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参院選マニフェストの読み方について(政治とカネ) 印刷 Eメール

岩井奉信
(日本大学法学部教授)
1950年生まれ。日本大学法学部法律学科卒、慶應義塾大学大学院法学研究博士課程修了。常磐大学人間科学部助教授、教授を経て、00年から現職。「新しい日本をつくる国民会議」(21世紀臨調)運営委員、社会経済生産性本部評議員。著書に『「政治資金」の研究―利益誘導の日本的政治風土』(日本経済新聞社、90年)など。


 

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工藤: 岩井先生、こんにちは。今回、「政治とカネ」の評価を岩井先生に協力していただきました。「政治とカネ」の問題については、鳩山政権が退陣することになった大きな理由の一つですが、これに関する評価が、民主党、自民党のマニフェスト評価において、非常に低くてどちらも10点台、自民党はさらに低いのですが、ここまで低くなった原因というのは、一体何なのでしょうか。

 岩井: ひとつは、今回の鳩山政権退陣の原因を探っていくと、「政治とカネ」の問題に行きつきます。また、小沢さんの政治とカネの問題もありました。そういった面では、政治を揺るがす大きな問題となった割には、民主党のマニフェストも、自民党のマニフェストも、それをきちっと解決していくという方策が、明らかにされていなかったので、評価が低くなりました。

工藤: つまり、政治とカネが提起しているアジェンダについて、答えを出していないということですね。
 
岩井: そうですね、一言でいえばそうなります。

工藤: どのようにすれば、答えになったのでしょうか。

岩井: 94年の政治改革の精神に戻るということを考えると、やはり政党本位の政治にすることが必要だと思います。これは政策の面もそうですが、政治とカネの面も政党本位にするといったはずでした。ところが、鳩山さんにしろ、小沢さんにしろ、政治家個人が多額の金を集めたり、使ったりしているのが現状です。この状況というのは政党本位とはとても言えないわけです。そうすると、政党本位にお金が流れる仕組みにもっていくにはどうすればいいのか、という明確な答えを明らかにしていく必要があると思います。この点、両党のマニフェストでは方策が明らかにされていない。よって、評価がとても低くなります。方策としては、原則政治家個人がお金を触らないということを何らかの形で明らかにする必要があったと思います。

工藤: ということは、政党が中心になるということですよね。

岩井: そうですね。ですから、政党本位の政治であれば、政治活動費というようなものは、本来は全額を政党が面倒をみるべきものであって、個人が使用したり、配分したりするようなことは必要ない、という観点に立っていかなければならないのだと思います。これをどのようなプロセスで実現していくのかを体系的に示す必要があったのではないかと思います。

工藤: 民主党のマニフェストですが、やはり企業団体献金の廃止ということをまずやりましょうと、管さんはおっしゃっていますよね。そこには答えがないということですね。

岩井: そうですね。民主党のマニフェストにおいては、「とことんクリーンな政治」ということで、問題意識は示しているとは言えると思いますが、最初に出てくる解答が「企業団体献金の禁止」です。ところが、鳩山さんにしろ、小沢さんにしろ、基本は企業団体献金の問題ではありません。ですから、問題意識に対する回答にはなっていないと言わざるを得ない。これは蛇口論と言いますが、企業団体献金を禁止する、つまり蛇口を絞れば問題はよくなるという話は前からありますが、現実を直視したときに、企業団体献金を禁止すれば万事が解決するというのは、私からすれば空絵事にすぎません。そういった面で言えば、民主党の「政治とカネ」のマニフェストの最初の部分については、回答になっていないと言わざるを得ないですね。

工藤: なぜ、そのように回答になっていないことを、最初に出すのでしょうか。

岩井: 企業・団体献金悪論というのは昔からあります。また、企業・団体献金を禁止しろという声があることも間違いありません。しかしながら、それですべてが解決するのかというと、そうではない。「政治とカネ」の問題というのは複雑なので、有権者から理解されない部分は確かにあるのかもしれませんが、企業・団体献金を禁止するということ自体は、ウケがいいわけです。しかし、これが実現すると、いわゆる経団連が行っているような企業・団体献金は禁止するけれど、労働組合が行っているような献金や、業界団体が行っているような献金を防ぐことができるのかというと、現行の法律ではそれは無理です。となると、国民の方々からすると、企業団体献金を禁止したにもかかわらず、労働組合献金や業界団体による献金のようなものが残るというのはおかしいのではないか。私は最終的に、政治資金規正法に対する不信感が増すことになるのでは、と危惧しています。

工藤: なるほど。民主党マニフェストではその他いくつか加えてますが、これは今有権者が注目するべきものではないのでしょうか。

岩井: そうですね。「政治とカネ」の分野の制度改革については、政治資金規正法がそもそもとても複雑ですので、理解されにくいという感じはあります。やはり、民主党・自民党の両党がいっている、政治資金収支報告書の透明性を高めましょう、いう点については当然ですけれども、両党とも言っているので、この点については違いがないと言えます。ですから、あとはまあ他のところを見ていきますと、従来指摘されてきたことについては載っていますが、私からすれば根本的問題ではありません。

工藤: 次に、自民党のマニフェストが低評価なのはなぜでしょうか。

岩井: 透明性の確保については言及していますが、実質的には何も言っていない。要するに、献金やお金の問題をどうするのだという具体策が全く欠けている。自民党にとっては、やりだすと「やぶへび」になってしまうのではないかという恐れがあり、それが表れています。せっかく民主党が「政治とカネ」の問題を起こしたのですから、これに対して切り込んでいくような問題提起があってしかるべきと思います。

工藤: そうですよね、まるで不戦敗ですね。

岩井: そうですね。ここのところは、自民党も後ろを振り返ると、同じような問題はたくさん抱えています。このような傷が表れているということで、もったいない感じはしますよね。

工藤: 次に、有権者は、選挙の際に「政治とカネ」の問題について、どのような点に注目してどちらの党を選択すべきか、その基準をどのように考えればよいのでしょうか。

岩井: 「政治とカネ」の問題についての基準の中で、一番大事なのは透明性の確保だと思います。これ自体は、自民党も民主党も言っていることですが、これを強く言わなければならないことだと思います。企業・団体献金禁止の問題については、やらないよりはやったほうがマシなのかもしれませんが、本質的ではないという点に気がついていただきたい。もうひとつは、「政治とカネ」の問題が、単なる政治資金規正法の改正といった問題ではなく、もっと大きな枠組みでとらえなおし、体系的に、もう一度根本的に見直そうではないか、といった主張がされるかどうかということが大事なことだと思っています。

工藤: その、根本的かどうかというのを見分ける基準、キーワードはどこにありますか。

岩井: ひとつは、政党本位ということをきちんと意識して、考えるかどうかという問題。もうひとつは、政治資金規正法のみならず、国会における立法事務費であるとか、歳費の問題も含めて、「民主主義のコスト」という全体的な問題の捉え方をしているかという点ですね。

工藤: 政党助成金には政党は触れていませんが、活発に議論してきましたよね。

岩井: 政党助成金については、どの政党も政党財政の命脈を握っているという状態になっています。ですから、この問題にはあまり触れたくはない、というとこなんだろうと思います。触れるとなると、減額ということになってくるので、どうしても触れたくないのだろうと思われます。ただやはり、国民一人あたり250円という負担をしているわけです。となると、それにふさわしい対応を政党がきちんとするのかどうか、というところは、政党助成金を受け取っている政党は、その決意のほどを明らかにする必要はあると思います。

工藤: わかりました。どうも今日はありがとうございました。日本大学法学部、岩井先生にやっていただきました。ありがとうございました。
 


 

参院選マニフェストの読み方について
(政治とカネ)

岩井奉信氏 (日本大学法学部教授)
聞き手:工藤泰志(言論NPO代表)