうしないと、今激動の時代で、国の形が問われているときに、政党の役割を果たしていないのではないでしょうか。

 「基本的な考え方」の中で、特に日本の政治が見解を示すべきなのは、自治立法権の問題でしょう。私は地方の知事を一二年間やってきました。その中で思いましたのは、日本の政党、あるいは地方の議会は、地域の問題に十分応え切れていません。地域に行けば行くほど、公共事業を増やしてくれと、自民党も民主党も一緒です。地域の課題に真剣に応えていないから、足腰が弱くなったし、政党の存在感が薄いのです。だから、首長も無党派がかなりはびこっていったのではないでしょうか。今こそ政党は、地方に根づいた政策を提示していくべきだし、自治立法権についてきちんとした対応をすべきだと思います。

自立的な地域経済を運営するにはどうすればよいか

 ふるさと納税は格差の問題を考える上での一つの象徴的なものですが、ふるさと納税そのものはそのごく一部です。ですがその背後にある、今の日本の全体の構造に目を向けるべきです。東京に若い人たちがいないのです(0~14歳人口が全国で一番低い)。だから、若い人を地方から吸い集めないと、東京の経済が維持できないような構造になっており、その上で発展している。

 東京に集中した金を取って各地方にならせば、国の腹は全く痛まないし、地方間格差を少しは埋められますが、いつまでたっても根本の解決にならない。ですから、一つの政策として金で解決するならば、国税と地方税の大きな入れ替えも含め、国と地方の関係を見直すべきです。


もう一つの政策としては、かつて一極集中から多極分散と言っていた時代がありました。最近、言葉が非常に陳腐化しましたが……。それよりも、例えば道州制導入で経済的に自立するような州をつくって、おのずから東京に全部集まらない形をつくることを、問いかけるべきではないでしょうか。

 「何年後かには道州制に持っていきます。そのときにはこういう姿で、東京だけに人が集まるのではなくて、道州の州都には多少人が集まるかもしれないけれど、道州間で経済がきちんと回るような姿になります」、というようなことを問いかける。ふるさと納税だけをやって、金を東京から地方へというのは、物事の解決を提示したことにはならないと思います。

 民主党は300の基礎自治体を唱えています。一律に全国300諸侯というわけではないでしょうが、代表の持論ですからね。今ある1800の基礎自治体を300にするのだったら強制合併しかないわけです。今の小選挙区単位でしょう。岩手県が4つの市になるというイメージです。しかし、それを前提に地方分権を考えるということにはならないと思います。

 強制合併だったら、分権に反する。今やるべきは、多様性のある自治なのです。水平調整については、道州の中で考えてもらう。非常に小さな地方政府であれば、多分、その自治権は非常に制限される。それから、一方で非常に大きな地方政府もあって、ここは自分たちで完結するし、場合によっては周辺の小さな自治体に対して相当援助する。それらが多様に組み合わさりつつ、ブロック間ではお互いに財政調整を必要としないような姿です。ブロックを8つとか9つとか10に分けて、ブロック間の財政調整はほとんど必要ないぐらいの形にして、あとはその中のことは各ブロックに任せる。

 これは確かに大手術です。しかし、安倍政権は真正面から憲法問題を選挙の争点にしました。最近は年金の方などいろいろ問題があり、方針が変わっているようですが、やはり戦後レジームからの脱却、憲法問題となれば、それは防衛の問題だけではなくて、地方の、例えば道州制も、憲法問題の中で議論するぐらいの気構えでないとできないし、逆に憲法に触れないのなら、かえってあまりやらない方がいいかもしれません。

 安倍首相は、分権の問題は安倍内閣の最重要課題だとおっしゃっていました。重要課題というのではなく、あえて最重要課題とおっしゃっていた。その中で憲法問題として議論する気迫を持ってやるとすれば、私もいろいろ提案できるし、勧告をそういう内容に高めたいと思います。

マニフェストと地方分権

 自民党のマニフェストについては、内閣として決まったことをただ書いているだけで迫力がないです。もっと戦後レジームからの脱却につながる理念を出していただきたい。それから、中央省庁の解体の姿は相変わらず見えないですね。それをはっきり書いて、その上で分権をどう進めるかを考えないと駄目だと思います。

 発想、ビジョンは補完性の原則にしたがい、下から組み立てて、大きな絵を描いた上で、余った国家公務員をどういうふうに地方に回すかなど、今度は上から下ろしていかないとできないわけでしょう。両方を精緻につなぎ合わせなくてはならない。その点でやはりまだまだ本質に踏み込んでいません。

 民主党は何とも批評のしようがありません。まず分権の姿と相容れないと思うのは、300基礎自治体を唱えていることです。民主党は野党で、政権を取りにいく政党です。だから、理想論を掲げるだけではなくて、それを実現するための道筋まできちんと書いて、国民の支持を集めていかないといけない。ところが、300の基礎自治体をとなえている限りにおいては、これを実現するのは強制合併しかないと思います。これを分権ではなく、国家統治の最たるものでしょう。

 それから、相変わらず、ひもつきの補助金をなくすと言っていますが、なくした後、ばら撒きなのか、そこもはっきりしていない。やはり300基礎自治体論のトラウマがある。その呪縛から逃れられず、地方分権の政策は民主党には今ないと思っていいのではないでしょうか。

 今回の参議院選挙のマニフェストが、昔のその場限りの公約に戻ったのは残念です。参議院選挙は政権選択選挙ではありませんが、安倍政権には最初の審判です。ですから、そういう意味ではちゃんとしたマニフェストを出さないといけません。それから、民主党は新規巻き返しだから、次の本格的な衆議院での政権奪取に向けて、マニフェストの片鱗を見せないといけない。参議院だということに甘えては駄目でしょう。


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