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2010年参議院議員選挙 マニフェスト評価(農業) 印刷 Eメール

argaiv1825

 

 

項目 民主党 自民党
形式要件
(40点)
理念(10点)  3  4
目標設定(10点)  3  3
達成時期(8点)  0  0
財源(7点)  0  0
工程・政策手段(5点)  0  3
合計(40点)  6  10
実質要件
(60点)
体系性・課題抽出の妥当性(20点)  2 2
課題解決の妥当性(20点)  4 6
指導性と責任(20点)  2 4
合計(60点)  8 12
合計(100点)   14点  22点

 

<評価の視点>

  農業政策については、まず、中長期的なビジョンとして、①農業の担い手確保の視点、②国際化への対応が問われる。①については、高齢者によって担われている日本の営農の世界において、若い世代の担い手をいかに確保、育成していくかは喫緊の課題である。日本の農業を持続可能なもの、さらに産業として自立させていくためには、いまある担い手の農家の支援に加えて、明日の農業を担っていく新たな担い手の確保、育成が必要である。②については、農政においてアジア諸国との関係をどのように構想するかが一つのポイントである。また、③政策の安定性という点も、評価の際に大きなポイントとなる。農業はただでさえ自然のリスクと隣合わせであるが、恒久的な財源に裏打ちされた政策の安定性がない限り、政策自体が人為的リスクとなる可能性がある。農業政策は高度な専門性が必要な領域のひとつであり、的確な政策のデザインは、生産の構造、市場の構造、国際的な規律などに関する正確でバランスのとれた知見に支えられて初めて可能となる。この意味で、長年の懸案であるコメの生産調整の在り方に関する方針も、政策デザイン力が問われるポイントである。民主党は前回のマニフェストで目玉政策の一つとして戸別所得補償制度の創設を掲げ、23年度以降の本格実施を謳った。すでにコメについてはモデル事業の実施が前倒しされ、4月から開始している。こうした民主党の農業政策に対し、自民党としてどういった施策を打ち出していくのか。
以上より、ここでは①農業の担い手確保、②国際化、③政策の安定性といった3点を中心に評価を行うこととする。

<評価委員の解説>

 

<評価結果>
民主党マニフェスト評価
合計 14点 (形式要件6点、実質要件8点)
自民党マニフェスト評価
合計 22点 (形式要件10点、実質要件12点)
【形式要件についての評価】 6点/40点 【形式要件についての評価】 2点/40点

 マニフェストでは、「農林水産業を再生し、食料自給率向上『食の安全』確保を実現します」として理念が掲げられ、農林水産業を成長戦略と位置付けて従来の政策の抜本的な見直しに取り組むとしている。(3点/10点)掲げられた個別政策については5つで、前回のマニフェストよりもさらに記述が簡略化されている。コメ以外の戸別所得補償については、「モデル事業を検証しつつ、段階的に他の品目及び農業以外の分野に拡大します」としているが、その目的や導入する品目、財源、達成時期、工程については全く書き込まれておらず、前回と比較しても明らかな後退と評価せざるを得ない。「農林漁業と農山漁村の再生を図る」ことを目的として、農林漁業について製造業・小売業などとの融合により生産物の価値を高めるとされているが、それ以外の項目については目標、達成時期、財源、工程は明示されていない。(3/10点、0/8点、0/7点、0/5点)
また、前回は「国際食品調査官」「BSE対策としての全頭検査に対する国庫補助」「食品安全庁」等、食の安全・安心に関悪様々な具体策が掲げられていたが、今回は「原料原産地」などの表示やトレーサビリティ以外はすべて消えており、その理由も明らかにされていない。総論で述べられている「アジアを中心とする経済の活力を国内にも取り込んでいきます」との姿勢は評価できるが、個別政策について国際的な観点は全く取り入れられていない。

 農林水産業については、32項目にわたってかなり広範なテーマについての具体的な記述がなされている。個別政策について目的が記述されているものも多いが、その全体が「仕事を創り、地域を支え、安全安心な暮らしを守る―「手当より仕事」―」の中に描かれており、政策全体の根底にある理念や目的は必ずしも明確とはいえない。(4点/10点)(3点/10点)また、個別政策について具体的な政策手段に触れているものはあるが、達成時期や財源については全く触れられていない。(0点/8点、0点/7点、3点/5点)
 

   
【実質要件についての評価】 8点/60点 【実質要件についての評価】 12点/60点

【体系性・課題抽出の妥当性 2点/20点】
前回のマニフェストで農業政策が「地域主権」の中に盛り込まれていたことと比較すれば、一つのカテゴリーとして「農林水産業」を設け、「農林水産業の再生」、「食料自給率の向上」という課題を抽出していること自体は評価できる。また、農林漁業の6次産業化やトレーサビリティの義務付け対象の拡大、地産地消推進も課題解決の妥当性という観点からは評価できる。しかし、ピックアップされている政策は5つのみであり、具体的な内容は不明であるばかりか、なぜそれがピックアップされているのか、その理由も不明である。政策の体系性は極めて乏しい。一方、個別政策の記述が簡略化された分、前回のマニフェストの進捗状況の報告に紙幅を割いているが、農政の分野の2項目についてはその内容は甘い。とりわけ口蹄疫対策に関しては、初動の遅れも指摘されており検証が必要であるが、それ以前に政権の成果として自賛する姿勢には疑問を抱かざるを得ない。
【課題解決の妥当性 4点/20点】
そもそも戸別所得補償政策は目的が曖昧であり、前回マニフェストでは「小規模農家の維持」と「担い手の育成や産業化」が政策目的として掲げられていたものの、これらは性質上互いに矛盾するものであり、完全に両立させることは不可能である。当初掲げた政策に妥当性があったのなら、今回のマニフェストでは進歩、具体化してしかるべきだが、これについては明確な目標設定はおろか、米以外に導入する品目や時期、財源については何ら言及がなく、むしろ後退している。米と異なり、専業・準専業の農家や生産組織が支えられ、かなり効率的な生産構造が維持されている麦や大豆の生産構造や、酪農生産が不足払い制度という比較的安定した仕組みに支えられている実態などについて、民主党内で正確な現状認識がなされていたかどうかは大いに不明である。総じて、農村の実態に即した的確な制度設計とは言えず、制度全体のビジョンが不明確で、担い手の確保を含めた農林水産業の再生、産業化という課題解決に対する妥当性は低い。「原料原産地」などの表示やトレーサビリティ等については「食の安全・安心の確保」という観点から解決策として妥当だが、「国際食品調査官」の配置、BSE対策としての全頭検査に対する国庫補助、食品安全庁など前回掲げていた施策が削除され、それに対する説明がない以上、評価は低くせざるを得ない。
【指導性と責任 2点/20点】
戸別所得補償の政策としての妥当性が問われるのは、水田の米以外の作物への品目の拡大や、「畜産・酪農者」への導入が具体化される際である。3月に閣議決定された「食料・農業・農村基本計画」において、米以外の品目についてはすべて「検討する」とされていたが、今回のマニフェストでもなお曖昧な記述にとどまっており、指導性という観点からは全く評価はできない。「農林水産業」として独立の項目を立て、取り組むべき課題の一つとして認識しているものの、農業の担い手をどういった方策で行うか、日本の農業をいかに再生するのかという、いま日本の農政にとって最大の課題に戦略的、体系的なビジョンを提示しているとはいえない。

【体系性・課題抽出の妥当性 2点/20点】
民主党マニフェストと比較し、農林水産業に関する政策全般について網羅性、具体性があり、「農林水産業の多面的機能を評価した『日本型直接支払』の創設」以外は自民党としてのある程度の政策の継続性がみられる。ただ、その中でのプライオリティは明確ではなく、体系性は乏しい。また、この間農政の大きな課題の一つであった米の生産調整の在り方については、現政権下の選択的な生産調整をどう評価するかという点とも関わるが、マニフェストでは触れられていないことから、この点について自民党は判断を先送りしている。
【課題解決の妥当性 6点/20点」
戸別所得補償を売り物にしてきた民主党との差別化を意図した政策として、「農林水産業の多面的機能を評価した『日本型直接支払』の創設」「が掲げられているが、問題点も少なくない。まず、農業の多面的機能の評価額は農業の生産額に匹敵する大きさであるとの試算もあることから、文字通り評価額を支払いのベースにするとすれば、莫大な財源を必要とする。また、多面的機能の対価は農家に支払われていないという制度の組み立ての前提についても疑問が残る。なぜならば、関税その他の方法によって、海外よりも高い手取り価格の下にある国産農産物は多いが、この場合の内外価格差に派多面的機能に対する支払いも含まれていると解することもできるからである。一方、「経営所得安定制度」については、その対象は明確な表現が行われているわけではないが、「全国一律ではなく、地域の自主的な努力を踏まえ」るとしている。民主党が全ての販売農家を対象としていることに比べれば、集落営農を含めた担い手にアクセントを置くニュアンスは感じられる。また、「海外へ積極的に売り込むため、全国的な品目別の輸出振興組織を設立」など国際的な視点もあり、積極的に攻めの農業を実現しようとする姿勢は評価できる。
【指導性と責任 4点/20点】
マニフェストで描かれている項目は網羅的かつ具体的であるが、それゆえに、その内容を熟知した業界に向けて発信されているとの印象は否めない。また、今回のマニフェストは6月に公表された全中(JAグループ)の政策提言と共通する部分が少なくない。農協組織が自らの政策要求を掲げることは無論差し支えないが、農協の立場からの要求と国全体のかじ取りを担当する政権政党としてのスタンスを整理しておくことも重要である。この点で、「JAこそ地域の担い手」との表現には疑問が残る。

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