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【緊急座談会】「麻生政権の100日評価」結果をどう読むか(3) 印刷 Eメール

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2008年12月22日
添谷芳秀氏(慶応義塾大学東アジア研究所所長・法学部教授)
若宮啓文氏(朝日新聞社コラムニスト」)
中谷元氏(衆議院議員)
仙谷由人氏(衆議院議員)

与野党協力で危機に対応することはできないのか

工藤 仙谷さんにお聞きしたいのですが、今回の経済危機はかなりの大危機です。それに対して、日本は大混乱になっていますが、そこでは政局ではなく、政治が協力してこの状況に立ち向かわなければいけないという議論がありました。ただ、民主党が政局を作り出し、ずるずると政局競争になってしまったというような感じがあります。そのあたりについてどう思いますか。やはり自民党と協力して乗り切るということは無理なのですか。

仙谷 例えば、1998年の金融再生法を我々が提起し、与党が丸呑みしてあの局面を乗り切ったことになっています。これは自民党からすれば政局的ではありました。当時の自民党も参議院では過半数を割っていたわけです。だから金融問題に対処するため、野党の金融再生法を呑まなければならなかったということです。与野党共同で合意をつくるとなれば、それなりの論理性や、共同でやった方が事態に対処するにはいいのだということがなければ、与野党で協力するなんていういい加減な話はありません。

今回の場合、98年に比べて危機はもっと深いと思いますが、結局、構造改革、郵政民営化、三位一体改革と称する分権、道路公団改革など全部取り出して見ても、すべてが中途半端に終わっています。道路公団改革や道路改革に至っては、結局、既得権構造は残り、民主党の高速道路無料化について、料金を取らなければ借金が将来の子ども達につけ回しされると散々けしからんと言っていたのが、通行料金を安くしますと言い始めました。まさに選挙目当てで政策を行おうとしているわけです。この論理性の無さ、整合性の無さが与野党の妥協を生むとかということを難しくしていることは間違いありません。

今度の第二次補正予算やその前の補正予算、それから本予算についても、やはり選挙をかなり意識しています。純粋かつ論理的にこの経済危機に対処しようという部分もることにはあるけれど、やはり選挙や既得権構造を意識していると感じてしまいます。

僕は、日本の平均的な国民の構造改革のイメージとは、やはり既得権構造や縦割り構造、天下りの三位一体を何とか壊してくれということだと思っています。構造改革が勇ましく叫ばれていたけれど、それらは依然として残っていて、行政執行の現場で次から次へと膿が出てきます。この行政執行を管理運営できなかった自民党政治は何なのかというのが、安倍政権以降出てきて、ものすごいガバナビリティー不信です。現に、指導者もどんどん劣化し、その周囲の官僚もどんどん劣化しているから、ますますひどくなっている。アンケート結果から見えてくるのは、やはりここは家を建て替えるように、旧い家は解体撤去しなければ仕方がないという雰囲気ではないでしょうか。


若宮 小泉首相以降の政権では、構造改革の歪みを調整するのが課題となったのは間違いありませんが、総括がきちんと行われていないわけです。構造改革の何が良くて、まだ何が足りないのか。一方で、何が行き過ぎで、それをどう調整するのか、というようなことがきちんと総括されないまま、何となく構造改革は駄目だということになっている。しかし、歪みの是正といいつつ、実は既得権を守らないと選挙にならないという下心も見て取れる。構造改革は駄目だということで、むしろ改革すべきことをいい加減に済ませている面があるわけです。

郵政民営化にしても、あれだけ大反対した人を次々と復党させたうえ、麻生内閣では参議院で郵政民営化反対の旗を振った中曽根弘文さんを外務大臣に据えた。いわばA級戦犯を一番光の当たる場所に据えたわけですが、そこには郵政民営化に対する総括が全くない。そういういい加減さがものすごく見えるわけです。このいい加減さが民主党として簡単に与野党協調に乗れないひとつの理由だと思いますが、逆に自民党から見ると、最初は大連立の話から始まったはずなのに、その反動から民主党がどんどん強硬になって日銀総裁人事やガソリン税の問題などで煮え湯を飲まされた思いでしょう。とてもじゃないけれど、政策協調は出来ない、となってしまった。

それで、福田さんはもう限界だから、麻生総理で選挙をやろうとなった。麻生さんもそのつもりだったから、最初の所信表明演説で小沢さんの横面を引っ叩くような演説をしたわけです。完全に挑発しました。そういう風に国会が始まったので、民主党もひたすら対決モードに入ってしまい、麻生さんとまともに政策協調するという気にはなれなかったと思います。ただ、政治的には上手いから、いかにも民主党のほうから政策的なボールを投げるような構えをしているけれど、両党の信頼関係がベースに全くないから、自民党のほうも乗れない。そんな不幸な回路でしょう。


工藤 両党で協力することはやはり無理なのですか。


仙谷 僕にはわかりませんが、やはり大連立の失敗が尾を引いているわけです。振幅が大きすぎれば、政策的な協議をするための与野党の信頼関係という素地が無くなってしまうわけです。10年ぐらい前は、自民党の政調会長を始め国対委員長も含めた執行部の作り方に懐の深さを感じていましたが、今は遊びや余裕がありません。一直線に走るとか、カーブを見ると急激に直角に曲がるとかそういうふうに見えてしまいます。


添谷 いまの先生のお話、国にこれだけの大問題があり、危機的状況にあるのに与野党協調はできないということですが、日本がとるべき政策にそれほど異なった代替案があるというような話ではないと思います。国策の基本的なところですら、今の自民党、民主党では、国の方向性をまとめるような話し合いが出来ないということなのでしょうか。


仙谷 僕にはわかりませんが、少なくとも政策担当者同士(例えば理事同士)の何らかのパイプというのはあるのかもしれません。


中谷 例えば、今ソマリア沖で海賊の被害によって日本の商船が被害を受けています。私は安全保障を担当したのですが、民主党に何かしないといけないのではないかと尋ねたら、選挙が終わるまでは駄目だと言われました。そういう話し合いのパイプと言うものは全くありません。


工藤 あの時の委員会では民主党の議員がそれを提案していましたが。


中谷 個人の議員ではそういう提案はするのですが、党になると駄目なのです。それはなぜかというと、昨年の10月に小沢一郎氏が大連立をやろうということで民主党内に持ち帰りました。そこで、皆に聞いてみたらそれは拒否しろとなって、小沢さんも腹をくくったわけです。その時点で、話し合いは出来なくなってしまい、後はもう解散の大合唱です。


添谷 とりあえず選挙をやらないと動かないという状況ですか。


中谷 でも政権が変わったとしても、その構図自体は変わりません。大連立が難しいとなれば、政界再編も考えなければいけないというように、国民の方が政治を心配しているという状況です。


首相は自民党内の求心力を得ているのか

工藤 中谷さんにもう少し自民党の話を聞きたいのですが、小泉さんの遺言として、最後に決めた2つの大きな柱、「骨太2006の歳入歳出改革」と、「行革推進関連法」というのがあります。最近、骨太の方針2006そのものを、全面的に止めてしまうという意見があります。確かに社会保障費を毎年2200億円削減するというのには無理があるので、何とか考えなければいけないというのはわかります。最近、自民党の内部で、自分たちの党のリーダー、首相がやることに関して何でも反対しているようにも見えます。そこまで自民党の中は崩れてしまっているのでしょうか。


中谷 地方の生活は、例えば私の地元は有効求人倍率が0.45くらいですから、2人就職を希望しても1人しか就職できません。それぐらい切羽詰っていて、やはり地方から見れば、切り捨てに映るわけです。したがって、行政改革も小さい政府がいいのかといえばそうではなく、郵便局の問題も地方の郵便局をどうやったら残せるのか、経済的に苦しい人たちに住宅を提供し、金融機関の貸し渋りを止めるような政策を政府に期待をしていると思います。やはり小泉改革路線に対して見の直し行ってほしい、プライマリーバランスもやらなければいけないけれど、それ以上に景気対策をということで、劇的に転換を求めているというのが生の声だと思います。


工藤 麻生さんは初め、構造改革を続けていくとおっしゃっていたのですが、党内的には非常に難しいという状況なのですね。


中谷 いえ、ただ、今回の消費税については閣議で明記するということになりましたが、本来であれば福田さんが総理をやめられた後の総裁選が、麻生さんと与謝野さんの対立なら非常にわかりやすかったと思います。しかし、5人も出てしまったので、非常に議論も拡散しましたし、麻生さんが総理に決まった後、与謝野さんを閣内に取り込んだ結果、消費税もやるということになった、結局、構造改革とその揺り戻しの両面を見通した政権運営になっているというわけです。


工藤 麻生政権を評価するときに、困ることがあります。例えば、この前の地方支分部局の統廃合を打ち出すと、必ず自民党から反対が出ます。しかし、その人がどうであれ、仕組みとして麻生さんは総理であり、党の総裁で一番偉いわけです。総理総裁が本気でやるといったら、党内が結束してやるということにならないのですか。


中谷 それを取り崩したのは地方からの声だと思います。地方の国交省の出先機関がなくなると、災害の時にどうするか、河川や海岸の管理をどうするかといった問題が出てきます。完全に地方分権が行われていない現状においては、今の仕組みがいきなりなくなってしまうと大変だという現実的な問題から、見直しになったということです。


仙谷 竹中さんと、自民党の中川秀直さんが中心だった路線は増税反対で、経済成長によって財政赤字を出さないようにするという「上げ潮路線」だったはずです。それにもかかわらず、麻生さんは消費税増税と構造改革を結びつけ、それがどう結び付くのか、その説明も麻生さんからは何もないわけです。そもそも、この消費不況の中で、ほぼそんなことはないと思っている人が多数にも関わらず、3年以内に日本経済が成長路線にカムバックし、消費税の増税を行うと言っている。財政規律を守る政権として、信頼回復できると思っている。誰の知恵かは知らないけれど、本当に馬鹿と何かにつける薬がないというか。


中谷 それを指導したのは与謝野さんですが、決断したのは総理であって、本当に将来を心配してのことです。福祉も限界がきている状況ですし、ここで道筋をつけておかないと取り返しのつかない事態になってしまう。増税よりも無駄を削るべきだと言いますが、いつになったら無駄遣いが終わるのかといった問題が、次から次へと出てきて、これ以上時間を延ばせません。確かに景気は最悪ですが、増税をしなければならない時期にきているのではないかと、今いわないと永久に言えないと、麻生総理がよくよく考えたうえで決断されたのではないかと思います。


仙谷 一言だけよろしいでしょうか。財政規律の話をするなら、2兆円のバラマキなんてやめたらどうですか。定額給付金でお金をもらっても、後から消費税でとられるという川柳が新聞にいっぱい載っていますよ。専門家だけではなく、国民もそう思っています。


中谷 消費税の増税は将来必要です。今度行うものは一言でいうと、給付金つきの定額減税です。ただ減税だけなら税金を払っていない人は恩恵を受けられませんから、国民に等しく生活費の足しにということであれば、ある意味で効果のある政策かもしれません。

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添谷芳秀(慶応義塾大学東アジア研究所所長・法学部教授)

1979年上智大学外国語学部卒業後、同大学大学院修士課程修了、ミシガン大学大学院で博士号取得。88年慶應義塾大学専任講師、91年助教授、95年教 授。07年より同大学東アジア研究所所長。主な著書に『日本の「ミドルパワー」外交―戦後日本の選択と構想』(筑摩書房)他。
 


若宮啓文(朝日新聞社コラムニスト)

1970年東京大学法学部卒業後、朝日新聞社の記者となる。政治部長、ブルッキングス研究所客員研究員を歴任。2002年論説主幹を経て、08年より現 職。著書「和解とナショナリズム」(朝日選書)は中国でも翻訳出版。他に「右手に君が代、左手に憲法―漂流する日本政治」(朝日新聞社)など多数。

 
中谷元(衆議院議員)

1980年防衛大学校卒業後、陸上自衛官。退官後、議員秘書を経て、90年衆議院議員初当選。自由民主党国防部会長、国会対策副委員長などを歴任し、2001年防衛庁長官就任。現在6期目。主な著書に「誰も書けなかった防衛省の真実」(幻冬舎)他。



仙谷由人(衆議院議員)

東京大学在学中に司法試験に合格後、1971年から弁護士活動を開始。90年衆議院議員に初当選。衆議院憲法調査会会長代理、民主党政策調査会長、公共政策プラットフォーム代表理事を歴任。現在5期目。主な著書「焦眉―土建国家日本の転換」(ごま書房)他。



工藤泰志(言論NPO代表)

1958年生まれ。横浜市立大学大学院経済学修士課程卒業。東洋経済新報社で、『週刊東洋経済』記者、『金融ビジネス』編集長、『論争 東洋経済』編集長を歴任。2001年10月、特定非営利活動法人言論NPOを立ち上げ、代表に就任。