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「公務員制度改革」編 印刷 Eメール

2007年参議院選挙 有識者評価/「公務員制度改革」編

村松岐夫(学習院大学法学部教授)
むらまつ・みちお
profile
1940年静岡県生まれ。京都大学法学部卒業。京都大学法学部助手・助教授・教授を務める傍ら、国際日本文化研究センター教授も兼任、2003年から現職。著書に『日本政治変動の30年―政治家・官僚・団体調査に見る構造変容』(東洋経済新報社、2006年)など。『戦後日本の官僚制』(同、81年)でサントリー学芸賞を受賞。

国際的にも高い行政官の水準をどう維持するのか -1-

 私は、日本の行政官は、国際的に同じくらいのエリート度でなければ駄目だと思っています。フランス、ドイツ、イギリスの程度はどうにかして確保しなければ駄目です。今度の人材バンクというのはどう動くか全くわからないし、少し冷たいし、公務員を真剣につくる制度ではないと思います。公務員制度の改革は、今の公務員の体質への批判だけでは済まない問題です。公務員というのは国家の問題だからです。

公務員制度改革で今、何が問われているのか。やはり任用、昇進、退職。それに政治との分業です。公務員は政治にかかわりすぎていると思っています。公務員としての国際競争力を持たなければいけませんが、何も自民党の部会にまで出かけていく必要はない。国会の参考人もいいですが、大臣の役割をもう少し大きくした方がいい。それでやれない大臣には助ける人がいればいい。大臣のスタッフをもう少し充実してもよい。私は政治家の能力をすごく尊敬しています。彼らは強いです。したがって、政治家はもっと責任を持つべきです。

公務員制度改革について、安部首相は秋以降にきちんとやると言っているのだから、そうすればいい。それなのに、今、天下り規制だけにこんなにこだわるのはなぜか。安倍さんはまずそれを説明しなくてはいけません。このことに安倍内閣がこだわるものだから、民主党も負けじと、より厳しい案を出しているというだけで、本気でこれが選挙のテーマだとは思っていないでしょう。

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 私からいえば、天下り規制はお門違いで、ちゃんと高いレベルの専門家になって、その専門領域で就職するなら自由のはずです。職業選択は自由です。今の天下りは安倍さんの言うように問題です。官庁の官房が押しつけての天下りだからです。そこから官製談合などが出てくる。省庁ごとに必死で天下り先を取り合うというセクショナリズムではダメです。しかし、今出されている人材バンク法が良い解決案かどうかわかりません。

 何より、まず第一に、安倍政権が公務員制度改革を参議院選挙までにすごく検討したなどと国民は感じてはいません。新聞の字面を読んで、たまには中を読んでも、何にもわからないと思います。

 公務員制度の一番中心になる課題は別にあります。法案は、天下りという官僚の一番弱点のようなところに触ってアピールするように提出されているという感じです。ちょっと真剣に考えている国民なら、公務員制度はもうがたが来ているので、どういうふうに変えるのか、天下り規制だけで本当に変わるのか、それが何にも見えてこないという疑問を持っている。それなのに慌てて、会期を延長して通すというのは、ほかにもっと重要な問題があるのではないですかという感じです。

専門的知識を養える公務員制度に

 公務員制度は本当にシンプルで、試験、採用、昇進、退職の制度だと思います。しかし、実際には皆、運用面に関心があって、どのように政治と行政の分業が行われているか、その分業された行政の中でおもしろい仕事ができるのかということを若い人は見ている。その点から見ると、国会の答弁があるからと深夜ひどく遅くまで、時には夜中の2時とか朝の5時まで詰めているとか、そんな勤務状態では、個人生活はない。それが官僚の仕事だと思ってやってきた世代もありますが、段々エスカレートしています。そういう勤務状態では、若い有能な人も勉強し考える暇がない。公務員制度論は、採用から退職に至る過程をどう設計するかの問題なのです。

 労働条件がまともでなければ、健康の問題、家庭の問題を招く。健全な家庭、健康な体というのは絶対に必要なので、それを確保する公務員制度になっていますかと若い人は問うていると思います。

 今の官僚たちは頑張っていますから、政治的な利害調整は政治家がやるべきなのに、そこまで官僚がやっているところがある。それで国会答弁も自分たちがやらなくてはいけないと思う。大臣にはやらせられないと思っているのではないでしょうか。官僚はそんなところまで考える必要はなくて、専門的知識を十分に発揮すればいい。だから専門的知識を十分に持っているかどうかが重要です。

 ところが、今の勤務状態では、若いときから大部屋に集まってガヤガヤやっているから専門的知識を得られない。勤務条件の悪いところで仕事をし、いろいろなポストを回ったとしても、高度な知識は身につきません。それで外国との間で、工業規格とか金融の一般的なルールとかをめぐって交渉する仕事に携わる。国益に関することですが、そういうところで負けているではないですか。

 日本の公務員はまだ優秀です。まだしばらくは優秀です。またそう悪くはならないと思います。しかし、育てるということを考えなければいけない。今の勤務状態では、35歳の働き盛りのときに高度な専門家になっている保証はない。高等教育機関でどういう訓練を受けてきたかということもあります。もはや時代はオン・ザ・ジョブ・トレーニングの時代ではなくなっています。やはり自分で高度な知識を身につける。それでは足りないと思ったら途中で、アメリカでもいいし、東大の公共政策大学院でもいいし、行ってリフレッシュする。レベルアップ、バージョンアップするわけです。そういうことをしないと世界に追い付かないと思います。

 公務員叩きの風潮もある程度仕方ありません。公務員はスキャンダルが多かったから叩かれても仕方がない。うんと叩いたらいいけれども、日本の行政がよくなるように叩かなければいけない。そうではなく、ひたすら公務員が嫌になる、若い人から見ると楽しくない職業に見えるように叩いている。悪いやつは悪いのでこらしめるが、他方、若い諸君には入ってきてもらって、いい仕事をしてもらいますというメッセージが公務員制度改革の中になければ駄目です。


現在の公務員の昇進は、利害調整の上手な人が偉くなる。どの課でもどの局でも部でもいろいろな利害があって、政治家がみんな関与しますから、そこをうまく調整できる人が、「できる人」として好まれています。ちょっとごつごつしていて、人とぶつかるかもしれないけれども、高いレベルの知識がある人というのはそう好かれない。全員がゼネラリストになるように育てられているわけです。そのためにローテーション人事なのです。一カ所に四年間いるということはない。

 イギリス、フランスやドイツは、本当に専門性が必要な領域では一カ所に五年間いるのは当たり前です。専門職のまま、日本流にいえば、給与レベルが一段上になる指定職待遇になるわけです。日本ではスペシャリストというだけでは指定職待遇にはならない。そこが問題だと思います。

個人で再就職できる公務員

 生涯賃金、報酬をどのレベルで設定するのか、どういうふうに与えるのかということが、公務員制度の四つか五つぐらいある重要なポイントの一つだと思います。でも、ちゃんとした専門家になっていれば、民間でもどこでも通用する。天下りと言われるいわれはなくて、再就職を契約で堂々とやればいい。専門家をつくらなければそういう就職の道を閉ざしてしまいます。このことが問題点の一つです。

 もう一つは、政治の領域まで入って省の主張を通そうとするからエネルギーが要る。政治家なら一言で済むところを、官僚は10カ所ぐらい調整してもらわなければいけない。余分なことをやっているのです。それで勉強する時間がないのです。

 人事の話に戻ると、私は途中で肩叩きをしながら一人を残していくというやり方は、もうあきらめなければいけない思っています。全員残る。そのかわり課長以上になかなか昇級、昇進しない。だから課長に行くまでもう少しじっくり見るということが出てくるかもしれない。

 公務員制度には待遇の問題がやはりあると思います。それでなくては優秀な人がリクルートできない。やはりトータルに見て安心できる生活を確保してあげることが必要ですが、退職後のことに関心がいくあまり、今のように無理やり各省が囲い込んだポストに割り振っていくと、やはりダーティーなところ、不透明なところも出てくる。官製談合につながるかもしれない、政治家に付け入る隙を与えることになるかもしれません。それはよくない。だから個人で就職していくというのが原則です。

 一部斡旋の必要があります。事務次官なんて個別の専門家じゃないでしょう。そういう人には別の道をつくってあげてもいいと思います。それも就職なのです。

 斡旋で無理やり押し込むスタイルはやめるということは合意して、あとは60歳か62歳か、いざとなれば65歳に定年を設定して退職までみんな働いてもいいということにして、そのかわり自分よりも若い人の部下になるのを承認する。そんなことは民間ではやっていますし、なぜ官庁だけできないのか不思議です。

 今の仕組みは戦前にはありませんでした。戦後、経済成長とともにうまい仕組みをつくったのだと思います。学歴官僚が確立してからのことだし、しかも財政的余裕が出て、特殊法人をつくるのが始まった50年代、60年代から徐々にそうなったと思います。その理由は、一つは、だんだん辞めさせていかないと、人事に政治が介入して、官僚が選んだ官僚ではなくて、政治家が選んだ官僚がトップに就くことになるでしょう。それを嫌がった。だんだん辞めさせることによってほかに選択の余地をなくして、人事の自立性を守ったわけです。でもそれが適切な判断だったかどうか、今となってはわかりません。80年代、90年代前半ぐらいまでは、それが秩序立てて行われていました。今、それが問われている。

国際競争力のあるスペシャリストの養成が急務

 企業でも、大きな会社の社長になるのはゼネラリストです。しかし、企業では同時に部署部署で専門家をつくっている。社長にならなくても、思う存分自分の専門を発揮できる人がいる。そこから新しいものが生み出される。そこに楽しみを見いだす。

 公務員の任務は本来、政策形成より執行です。これまでの日本の公務員はそこを軽視してきました。銀行検査行政なんてノンキャリアに任せておいて、検査なんておもしろくない退屈な仕事だから、その実務のトップになっても処遇はあまりよくなかった。しかし、銀行検査の重要度のマグニチュードはものすごいことがわかった。これこそキャリア組のエースがしっかり見なきゃいけない。それをノンキャリに任せて、エースたちはゼネラリストになるためにぐるぐる上を回っている。

 今回の社保庁問題も同じです。社会保険庁長官と局長と二人ほどの課長がキャリア組でいるだけで、四人とも仕事がなくて、あとは全部ほかの人がやっていたわけです。あの場合、執行というものを、責任を持って判断する人がいなかった。ノンキャリ側は、責任を持つのはキャリア組だと思っているわけです。キャリア組は、自分の仕事ではないと思っているので立ち入らない。

 日本の公務員の給料は海外と比べ普通だと思います。足りないのは年金です。公権力に携わる公務員の老後を安心させるという思想で公務員の年金は考えるべきです。

 1985年までは海外と比べて年金は普通でした。今は海外と比べて少ない。それで天下りが出てくる。私は、給料ではなくて年金を上げることが必要だと思います。他の国は年金が最終給与の69%、72%という感じです。それが日本は33.5%で、よその国の2分の1です。給与は今ぐらいで我慢すべきです。しかし、年金をちゃんと保証すれば、天下りにがつがつすることはない。しかし、1985年の公務員の年金制度の改正で公務員制度の一環としての年金という思想が弱くなりました。

国の官僚の定年は60歳だけれども、65歳まで行くと思います。それで年金につなげる。そうなれば、年金さえよければ、天下りを考える必要はないと思いますね。もちろん、65歳でなお有用な専門的な能力のある人が就職していくのはオーケーです。けれども、それは天下りと違う。能力を買われて行くわけですから、契約による再就職です。

 政府が出している人材バンク法案と、民主党がそれに対して提案しているものは、どちらも駄目ですが、それは基本的に人事行政を考えていないからです。ゼネラリストに向いている人とスペシャリストに向いている人をしっかり分けて、スペシャリスト向きの人には真にスペシャリストになってもらわないと、日本のレベルの高い行政がもたない、そういう認識がないことが駄目なのです。それをやらないと、日本は外国に負けてしまうと思います。今、それに気が付いていない官庁もたくさんあるようですが、今後、全面的に国際化し、グローバリゼーションの中で外国の官僚とぶつかるでしょう。そのときには、全部の官僚が、自分の省を代表して国際社会とわたり合う事態になるのですから、官僚の教養知識として非常にレベルの高い英語が必要です。皆、かなりできるようですが、そういう公務員の育成を意図的に設計しないと、遅れをとってしまいます。

 根本的に、出口ではなくて入り口、公務員制度に関しては労働市場の問題がありますから、どのレベルの人材が欲しいか、入り口から考えるべきです。そして行政の実務の中ではどのレベルの専門性を持つ必要があるかということを考えて、途中での再教育とか外国への派遣とか、自分で勉強してもらう仕組みとかをつくらねばなりません。

 官庁の人事を見ると、社保庁ではこれだけはノンキャリの世界とか、他の省でも施設部はこういう工学系の世界とか、そういうふうに相互不可侵条約を結んでいる世界が幾つもある。それもおかしい。キャリアとノンキャリ、キャリアとキャリアの間で相互不可侵条約で硬直した人事をやっているような印象がある。そして技官系の方が、私の観察では、結束が固くて政治的に動くことも多い。それは政治が近づいてきますから。

 この問題が争点になったとき、もっと重要な公務員制度改革の本体論があることを、言論NPOとして認識してください。公務員制度改革は本当に重要です。政治的にやるよりは、ちゃんと調査研究してデザインすることが大事です。


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