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「地球環境」編 印刷 Eメール

2007年参議院選挙 有識者評価/「地球環境」編

松下和夫(京都大学大学院地球環境学堂教授)
まつした・かずお
profile
1948年生まれ。72年から環境庁勤務(大気規制課長、環境保全対策課長など)、また国連地球サミット事務局、地球環境基金部長、財団法人地球環境戦略研究機関(IGES)勤務などを経て、現在京都大学大学院教授として地球環境政策を教える。地球環境問題、特に地球環境政策・国際環境協力に深くかかわり、環境行政と政策研究に従事。

京都議定書の達成と長期的目標への道筋を明らかにすべき

削減目標達成に向けて計画の見直しが迫られる先進国

日本は、京都議定書で1990年比温室効果ガス6%減を約束しています。来年から約束期間(2008~2012年)が始まります。日本で採択された京都議定書ですから、国際約束として何としても達成していきたい。これは政府もそう言っていますし、私もそう希望します。

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ただ現実は、すでに2005年で7.8%増ですから、今後14%ぐらい削減しなくてはいけない非常に厳しい状況です。政府は現在の目標達成計画の見直しをしていて、そこにどういった追加的な対策を盛り込めるかが非常に重要な焦点になってくると思います。そういったことも、今度の選挙では十分議論していただきたいと考えています。

今年のサミットで安倍イニシアチブ、すなわち2050年までに温室効果ガスの排出量を半減するという目標を出したことについては積極的に評価したいと思います。従来、日本政府はそういう数字を出していなかったわけですから。ただ、厳密には、基準となる年が決まっていないとか、どういうふうにして達成するか、あるいは地球全体で半減ですから、先進国はどれくらいか、途上国はどれくらい削減するかという実質的議論はこれからです。ただし、総論の枠が一応できたという意味では大きな前進だと思います。

京都議定書は非常に重要な枠組みですが、これは気候変動対策の究極目的から言うと、極めてささやかな第一歩です。人間が出す温室効果ガスと、自然が吸収してくれるガスの量とをバランスさせる必要があります。現在人間が出している量は、自然が吸収している量の二倍以上ですから、半分に減らさなくてはならないことは、科学者の間ではコンセンサスがあるとみていいでしょう。

EUなどは、そういったことから逆算して、例えば2020年までに先進国は30%、EU独自でも20%減らすと言っています。気温については、産業革命前と比べ二度以内の上昇に抑えるという長期ビジョンを出して、そこから逆算しています。日本は、従来そういった議論はなかったのですが、一応今回初めて出しました。
もちろん温室効果ガス削減の国際的な枠組みにアメリカやインド、中国などに入ってもらうということは重要です。途上国を説得する方法として、入りやすいようにして入ってくださいというよりも、まず、先進国が自ら率先して、足元の京都議定書について実績を上げ、これからは自分たちとしてはこのぐらいやっていきますというのがEU方式ですが、そういうやり方も必要だと思います。ここまでやったという実績がないと、先進国の責任の観点から途上国に対する説得力が乏しいと思います。

今後の国際枠組みの考え方として、一つは現在ある京都議定書の枠組みをベースとして、それに付加して国際枠組みをつくろうということ。もう一つは、京都議定書とは全く別のフレームワーク、例えば技術開発を進めるイニシアチブとか、あるいはセクター別目標をつくっていくイニシアチブを中心にするという流れがあります。

京都議定書は非常に長い時間をかけて初めて国際的に合意した約束ですから、これをベースにして、それに例えばセクター別目標とか、技術開発を促進する仕組みだとか、資金を移転する仕組みを付け加えていく。もちろん、その中に排出量取引もあるでしょう。そういう方法が現実的です。

経済発展と環境保全をいかに両立させるか

日本のGDP当たりのエネルギー効率が高いとはいっても、家庭のエネルギー消費量が少ないからで、産業セクター別に見ると、他国とのエネルギー効率の差は必ずしもそれほどではありません。もちろん日本の産業や商品の中で非常に効率的なものもあり、省エネルギーが進んでいる部分もありますから、それを普及する仕組みや、日本の個々の企業で非常に頑張っているところも多いので、それらの会社が評価される仕組みをつくっていくことが必要です。

具体的にいうと、CO2の排出に値段をつけ、CO2の削減が収益につながり、社会的にも評価される。温暖化対策で頑張った会社は収益が上がり、メリットがあるという仕組みが必要でしょう。家庭では、省エネが便利で経費が節約できる仕組みをつくることです。

国際条約とか議定書というのは、アメリカの例に見られるように、脱退したり、目標が達成できないからやめてしまったりしても、ほかの国が強制することはできません。とはいえ、それは国際的な信義にかかってきます。持続可能な世界をつくるために、どのような国際的枠組みをつくり、その中で、長い目で見て、日本の経済や産業がどのように発展できるのでしょうか。

今後温暖化による制約を考えると、日本の産業にも早期の積極的対応が迫られています。EUでは、排出量取引などで対策を取り、技術を開発したところが報われ、税金も免除される仕組みをつくっています。日本は、国内排出量取引制度や炭素税を導入せずに国際約束を達成しようとすると、最後は公的資金で外国から排出枠を買ってくるということになってしまいます。

また、どのような対策で約束を達成するのか、そのコストと効果を国民に明らかにする必要があります。税金で買うと、国民には自分の懐を痛めていないような気がしますが、実は最終的には国民の負担になります。税金で買うのがいいのか、技術開発や省エネルギーを促進する仕組みをつくるのか。規制強化をする、あるいは森林整備をしてCO2吸収を増やすのか。その場合、どれだけコストがかかるか。他のやり方と比べて、どれが国民にとって納得できるのか。そうした比較考量をするためのデータを出していくべきです。

今度の選挙では、せっかく長期的な目標を出したわけですから、その目標を達成するための実施手段や達成スケジュール、あるいは中間目標を示してほしいところです。現在の政治家は2050年ごろにはいないので、とりあえず長期目標を言っておけばいいということであってはなりません。

求められることの一つは、やはり足元の京都議定書を達成する仕組み、実施手段を明らかにすること。それから、長期的な目標に到達する道筋を明らかにすることです。これまでずっと議論が封殺され、進まない国内排出量取引制度や、炭素税(地球温暖化対策税)についてどう考えるか。それから、エネルギー関係の特別会計をどう改革するか。それらを議論すべきです。

ところで、排出量取引を導入すると、対策の総費用が節約できるというのが普通の経済モデルの結論です。例えば国内で大規模事業者に排出上限を割り当て、排出枠を企業間で売買する国内排出量取引制度や、CDM(クリーン開発メカニズム)を使って中国でより効果的なプロジェクトを実施する、あるいはロシアで共同実施(JI)をするとか、そういう方法がより費用の点では効果的です。より効率的で、より安く削減できるところでお金を使う方が、総費用は少なくて済みます。

安倍総理は多摩川で掃除したり、新聞広告では電球を蛍光灯に替えたりしています。国民の意識を変え、クールビズやウォームビズ、そして省エネルギー型家電製品への買い替え、それらは非常に結構だと思います。ただ、それは一つのきっかけであって、社会のシステム、市場のルールそのものを根本的に環境配慮型に変えていかなければいけません。心掛けだけでは限界があります。心掛けは政府も環境省もずっと言ってきましたが、これまで成果はあまり上がっていません。例えば経済的インセンティブとして、石油、石炭に対する炭素税の導入などをすれば、長期的には変わってくると思います。

ガソリンなどの価格を炭素税で政策的に計画的に上げていくことになれば、短期的には自動車に頼らざるを得ない人が多いので需要の弾力性が小さく、すぐに効果は出ないかもしれませんが、ユーザーは買い替えるときに、より小さくて燃費がいい自動車を選び、メーカーはより効率がいい自動車を開発しようとするでしょうから、長期的には効果があります。

有権者が知りたいのは政策の具体的中身

選挙に向けた自民党の重点政策を読むと、具体的で明確な目標、数値とスケジュール、実施手段などが書かれていません。書いてあること自体はもっともですが、どのように実施するか、進行をどう管理するか、そういうことが抜けています。「京都議定書の確実な達成に向けた制度等、あらゆる面からの抜本的強化」とある項目自体はそのとおりですが、肝心の中身はあまりありません。

「世界に先駆けた『低炭素社会づくり』に向けた国民運動の推進」の項目がありますが、そこを読むと、例えば「『一人一日一キロ』のCO2削減を目指す」というのは国民にとっては実感がないでしょう。どれだけメリットがあることなのか、コストの節約になるのか、どういう方法で減らすかというものがないので、やたらと節約や我慢だけを強いられている感じがします。取り組むと生活がより良くなり、便利になるとか、コストが節約できるとか、そういうものがない。達成するため我慢しましょうということだけだと非常につらく、国民の共感を得る訴え方になっていません。

2050年に向けたより明確な道筋づくりが必要

「北海道洞爺湖サミットに向け『環境外交』の戦略的な展開」の項目で、世界全体の排出量を2050年までに現状から半減することが必要であると書いています。先述のように、従来、日本政府が長期目標を明らかにしてこなかったので、2050年という一つの目標、長期的なターゲットを出したことと半減という数字を出したことは評価したいと思います。

日本提案のベースになったのは、国立環境研究所や京都大学などが中心になった研究「脱温暖化2050」だと思います。これは、いろいろな技術の普及や社会のシステムを変えることによって、日本で2050年に、温室効果ガスを90年と比べて70%削減することが可能であるというシナリオ研究です。このシナリオでは、脱温暖化社会を、生活水準を下げることなく、より安心で健康的な生活を確保しながら達成できるとしています。例えば都市をコンパクトにし、公共交通を充実し、現在、実用化されているハイブリッドカーや、高効率給湯器、ヒートポンプなど、いろいろな技術をどんどん導入することを想定していますね。

2050年というのは随分先のようですが、エネルギーインフラや、都市づくり、技術開発などを考えると、これからの10年、20年が非常に重要な時期になってきます。今から着手すべきことが多いので、安倍政権がそれにイニシアチブを発揮することが必要です。

民主党は自民党と比べると、具体的に中長期目標、例えば国内で2020年までに90年比20%削減とか、長期的には2050年よりも早い時期に50%削減と言っています。また、キャップ・アンド・トレード(総量規制)方式による国内排出量取引制度の創設を挙げ、炭素税、炭素一トン当たり3,000円という案も出しています。また、再生可能エネルギーについても、2020年までに10%を実現するとしています。これらは、具体的な数字と目標達成時期を明示しているので評価できます。それから環境負荷低減技術や商品の普及推進、脱フロンも定性的ですが、書かれています。ただし、これでも京都議定書の目標を達成するのは難しいかもしれません。

まとめて言えば、自民党については、国内のことについて具体性がないので、よりブレークダウンして、具体的な数値目標や達成手段を書き込んでもらわないと評価できないと思います。

民主党は、確かに数値は書いていますが、それをどう達成していくのかがありません。さらに、国際的な枠組みや外交戦略の具体性が欠けている印象を受けました。

いずれにしても、今後、低炭素社会に向かうことは必然であり、早期の国家目標と社会ビジョンを共有し、削減計画の設定と温室効果ガス排出の外部不経済を内部化する社会の実現が必要です。その過程で社会と技術のイノベーションがもたらされるのです。


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