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「外交」編 印刷 Eメール

2007年参議院選挙 有識者の評価/「外交」編

栗山 尚一(元駐米大使)
くりやま・たかかず
profile
1931年東京都生まれ。東京大学法学部中退。54年外務省入省、85年駐マレーシア大使、89年外務省事務次官を経て、92~95年駐米大使。帰国後2003年まで早稲田大学、国際基督教大学客員教授として活躍し、現在に至る。著書に『日米同盟 漂流からの脱却』(日本経済新聞社)、論文に「和解―日本外交の課題」など。

価値観を共有しない国との関係こそ説明すべき

 安倍首相は、「主張する外交」としきりと言われますが、それは全く当たり前で、どこの国だって、自分の国の利益を主張するのは当然です。何をどう主張するかが問題で、日本の国益をいかに説得力を持って国際社会の中で主張し、確保していくかが大事です。

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 日本はこれから少子高齢化が進んで人口が減っていきます。今までは、日本は世界第二の経済大国で国力が大きく、影響力がありました。しかし人口が減るということは、ほかの要素が変わらなければ、国力が小さくなるということです。そういう中長期的な傾向に対して、それをオフセットする(埋め合わせる)要素をどこに見つけるかということが重要です。それをどうやって説得力を持って国際社会の中に売り込むか。その問題意識を、政権を取ろうとする人にぜひ持ってもらいたいと思います。

 「美しい国」というのは、国際的には全く説得力を持たないと思います。日本として何を主張するかという、主張の中身に説得力がなければいけません。けれども「美しい」ということは、一人ひとりが違うように理解することが可能な言葉なのです。海外で悪意を持って理解しようとする人は、これは一つの非常にゆがんだナショナリズムだと受け取る可能性があります。

 サミットで「美しい星」といっていることは、地球温暖化が国際社会の大問題だと認識をして、それを防止するために、日本がリーダーシップを取って、アメリカや中国を説得して何かやっていこう。それが「美しい星」だというのならば、一つの問題意識としては正しいと思うのです。ですから、今回のドイツでのG8サミット、来年の北海道洞爺湖サミットで環境問題がアジェンダ(課題)のトップになってくる。そこで日本のいいところを大いに主張しようというのは、悪くないことだと思います。

 本当にそれができれば、ミスター安倍が言っている「美しい国」とはそういうことかという理解はある程
度してもらえるでしょう。しかし、それは相当大変なことです。日本は随分努力をしてきていますが、CO2の削減に関しては、これまでのところあまり成績はよくないのです。だから、もし本気でやろうとすれば、日本国内の生活パターンを相当変えていく必要がありますし、そのためには強力なリーダーシップが必要です。ですから、若干疑問はありますが、やろうというのであればそれはそれで悪くないことだと思います。

 参議院選挙に当たって安倍政権の外交を評価してみると、対中国、韓国外交でのスタートはよかったと思うのです。小泉政権のときに、いわば脱線していた関係をレールの上に戻した。ただ、その後、列車が走っているかどうかが問題です。外交には常に相手があり、例えば韓国との関係では、日韓関係がぎくしゃくするのは、向こう側にも相当程度責任があります。ですから、うまくいかないからといって、必ずしもこちらが悪いということではありません。

 けれども、日中関係、日韓関係は大事であることは間違いないのですから、せっかく訪中、訪韓してレールの上に戻したのならば、その列車を走らせる努力をもう少ししないといけないという気がします。

 それから、外交で何を目指すかということがあります。国益を守るためには、秩序が必要です。国際秩序とは、国と国との間のつき合い方を律するルールです。そして、ルールを実行するために、必ずしもがっちりとしたものではなくてもいいのですが、ある種の組織的なものが必要です。問題は、アジア・太平洋で、誰がそういうルールをつくり、ルールの実行を担保するような組織なり、機構なりをつくっていくかということです。

 秩序づくりの主要なプレーヤーの一極は、明らかにアメリカです。日本もそこに参加をして、日本自身が欲するようなアジア、あるいはアジア・太平洋をつくっていきたいと思うなら、相当一生懸命やらなければいけない。その場合に一番重要なのは、中国との関係です。中国は、単に規模が大きいだけではなく、八〇年代以降、開放されて国際的に大きな影響力を持つようになった。ですから、どういうルールの下で中国とつき合っていくかが、日本にとってはもっとも重要な問題であることは確かです。

 ところが、下手をすると、中国を封じ込めるという話が出てきます。それは絶対にできないのですから、封じ込められない相手とどうつき合い、誰と協力をしていくか、ということを考えなければいけません。日本は日米同盟を結んでいますから、中国との関係もそれが前提になります。それは自民党でも、民主党でも同じです。しかし、中国とは明らかに価値観が違う。この問題は非常に厄介で、うっかりするとネオコン的な話になってしまいます。「俺はあなたと価値観が違うよ」という場合、武力でいや応なしに自分の価値観を押しつけるというやり方をやろうとしたのが、アメリカの一部の人たちです。しかし、それは駄目だということです。ですから中国と日本とでは、明らかにいろいろな面で、特に政治体制、社会体制の面で価値観が違う中で、それを前提に日中関係を考えていかなくてはならないのです。

 アジア・太平洋の平和や安定は、日本にとって死活的な重要問題です。民主主義の国々、例えばオーストラリアやアジアのほかの民主主義諸国など、政治体制についての価値観を共有している国との関係は、おのずとうまくいきます。重要なのは、価値観を共有しない国との関係をどういうふうにルールづくりして、関係が対立的にならないようにするかで、それを考えるのが外交なのです。

 北朝鮮問題では、拉致は重要です。しかし、この問題の最終目的は、北朝鮮とどういうふうに関係を正常化するかということです。それは、拉致の問題が解決しないと駄目なのですが、同時に、ミサイルを含めた核兵器の問題も解決しないと本当の意味での日本の安全保障が確保されません。ですから核、ミサイル、拉致と三位一体で、これは自民党も包括的に解決すると言っています。

 ただ、これはなかなかデリケートな問題で、核の問題は難しい。アメリカや中国の力を借りないと解決できない。アメリカがどこまで日本と足並みをそろえてくれるかということは難しいので、相当よく話をしないと、だんだん両者の足並みがずれてくると思います。

 可能性が懸念されるのは、アメリカが、結局、最後は北朝鮮に核を放棄させることはできない、と考えたときです。その場合、アメリカとして絶対に必要なことは、北朝鮮がつくった核をテロリストや第三国などへ、アメリカに直接脅威をもたらす形で拡散させないようにすることです。だから北朝鮮が核を持つこと自体は容認しようという話になる。そうならないように、アメリカをしっかりとつなぎ留めて、共に北朝鮮を説得することが必要だと思います。

 憲法問題では、第九条に限って言えば、国民が知りたいこと、知るべきことは、第九条を書き直すことではないのです。軍事力との関係で、日本は国際社会の中で何をすべきで、何はするべきではないかをきちんと政治家から問いかけられて、それに国民が答える。それによって、憲法を書き直すのか、書き直すのならばどう直すのかはおのずと決まり、その逆はないと思うのです。それをはっきりと、日本の政治家は国民に説明をし、外に対しても説明しなければ駄目だと思います。

 私は憲法を絶対に書き直してはいけないとは思っていません。ところが、何をするのかということがわからないまま憲法を書き直した場合に、当然国際社会は、日本はそれで何をするのだろうかと問いかけ、それに対する答えがなければ、世界から非常に疑いの目で見られる。よくよく考えると、集団的自衛権の問題と国際貢献の問題とは、じつはあまり関係がなく、国際貢献をするために集団的自衛権が必要だというと、話が非常に混乱してしまいます。  

 自民党マニフェストについては、アクション・プラン一〇を拝見したのですが、いいことも書いてあります。外交のインフラをいろいろな形で強化し、それからODAを増加するということです。ODAは、日本の国際的な影響力、特に途上国との関係での影響力を維持し、強化していくための非常に貴重な手段でした。今でも私はそう思います。確かに、国民の税金を使う以上は、もっと効率的に使うべきだという議論は当然あってしかるべきことです。しかし、だからといって、今、ODAを減らすというのでは、国際社会で影響力を維持するためのあるべき姿かというと、明らかにそうではありません。  

 アメリカとかヨーロッパの国も、一時、援助疲れで援助が減っていたのが、今では援助を増やそうとしています。現在は、主要援助国の中で、日本だけがODAをどんどん減らしているという状況です。自民党のマニフェストに「世界を主導する国として」、「ODAを質量ともに拡充」と書いてありますが、もし本当に自民党がこれをやってくれるのであれば、非常にいいことだと思います。  

 また大使館体制も充実させるとあります。今、大使館は一二〇ぐらいでしたか……。これだけ公務員を減らそうというときですが、外務省、特に在外公館は本当に人が足りないのです。今では、外交官試験がなくなって国家公務員試験一種に統合されましたが、プロパーの外務省の人間だけではなくて、民間やよその省庁から入ってきた人も含め、全体として外交に携わる人の人数を増やすことは絶対に必要なのです。外務省に籍を置いていた人間としては、本当にこれを自民党がやってくれるのであれば、大いに応援したいし、お願いしたいと思います。  

 ところで、最初の話に戻りますが、外交には全体構想が必要です。全体構想というのは、「美しい国」とか「主張する外交」とかのイメージでは駄目で、具体的にどういう秩序を日本は志向し、どういう国と国との関係を重視するのか。経済でも経済連携協定とか、自由貿易協定とかいうわけですが、本当に自由貿易体制が必要だと思ってやろうとしているのか、具体的なことが重要です。その点が、いま一つはっきりしません。  

 日本を外に向かってもっと開いていく。貿易を自由にするというのは、輸入を自由にし、物の貿易ばかりでなくて、サービスとか、金融とか、場合によっては、人の交流をもっと自由にするということで、日本の社会をもっとオープンにすることです。恐らくそのビジョンや決意は今の野党にも政権与党にもないのではないかと思います。

 自民党マニフェストの二番目に出ている「日米同盟に立脚した価値観を共有する国々との連携強化、『自由と繁栄の弧』の形成」は、非常に難しいと思います。というのは、「自由と繁栄の弧」と言われているところは、アメリカが不安定の弧と言っているところだからなのです。

 この地域は、端は中央アジアからヨーロッパの端までを対象にしています。「中央アジアや中東諸国などを支援し、普遍的価値に基づいた豊かで安定した地域をつくること」となっていますから、今まさに価値観を共有していない国々に対して、日本やアメリカやオーストラリア、インドが持っている価値観をどうやって広めていくかということを意味しているのです。もし、これが答えだとすれば、中国封じ込め(コンテインメント)かということになる。もちろんそう聞かれれば、安倍さんも、自民党の人も、そんなことは考えていないと言われるでしょうが。

 民主党は、党内に二派ありますから、安全保障についてもあまり整理されていません。「国連改革では、国内世論と加盟国の支持を前提に、我が国の常任理事国入りを目指します」としています。これは悪いことではないですが、例えば特措法をやめてイラクから手を引けというのが民主党の持論です。それは、日本ばかりではなく、ほかの国も手を引けということを意味するでしょう。そうすると、その結果、イラクがどうなるかということについて、民主党は答えないといけないですね。ほかの国も手を引きなさい、あとはイラクで勝手にやりなさいということでは、結局、イラクが大混乱になります。完全な内戦状態になりますし、その結果、あの地域全体が非常に不安定になる。あそこは日本にとっては石油の生命線ですから、政治的に安定しないと、日本は安定的に石油を買えなくなります。そういう中東になっていいのかということです。

 日米同盟について、これを強化すべきだと考えるのであれば、私は、民主党も、自民党も、沖縄の基地の問題をきちんと処理すべきだと思います。ご存じのように、普天間の飛行場移転の問題、普天間の基地をやめて動かすのは、橋本内閣のときにアメリカと合意して以来、沖縄の中で話がつかず、動かす先が決まらなかったため、一〇年以上止まっています。そのために、いつまでたっても普天間の基地が返ってこない。

 今度、海兵隊を大幅に減らしてグアムに移転する。ものすごいお金がかかるのですが、なぜそれだけのお金がかかるか、なぜ日本がお金を負担しなければいけないのか。これらについて、国民に対する説明がありません。米軍基地の再編問題は、アメリカから見ると、日本はちゃんとやっていないんじゃないかという話になるわけです。

 自衛権については、国連のPKOと、そうでない本来の自衛権の範囲の問題とをきちんと整理すべきなのです。民主党の考え方は、若干そういう方向で、それはそれで、方向としては正しいと思います。ただ、実際、国連軍はできないから絵に描いた餅で、安保理が承認をした多国籍軍的なものになる。

 もっと困るのは、安保理がまとまらないときにどうするのかということです。それは置いておいても、普通の国連のPKOに積極的に参加するならば、民主党も自民党も、武器使用の問題をもう少しきちんと整理して、自衛権の問題とは分けないといけません。今は正当防衛の範囲内でしか武器を使えませんから。

 一般法をつくることは賛成です。ただそのとき、よその国と同じような形で国際平和協力活動に参加することが確保できないと駄目です。そのためには、今の憲法の話はもう少し整理する必要があります。交戦権について、民主党は国連憲章第四一条、第四二条に基づく国連軍ならいいという書き方をしています。それは国連憲章が描いている理想型ですが、現実の国際政治の世界ではそういったものは出てこないのですから、結果的には現状と変わらないということになります。

 私がもっとも申し上げたいことは、これからの国際環境は、日本にとって厳しくなるということです。
それは幾つか理由があるのですが、根本的に世界の政治経済構造が冷戦時代と変わり、しかもむしろ日本にとっては不利な形になっているのです。端的に言うと、アメリカに頼っていれば、基本的には間違いがないというのが冷戦時代だったのですが、そうではなくなっている。しかも、世界第二の経済大国と言われた国力が、これから小さくなる。だから、よほど緊張感を持つ必要があります。

 「主張する外交」の危うさは、何でも一方的に主張するのがいいと思い込むことです。その背景にあるのはある種のコンプレックスで、今まで日本は主張すべきことを主張しておらず、そのために日本の利益が失われてきたのではないかというイメージなのです。要するに、低姿勢すぎる、もっと頭を上げるべきだというのです。しかしそれだけでは、「何を主張したいのか」という疑問に答えることにはなりません。

 最後に一つ言いたいのは、平和主義です。私は、日本の平和主義というのは大事なことだと思っています。しかし、日本の言っている平和主義は何なのかということは説明されていません。

 例えば、日本は戦後、一人の自衛隊員も戦争で死ななかった、自衛隊は一人も人を殺さなかった。だから、日本の平和主義は非常に貴重なんだ、と言う人がいます。しかしそれは、憲法第九条があるからではなく、日本の外交や日米同盟などがあって、国際環境が日本に有利に働いたから、人を殺さないで済んだだけの話です。

 ですから外国から見ると、しばしば日本の平和主義は、単に内向きの平和主義だとか、ひとりよがりだと思われがちなのです。日本が主張している平和主義が果たしてどういう意味なのか、日本は世界にもっと説明をしていかなければいけないと思います。


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