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年金分野において問われる課題は、少子高齢化の中での年金制度の持続可能性の確保と、基礎年金が最低保証機能を果たしていない問題への対応である。 2009年5月に社会保障審議会年金部会で示された財政検証の結果によると、国民年金の受給額について、1940年生まれの人については負担額に対して4.5倍(2004年計算時は4.3倍)、1985年生まれの人は1.5倍(2004年計算時は1.7倍)という結果になった。5年前と比較すると、1940年生まれの人がもらえる年金額は増え、1985年生まれの人がもらえる額は逆に減っている。高齢世代への給付が過剰になる一方で、今の若い世代が将来もらえる給付額はどんどん減っている。さらに年金財政を見ても、積立金は取り崩しと運用の失敗によって目減りを続けている。 こうした世代間ギャップの拡大の背景としては、2004年の年金改革で導入した「マクロ経済スライド」が、その後経済の低迷などを理由にまだ発動していないなど、年金の給付額を抑制する仕組みが働いていないことが大きい。2004年の改革は、マクロ経済スライドという給付抑制の仕組みを導入したことにより、今後100年間の負担と給付をバランスさせ年金財政の持続性を確保したという点で、まさに革命的であった。しかし、少子高齢化が予測以上に加速し、経済状況も改善しない中で、2005年に予定されていたマクロ経済スライドが発動せず、世代間支え合いの仕組みの限界が露呈した。少子高齢化が進み、支え手としての若年世代が減少していく中で、負担をできるだけ先送りさせないかたちで制度の持続性を維持し、安定化させていくための新たなデザインが求められている。 また、全国民を対象とする基礎年金の果たす機能が明確になっていないという問題がある。基礎年金の満額は6万6000円であるが、実際には5万円未満しかもらっていない受給者が全体の4割にのぼっている。基礎年金は25年間保険料を納めないと受給資格が得られず、満額を受け取るには40年間の納付が必要になる。昨今の雇用情勢の悪化などにより保険料を払えない人が増え、国民年金の納付率は62.1%(2008年)と、10年前に比べて約10%低下しており、無年金者の数は約120万人に達している。「国民皆年金」と言いつつも、生活保護の水準などと比べると現行の基礎年金は非常にシャビーであり、国民の最低限の老後生活を守るための最低保障として機能していない。 上記の課題を認識したうえで対応策を示すことに加え、特に自民党に問われるのは、与党として、2004年の年金改革の際に打ち出した「100年安心」の柱であるマクロ経済スライドがいまだに機能していない事態をどう考えるかということである。さらに、国民年金の国庫負担割合引き上げの条件であった「税制抜本改革」に着手できなかったことについての説明も求められる。2004年に想定した仕組みがこの間機能してこなかったことについて批判的検証を行い、対策を示す必要がある。 政権獲得を目指す政党として、民主党にもまた、明確な課題認識と対応策を示すことが求められる。民主党は現行制度の抜本的な見直しを掲げているが、どのような制度体系を描こうと、少子高齢化の中で賦課方式を維持していくのであれば、支え手の減少という問題を避けて通ることはできない。また、新制度へ移行するまでは既存の制度を維持することになるため、その場合の財源をどうするのかなどを示す必要がある。
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