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2010年参議院議員選挙 マニフェスト評価(財政) 印刷 Eメール

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項目 民主党 自民党
形式要件
(40点)
理念(10点)  3  4
目標設定(10点)  2  3
達成時期(8点)  2  2
財源(7点)  2  2
工程・政策手段(5点)  2  2
合計(40点) 11 13
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)  7  9
課題解決の妥当性(20点)  8  9
指導性と責任(20点)  7  7
合計(60点)  22 25
合計(100点)   33点  38点

 

<評価の視点>

 日本政府の財政状態は歴史的にみても、国際的にみても、極めて悪化した状態にある。その上、日本は先進国の中で最も高齢化することが見込まれており、社会保障などへの財政支出が著しく拡大すると予想されている。また、現在の社会保障は高齢者(引退層)向けの割合が極めて高く、分配する側の大元の所得を生み出す現役層への配慮が薄いという点で、そもそも社会民主主義的でもない。現状の歳出と歳入の構造を続ければ、菅直人首相の掲げる「強い経済」が実現できず、政府財政は破綻する。南欧諸国におけるソブリン・リスク問題が顕在化している中、それを他山の石として、今こそ日本は財政構造改革に取り組む必要がある。
長年の間、政治・政権は、この大問題に対する根本からの処方箋を示せず、また、解決へ向けた取組みに後ろ向きだった。国政選挙におけるマニフェストでは、財政健全化の方策と工程が具体的に示されなければならず、有権者がいずれの政党と約束すべきか判断するための内容が記述されていなければならない。我々は、2010年の参議院選挙のマニフェストを評価する際の重要な視点を次の通り考えている。
与党においては、2009年の総選挙で約束した歳出増を伴うマニフェストの新規施策や、その財源を捻出する手段を、どう修正するのか、という点が明確にされているかどうか。それが第一の評価ポイントである。与党である民主党は昨年のマニフェストにおいて、2013年度時点で16.8兆円の財源を生み出し、同額の恒久施策を実施することを国民と契約した。しかし、たとえば、財源を生み出すことなく新規施策を実施すれば、財政を構造的に悪化させる。マニフェストの修正はあってよいが、そのためには現状の検証を前提とした合理的な説明が必要である。
第二の評価ポイントは、超高齢社会の到来を踏まえた社会保障制度のあり方と、税制の抜本改革などの財源確保の方法が示されているか否かである。過去数十年間の政府財政の推移から明らかなことは、社会保障給付の充実とそれに伴う公費負担の増加が歳出を拡大させた最大の要因だったことである。
第三の評価ポイントとして、財政制度上における国と地方の関係の改革についての方向性が重要である。民主党は地域主権、自民党は地方分権と道州制がキーワードだが、いずれにしても問題は国と地方を通じた政府機能の強化であり、財政運営の効率化である。民間部門からみれば、国と地方の間の分配の単なる変更は解決策になり得ない。
最終的に、以上のポイントを受けて、財政収支を改善させ、政府債務残高の累増を食い止める政策の枠組みと道筋が、実現可能性を伴って示されているかが、第四の評価ポイントになる。収支尻や債務残高は結果であって、どんな支出をするかが本質の問題ある。この意味において、財政健全化と成長戦略とが一体的に描かれているかも極めて重要な視点となる。

<評価委員の解説>

 

<評価結果>
民主党マニフェスト評価
合計 33点 (形式要件11点、実質要件22点)
自民党マニフェスト評価
合計 38点 (形式要件13点、実質要件25点)
【形式要件についての評価】 11点/40点 【形式要件についての評価】 13点/40点

 民主党マニフェストでは、財政健全化について経済や社会保障と強く結びつけた問題設定を明確にしている点は評価できる。ただし、これはそもそも当然のことであり、それだけでは特に新しい発想とまではいえない。マニフェストで述べられている「強い経済」「強い財政」「強い社会保障」の好循環について具体像が明確にされていない。また、民主党は2009年総選挙のマニフェストで国の総予算207兆円を効率化すれば9.1兆円の財源を捻出できると述べたが、今回は総予算の組み替えについて金額が示されておらず、表現が後退している。(3点/10点)
昨年の総選挙マニフェストでは、財政健全化目標について何ら言及がなかったが、今回は明確に、基礎的財政収支や長期債務残高に関する目標が設定され、また、達成時期に関する期限も明示された。ただ、どのようにその目標に到達するかについてはあまり説明がない。いわゆるpay as you goの原則や中期財政フレームの枠組みが基本となることは述べられているが、昨年のマニフェストで約束された多くの新規歳出について、そのまま実施されるのか、修正されるのかという点が曖昧にされている。(2点/10点、2点/8点)
財政健全化の財源について、歳出面では事業仕分けなどを活用した無駄の削減や、国家公務員人件費の2割削減などが示されている。また、2011年度予算においては投資支出向けの国から地方への補助金について、一括交付金化が掲げられた。しかし、無駄の削減によってどれだけの財源が捻出できるのかという多くの国民がもつ疑問にはこたえていない。一括交付金化による財政健全化への寄与も不明である。他方、診療報酬や介護報酬の引上げなど、歳出を増加させる項目が述べられており、その財源は不透明である。歳入面では消費税を含む税制抜本改革の議論を開始することを明らかにしたが、税率水準などについて言及がない。消費税収の使途についても曖昧さが残っている。また、税制抜本改革とは消費税に限定されるものではないが、その他の税についての方向性が明確にされていない。政府としての中期財政フレームは示されつつあるが、マニフェスト自身には無駄の削減や税制改革に関する工程表がなく、事後的な検証をするための形式が満たされていない。この点は昨年のマニフェストから大きく後退している。(2点/7点、2点/5点)

 自民党は、現政権の財政政策を批判する意味もあり、財政規律の確立や将来世代への負担の先送り問題を理念に据えている。消費税などの増税(現在世代の負担増)が強調されており、どちらかといえば歳出抑制型ではなく、歳入強化型の財政健全化が基本になっている。経済と財政との連関は希薄である。(4点/10点)
自民党マニフェストでは、財政健全化責任法という法律をベースに財政改革を行うことが明記されている。ただし、それがプログラム法なのか、具体的に毎年の予算編成を強く拘束するものであるのかは明らかでない。財政健全化目標については従来からの自民党の考え方を踏襲するものとなっており、今回は民主党と同様にpay as you goの原則が掲げられている。なお、目標の設定と達成時期は民主党とほぼ同じだが、債務残高GDP比を2010年代半ばにかけて安定化させると述べている点では、民主党よりもハードルがやや高めに設定されている。(3点/10点、2点/8点)
財政健全化の財源について、歳出面では独立行政法人改革や公務員人件費の2割削減など行政改革が掲げられている。他方、診療報酬と介護報酬の大幅引上げや公共投資の重点強化、少子化対策、地方への補助金など、歳出増となる項目が非常に多い。現在の「子ども手当」は全面的に見直すとしているものの、ネットで歳出がどうなるか不明である。歳入面では税率水準を明記した上で消費税増税を含む税制抜本改革の必要性を訴えている。自民党は、幅広く多くの税目についてその方向性を明記している。消費税と地方法人2税の関係についても一定の記述があることは評価できる。マニフェスト自身には工程表が示されていないが、平成21年度税制改正法附則や「中期プログラム」による道筋が工程表と解釈できなくはない。(2点/7点、2点/5点)

   
【実質要件についての評価】 22点/60点  

 課題抽出の妥当性という点で、昨年のマニフェストでは財政健全化への配慮にまったく欠けていたことと対比すれば大きな前進である。ただ、民主党が昨年のマニフェストで掲げた歳出面(無駄の削減と子ども手当に代表される新規施策の導入)の現状について検証と説明がないことは、今後の財政の姿を考える出発点が分からないという意味で極めて大きな問題である。無駄の削減は重要であるが、定量的にはそれによる大きな効果を実現できないリスクを依然として過小評価している。また、財政問題を形式的には経済や社会保障と関連づけているが、年金制度をはじめとする具体的な社会保障制度改革と有機的に結びつけた形式でコミットされているわけではない。財政が需要や雇用へ積極的にかかわるという経済政策と財政健全化の関係も、抽象論の域を出ていない。さらに、財政問題は国と地方の関係の問題という性格も強いが、それについての問題意識が十分であるとは評価できない。「一括交付金」は民主党独自の可能性を秘めた政策であるが、これについて定量的な説明がないことは財政健全化のプランを脆弱にしている。(7点/20点)
その結果、問題解決の妥当性が高いものにはなっていない。工程表がないことは、実質面での財政健全化の戦略が弱いことを端的に示している。また、当面の3年間単位での財政運営が、2020年代までを見通した中長期の財政健全化目標とどう整合されるかが不明である。2010年度の国・地方の基礎的財政収支は34兆円(GDP比7%)程度の赤字とみられるが、2015年度までにGDP比で赤字を半減させるという中間目標を達成するには、名目GDP成長率を年率1.5%とすると約15兆円が要調整額と試算できる。菅首相は消費税率について自民党が掲げた10%が参考になると発言したが、5%ポイントの引上げだけではそれを賄うことができず、また、その後も増加圧力が続く社会保障費の財源問題が別に存在したままである。他方、無駄の削減と新規の施策の金額の兼ね合いがマニフェスト上で明確にされていないため、財政全体として問題解決の妥当性が確保されていない。(8点/20点)

菅首相は首相となる直前まで財務大臣だったこともあり、財政健全化に関する指導性には一定の期待がもてる。超党派での税制抜本改革を提案していることは評価できる。ただ、菅首相のいう「第3の道」の実質的内容はいまだ明らかでなく、増税を急ぎすぎるなどして経済状態を悪化させれば、財政健全化が立ち行かなくなる。(7点/20点)

 

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