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2010年参議院議員選挙 マニフェスト評価(医療) 印刷 Eメール

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項目 民主党 自民党
形式要件
(40点)
理念(10点)  2  5
目標設定(10点)  2  0
達成時期(8点)  2  0
財源(7点)  0  0
工程・政策手段(5点)  0  0
合計(40点)  6 5
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)  5 7
課題解決の妥当性(20点)  5 8
指導性と責任(20点)  5 4
合計(60点)  15 19
合計(100点)   21点  24点

 

<評価の視点>

 評価の視点の第1は、少子高齢化が進むもとでの、医療保険財政の中長期的持続可能性確保である。現在の医療保険制度は、もっぱら大企業の被用者が加入する組合管掌健康保険、中小企業被用者の協会けんぽ、公務員などの共済組合、これらに加入しない国民の市町村ごとの国民健康保険(国保)に分立している。これら現役健保が、後期高齢者医療制度加入者(75歳以上)および主に国保に加入している前期高齢者(65歳から74歳)の医療費を支える構造である。後期高齢者医療制度には税も投入されている。足もとでは、高齢者医療制度を支える側の組合健保の解散が相次ぎ、協会けんぽの財政状況が深刻化し、国保保険料の滞納世帯が2割を超えるなど、支える側が揺らいでいる。こうした現状と財政制約を認識し、改革案が提示できているか。保険財政の持続性なくして、個別政策の永続性もない。
第2に、そもそも現状把握と解決策の説得性である。「医療崩壊」であるとしても、その現状を説得的に国民に説明し、解決策が示せているか。確かに、日々われわれが接する医師不足や産科・小児科不足などの報道や経験から医療サービス提供体制が深刻な状況にあることは分かる。しかし、それらが、医療崩壊といった政治的プロパガンダではなく、データをもって説得的に国民向けに説明され、適切な解決策が示されているか。
第3は、公平性の視点である。医療サービス受給機会の公平性、負担の公平性が図られているといった点に関し、地域間、保険者間、世代間といったあらゆる視点からチェックがなされ、改善すべき点は、改善されなければならない。なお、これは、効率性とトレード・オフ関係になる場合があり、それに対しても充分に配慮が払われているか。
こうした「構造上の課題」に加え、第4は、新型インフルエンザへの対応など「喫緊の課題」への対応である。これらが、的確かつ第1の財政制約の認識のもとに提示されているか。 

<評価委員の解説>

 

<評価結果>
民主党マニフェスト評価
合計 21点 (形式要件6点、実質要件15点)
自民党マニフェスト評価
合計 24点 (形式要件5点、実質要件19点)
【形式要件についての評価】 6点/40点 【形式要件についての評価】 5点/40点

 民主党の医療マニフェストは、基本的に昨年の衆議院選挙のマニフェストを踏襲している。ただ、前回のように「医療崩壊を食い止める」といった理念は明示的に述べられておらず、「病気や高齢への不安を全力で減らしていきます」「財源を確保し、持続可能な社会保障制度を構築します」と漠然とした表現にとどまっている。個別政策については、後期高齢者医療制度の廃止と新制度の開始、診療報酬の引き上げ、医師数の1.5倍への増員、新型インフルエンザ対策などが記載されているが、解決策にあたる部分のみが列挙されており、なぜそれが課題であり、政府として取り組む必要があるのかが不明である。(2点/10点)これらのうち、明確に目標設定行っているのは医師数の増員のみである。(2点/10点)また、「2013年度から新しい高齢者医療をスタートさせます」という表現以外は、達成時期は述べられておらず、財源、工程にも全く言及がない。前回マニフェストでは必要な財源規模が形式的には記載されていたことを考えれば、後退とさえいえる。今回のマニフェストの特徴は、冒頭の「強い経済」の部分で、医療が「新たな成長産業」と位置づけられ、「ライフ・イノベーション」を重視していることであるが、この目的を達成するための方策については一切記載がない。(2点/8点)(0点/7点)(0点/5点)

 自民党マニフェストは、医療に関し、「持続可能な安心できる医療の実現」でもっぱら構造上の課題に触れ、「がん対策の充実」から「保険診療と保険外診療の併用推進」において喫緊の課題に分類されるものにスペースを割いている。
個々の政策項目の目指す方向性は、何れも概ね異論の出にくいものとなっており、曖昧なものも多いが目標も描かれている。(5点/10点)もっとも、これらの優先順位や目標の達成時期については言及がない。(0点/10点)また、個別政策の実現に必要な財源については全く触れられていないが、とりわけ、医療保険財政の中長期的持続可能性に関する記述が乏しい。「消費税率引き上げを含めた税制抜本改革」で済ませるのではなく、今後の税と社会保険料負担の青写真に踏み込み、かつ、保険者機能強化などによる医療費効率化など中長期的財政の持続可能性が充分に書き込まれた上で、個別政策が示されなければならない。(0点/8点)(0点/7点)(0点/5点)



 
   
【実質要件についての評価】 15点/60点 【実質要件についての評価】 19点/60点

 【課題抽出の妥当性 5点/20点】【課題解決の妥当性 5点/20点」
第1の評価の軸からみた場合、高齢者「姥捨て山」論を起点とした、後期高齢者医療制度廃止という認識は、あるべき政策の方向性とはむしろ逆である。本来、少子高齢化が進むもと、高齢者医療制度を支える側が支え続けていけるのか否か、高齢者と現役世代で公平性が確保されているか否かが重要であろう。公平性についていえば、国保加入者を例にみると、同じ収入でも、公的年金受給者の方が給与所得者よりも保険料負担が軽く済んでいる。自民党同様、診療報酬の引き上げがうたわれているが、目標設定の方法に疑問がある。まず、診療報酬を引き上げれば、健康保険料の増加を通じて支える側の動揺を加速し、税負担増を通じて国民負担を高めることになる。次に、費用対効果の改善の視点に欠ける。社会保険料なり税なり国民のお金が国民のニーズにもっとも合致した診療科、地域、病院、診療所に投じられることこそが必要であり、そのルート確保に向けた政策が明確でないまま、医療費を増やしても、それが国民の利益に合致するとは限らない。さらに、民主党は前回は大幅な薬価の引き下げを通じてその財源を確保したが、同じ手段が通用する可能性は極めて低い。政策を継続するのであれば財源調達を明示すべきであるが、上述の通り言及はなく、政策の安定性が疑われる。総じて、目標設定が供給者サイドに偏っている。国民にとって医療費や医師を増やすことは「お産難民解消」や「救急車たらいまわし撲滅」といった状況を解決するための手段に過ぎないが、国民視点にたった目標設定がなされていない。
【指導性・責任 5点/20点】 
医療費のパイに限りがある以上、医療費増加幅の抑制と財源手当の両面を追及していくことが政権として不可欠である。しかし、マニフェストでは、「財源を確保」するとの抽象的表記にとどまり、かつ、医療費増加幅の抑制には言及がない。どんなに不人気な政策でも、必要であれば、政治が責任をもって国民に語る必要があるが、そうした指導性に欠ける。
また、第3の公平性の視点に関連して、前回マニフェストには、医療保険の「一元的運用」が盛り込まれていた。それは極めて大胆な改革案であったが、今回は記載がない。高額療養費対策、ドラッグ・ラグ、デバイス・ラグ対策に関する具体的な記載が消えている。後者については長妻厚労大臣も年度内の実現を約束しているのに、今回のマニフェストには記載されなかった。これらの変更の理由についての説明がなされなければ、無責任と言われても仕方がない。

 【課題抽出の妥当性 7点/20点】
まず、個別政策がいかなる基準でなぜ選び出されてきたのかということが明確ではなく、連ねられた個別政策がある理念のもとで組み立てられているとは言い難い。民主党同様、医療の実態に対する的確な現状認識に基づき、財源調達等含め実現のめどを立てたうえでの体系としての提示とはなっていない。
【課題解決の妥当性 8点/20点」【指導性・責任 4点/20点】
自民党には、現行の高齢者医療制度発足時(08年4月)の与党として、その廃止を主張する民主党に対し、自らの立場と制度の趣旨を改めて明らかにし、国民に判断材料を提供することが求められる。民主党は来年の通常国会に法案を提出するとしている。しかし、自民党のマニフェストでは、税(マニフェストの表記は公費負担)の投入範囲を65歳まで拡大するという、従来からの経済界の要望を一文盛り込んだだけで、自民党が現行の高齢者医療制度をどのように考えているのか、かつ、評価の第1の視点である医療保険財政の中長期的持続可能性がどう確保されるのかが殆んど示されていない。数多く並ぶ個別政策も、聞こえはいいが、中長期的持続可能性確保という前提が覚束ないために実現可能性に疑問符がつく。
また、「医療崩壊」と表現される現状に至った間の政権与党としての自己検証と政策の提示があってしかるべきである。そうしたなかで重要なのは、診療報酬であろう。今回マニフェストでは、診療報酬大幅引き上げへとこれまでの政策から転換が図られているが、そうした経緯に関する説得的な説明がない。単に与党に追随しているのであれば、民主党に向けたものと同様の批判が成り立つ。

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