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参院選マニフェストの読み方について(新しい公共) 印刷 Eメール

田中弥生
(大学評価・学位授与機構構准教授)
国際協力銀行、東京大学助教授などをへて現職。国際公共政策博士(大阪大学)、政策メディア修士(慶応義塾大学)財政制度審議会臨時委員、日本NPO学会副会長。外務省ODA評価有識者委員、内閣府公益法人制度改革委員会有識者委員、などを務める。専門は非営利組織論と評価論。ピーター・F・ドラッカー氏に師事。

 

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工藤: 田中さん、こんにちは。今日は、「新しい公共」の評価についてお話を伺いたいと思います。「新しい公共」は、鳩山政権が公共というものを市民が担うという点を実現しようということで動いていたのですが、このテーマについて、私たちは評価の分野に加えました。これに対して、田中先生の民主党と自民党のマニフェストについての評価ですが、民主党は14点で、自民党は40点とかなり差が出ました。この評価に至った理由について、お話いただけますか。

田中: 申し上げておけば、今回の評価は、言論NPOが提示した評価基準に則って一つひとつ評価を積み上げた結果、こういう点数になりました。特に、恣意性を入れたつもりはないのですが、結果的にこうなりました。
 中身はと言いますと、民主党についての評価は、菅政権のマニフェストには「新しい公共」という言葉は、イントロで書いてあるだけで、具体案の中では一言も触れられていない、それが一番の理由です。そこで、他にも資料がないかと思っていたところ、6月18日の成長戦略にはある程度の具体策が書かれていました。ただ、その内容は、鳩山首相が退陣する30分前に署名をして出した宣言文、新しい公共円卓会議の宣言文と政府対応案、特に後者そのものが成長戦略にそのままスライドしてきただけということでした。実は、この政府提案に関しては、円卓会議のメンバーからも、自分たちが議論してきたことと整合しない点があるということで、疑義を投じる意見書が出されるという異例の事態になっています。にもかかわらず、吟味もせずに成長戦略にそのまま移しているというところで、まず問題があると思いました。
 次に、その中身はですが、これが大きな争点になるかと思います。まず「新しい公共」の担い手の第一に企業を位置付けていて、株式を発行し、なおかつ投資家に対して税額控除の恩恵を与えるような法人制度を作り、色々な金融の仕組みを整えていくような具体案が出ています。しかし、鳩山前首相が力を入れていた、NPOやボランティアの影が薄くなり、行政の協働の対象という非常に矮小化された形でしか示されませんでした。どうも、「新しい公共」という言葉を使いながら、実は産業政策といいますか、収益性のある公共サービス、例えば保育だったり、教育だったり、医療の一部も入ると思いますが、そこの話にすり替えられてしまっているということで、非常に低い点数になりました。

工藤: そうですか。このテーマの前提にある背景がわかりにくいので、少し説明すると、元々公共サービスは行政がやるものとだと考えられていたんですね。しかし、行政だけで公共サービスをやるということの限界がハッキリしてきました。例えば、少子高齢化はこれから進んでいきます。そうなると、行政がどんどん増税をし、税金を投入していくことになるのか。そうではなくて、市民が自発的に公共を担うということが必要だった、ということが大きな時代の背景にあるわけですね。その設計を、政府や政治がどのように描いているのか、ということが今回のマニフェストの大きな論点になっているわけですね。その点で言えば、今田中さんが仰ったのは、今の民主党政権、参院選のマニフェストは、その描き方の問題提起はあったけれど、ちょっと違うのではないか、ということを説明されたわけですよね。

田中: そうですね。特に、自助・公助・共助の役割分担をどうするかという話なのですが、自助のところは、個人がサービスを購入して賄う。まさに、市場でカバーするところなのですが、これから益々深刻になっていくのは、いわゆる収益性のない分野での社会サービスに対するニーズだと思います。そこの議論が欠落してしまっているということが問題です。

工藤: つまり、通常サービスを提供すると、その費用はサービスを受ける市民が払う、つまり受益者負担です。ただ、払えない人に対しても、必要な公共サービスがあるだろう。つまり、営利ではない形で市民がそれを担うという分野がかなり重要なのに、そこの分野が無視されている、ということですね。
では、次に、自民党はどうだったんでしょうか。

田中: 自民党は、少し高めになりました。その理由は、小泉政権時代から、公助の部分を縮減しなければならないということについては、かなり明確に認識をしていたのですが、「官から民」というスローガンに対して、単に民間に出せばいいという発想から、今回大きく転換できているというのが見えるからです。具体的には、自助・公助・共助の中でも、共助をかなり意識しています。実は、この共助の部分というのが、先程仰ったような、ボランティアや寄附などによって、助け合っていく部分です。これはまさに、私たちの市民性や公共心を養うところでもあり、市民社会と言ってもいいのですが、そこについては公助においても自助においても、前提条件になるわけです。もちろん、市民社会というのは経済や政治などの前提条件になります。これらが、日本人の中で希薄になっているので、もっと強化しなければいけないという認識があることが、マニフェストを読み通していくと見えるわけです。まず、教育を大事にしようということで、小学校・中学校において公共という項目を入れようとか、消費者教育を入れることにもなっています。それから、大学教育においては、インターシップを3ヶ月ぐらい行なうなど、教育の分野で色々と考えてみようとしています。そして、非営利組織についても雇用対策や貧困、地域作りなどある程度分野を区切って、そこでNPOに活躍してもらうというような書き方をしています。そして、3番目に、法制度に関してもある程度整理をして語っていました。残念ながらまた要件緩和ばかりだったのですが、ある程度体系立てて公共ゾーンについて考えてみる、あるいは、問題を提起してみる、ということが背景にあるのが分かりましたので、点数が高くなりました。

工藤: すると、民主党は政権党として「新しい公共」を手がけ、それを有権者に問う絶好の機会だったわけなのに、非常にもったいないですよね。
 では、逆に有権者から見て、公共を誰が担っていくのかということは、非常に理念的で、日本の将来像に直接かかわる問題だと思うのですが、政治家としての発言としてみて、こういう発言だったら信用していいとか、こういう発言だったらこの政党の様子を見てみようとか、どういうところで判断していけばいいでしょうか。

田中: すごく難しい質問だと思うのですが、一つは今申し上げたように、市民社会というもの、あるいは民間非営利組織というものを単に行政の下請的にとらえている場合、また、何でもビジネスだけで解決できるような言い方というのは、私はかなり問題があると思います。

工藤: つまり、市民が自発的に参加したり、ある問題に関して自発的に答えを出そうという、市民側の動きを促進していくのか。それとも行政側のことを市民に担ってもらうのか。あくまで営利の中でそれをやっていくのか。確かにアプローチは違いますけど、その中で、どういう風な見方を国民に示しているのか、ということをちゃんとチェックしていくべきだということでしょうか。

田中: そうですね。それは、比較的たやすくその違いを見いだすことはできると思います。例えば、民主党の成長戦略の中には、はっきりと新しい公共の担い手は「企業」だと書いてありますし、他の政党については、もう少し市民社会や市民という書き方をしていますので、そこのスタンスの違いは、読めばわかると思います。

工藤: いずれにしても、この問題は、日本の将来にとって非常に大きな問題でありながらまだまだです。本当であれば、オバマ政権誕生の選挙の時に、私たち自身でも公共を担えるのだから、ということで、大きな大変化をもたらしましたよね。それぐらい大きなテーマなのにもかかわらず、あまり日本の政治家は熱心じゃないですよね。何かもったいない気がします。

田中: そうですね。ご自分がかかわった経験がある方が少ない、ということもあるかもしれないですね。そして、それは、時間がないと語れないということもあるのだと思います。

工藤: そうか。候補者として、市民社会なり公共についてどういう風な関心があるのか、ということがチェックポイントですね。
そういう意味では、この新しい公共というテーマが、今後どのように発展していくのか、日本の政治、各政党がそれにどう取り組んでいくのか、きちんとチェックしていきたいと思います。今日は、ありがとうございました。

田中: ありがとうございました。


 

参院選マニフェストの読み方について
(新しい公共)

田中弥生氏 (大学評価・学位授与機構構准教授)
聞き手:工藤泰志(言論NPO代表)