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参院選マニフェストの読み方について(年金) 印刷 Eメール

西沢和彦
(日本総研調査部主任研究員)
1965 年東京都生まれ。89年一橋大学社会学部卒業。1998年さくら総合研究所主任研究員、2001年日本総研調査部主任研究員。2002年法政大学修士(経済学)。専門分野は社会保障、税・財政。著書に『年金制度は誰のものか』(日本経済新聞出版社、 2008年)など。

  

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工藤: 西沢さんこんにちは。言論NPOの評価では、年金・社会保障分野をお願いしましたが、年金の分野は特に評価が低いんですね。マニフェストでは民主党、自民党ともに10点台で、特に民主党の方が相対的に評価が低い。ここまで低くした理由についてお話しいただけますか。

西沢: 両党に言えるのは、人口減少モード、少子高齢化モードに頭が全く切り替わっていないということです。わが国は現在高齢化率が23%、これが中長期的には40%になっていくわけですね。現役世代の負担を高齢者世代に移転しているわけです。これからの政策は人口減少モード、少子高齢化モードに切り替えて、負担を抑えていくということにしなければならないのに、民主党も自民党も、どちらかというと増やしますよという政策になっている。

工藤: つまり、お年寄りに対する公約の比率が多いのですね。

西沢: 高齢者をお客さんとした公約になっているのですが、私から見たら方向性が逆だと思います。ですから、本来であればプラスの加点もできないんですけど。

工藤: ということは、0点になる可能性があるわけですね。

西沢: 少子高齢化は進んでいくわけですから、本当はいまの中高年、高齢者に厳しいことを言うべきなのです。厳しいのですが、その分、将来世代や若い世代の負担が軽減するということを示さなければならないのに、両党とも一言も言っていない。もちろん、厳しいというのは、年金カツカツの生活の方から、年金を取るということではありませんが。

工藤: そうですね、お年寄りをいたわるという気持ちはもちろんあるのですが、お年寄りのことだけを考えるという政策であると、年金の財政がもたないということを言っているわけですよね。若い人たちから見れば、自分たちの時はではどうなるんだろうか。全く展望が見えない。この状況を黙認していることがまずいですよね。
では次に、年金制度については、各党の姿勢をどう判断していますか。

西沢: 年金財政は両党とも全く駄目です。やや自民党の方が消費税をあげて年金に充てると言っていた分だけよかった。具体的に言うと、2004年に大きな年金改正がありましたが、そのときに2008年までに税制の抜本改革を行い、2009年以降、基礎年金という全国民に給付される約20兆円の年金があるんですが、その国庫負担の割合を3分の1から2分の1に上げると言っていた。その引き上げには国庫負担で2.5兆円かかりますが、自民党はこれに消費税を充てると言っている。ここが、民主党よりも自民党がかろうじて1点高かった理由ですね。一方で、民主党は2004年改正時点では野党ではありましたが、いまは政権与党です。新制度にまだ移行していないわけですから、いまの制度について民主党には責任があるはずです。にもかかわらず、基礎年金の国庫負担割合の引き上げについて全く言及していない。たしかに2010年度までは埋蔵金で賄っていますが、11年度以降は財源がないわけで、そこに言及がないというのは政権与党としての姿勢を疑われても仕方がないと思います。

工藤: 2004年の年金改革で、そのとき自公政権は、100年間「安心だ」という言い方をしました。ただその時に言われていた基礎年金の国庫負担割合の問題、マクロ経済スライドが発動されていない問題とか、色々な問題があって、その当時やろうとしていたことが実現していない。それにより、いまのお年寄りの方々に給付が少しも抑制されないまま払われている状況ですから、若い人にとってはたいぶツケがまわっているということです。政権を取った以上、マニフェストで言っていないとしても、こうした状況に対して対処すべきだと思うのですが、それについてどう考えていますか。

西沢: 2004年の制度改正では、マクロ経済スライドという、中長期的な給付抑制の仕掛けが盛り込まれたんですね。ただ、これは安定的なインフレと賃金上昇を前提としているのでいまだ全く機能していない。それによって、高齢者に過剰年金給付が起きている。これに対して自民党はもちろん、民主党も危機感を持って状況を認識し、改善の手立てを打たなければ、年金財政はもたない。もったとしても、将来世代が、いま我々の不作為をしていることによる「咎」を負わなければならないという状況なのに、両党とも何も言わない。こういうことに対して、私は非常に憤りを感じています。

工藤: 国民年金の給付率もかなり低いですよね。信頼が崩れている気がするのですが。

西沢: 具体的には、だいたい2,000万人いる第1号被保険者の納付率が、6割に低迷している状況です。これもおっしゃるとおり信頼感の問題ではありますが、構造的には雇用の問題が大きいのです。正社員になれない人たちが国民年金になだれ込んでいる。国民年金保険料には事業主負担がないですし、低所得者には定額保険料は相対的に重いですから、結局未納になってしまうという悪循環をもたらしている。民主党はじめ多くの党が「若い人たちの雇用を」ということを主張するのであれば、いまこの国民年金になだれ込んでいる人たちに目を向けるべきだと思いますが、何にも書かれていない。国民年金に入っている非正規の人たちをいかに厚生年金に入れるかということは、共通の喫緊の課題であるはずなのに、一言も触れていないのです。

工藤: 日本の政治はそういうことに取り組んでいないですね。だから本当は0点以下なんだけど、苦労しながらも西沢さんはプラスの評価をしている。それから、実績も低いですよね。

西沢: 低いです。たしかに、年金記録は一生懸命やっていると思います。もともと野党時代から自分たちで問題を見つけてきて取り組んできたことですから。ただ一方で、年金制度の問題は、少子高齢化モードに切り替えていくといったことであるとか、非正規の増加など雇用形態の変化に対して制度を現代化していくということが本丸ですよね。そのような認識も持たずに何も取り組まないというのは何もやっていないに等しい、あるいは状況を悪化させていますから、もっと低い点をつけて、認識の改善を促していかないといけないと思います。

工藤: 医療の問題はいかがですか。診療報酬をあげて医療サービスで問題があったので対応しようといっているのですが、全体像が見えない。必要であれば増やしてもいいのですが、どうしてそれが必要なのか、あるいはそのための財源をどうするかということがないと、結果として医療費が上がっただけということになるだけになってしまうという気がします。

西沢: 医療が難しいのは、例えば通常市場でサービスを購入するときは、値札を見て、吟味して、初めてお金を支払いますよね。ところが、今の日本の医療は、一人当たり年間で何10万もかかっていますが、サービスを吟味して選択した上でお金を払うというプロセスは確立していないのです。全部国任せで、我々の預かりしないところで議論が行われている。

工藤: そうですね、診療報酬はそうやって決まっています。

西沢: 例えばどうすればいいかというと、「保険者」(企業の建保、市町村など)でより民主主義的なプロセスを確立することが一つ挙げられると思います。保険者は医療機関との交渉力を高めるとか、診療報酬にしてももっと分権化していくとか、あるいは病院から提供される明細をより詳しくするとか。そうしたプロセスを徹底したうえで診療報酬増というのなら、我々も納得感があるのですが、ところがそういった保険者機能の強化とか明細書の徹底などがおぼつかないまま、診療報酬を引き上げますとか医師を1.5倍にしますと言われも、それが果たして我々被保険者が望んでいたことだったのか、本当に欲しいと思っていた医療がそれでは担保されないわけです。ですからここは評価が難しいのですが、少し穿ってみてしまうと、医療サービスの「供給側」の要求を取り入れてマニフェストをつくっているという印象を持たざるを得ないのですね。

工藤: たしかに全ての分野で供給側の話がほとんどで、国民や患者、被保険者、消費者に向かった政策は少ないし、掲げていても着手していないところがあります。

西沢: たしかに、対GDPで見ても日本の医療費は低いですから、診療報酬は引き上げてもいいものだと思っています。しかし、国が上げようといってあげるものではなくて、我々の意思が集約される中で上がっていくことこそが自然な姿であって、そのプロセスを、せっかく政権交代したのだから民主党には作ってほしかったです。しかし、どうもそうなっていない。

工藤: そのとおりですね。今回の参議院選挙ですが、まだまったく国民に向かい合って提案していないわけですが、特に年金問題は政治は何を語らないといけなくて、有権者はそれをどう判断すればいいのですか。

西沢: 政治はもう少し時間軸を長く取ってほしい。少子高齢化モードに頭を切り替えしてほしいです。そうしたときに、いま現有権者が苦い薬を飲んでも、将来世代の税なり社会保険料の負担が抑制されるということを、繰り返し政治は語ることが必要です。そうすることによって、年金や高齢者医療の長期的な安定は見えてくると思うのです。これであれば、つらいですけれども、将来世代も負担を負っていけるだろうという確信を持って初めて、制度の長期的持続性が確保されるわけです。もうひとつは、マニフェストなり彼らの政権が、実は「供給者oriented」なのか、「ユーザーoriented」なのかはっきりしてほしい。政治家は国民から1票の投票を受けて国会に出ていくわけで、供給者の団体から票をもらうわけではない。マニフェストではたくさん項目が連なっていますが、本当に国民目線で出てきた政策なのか、選挙までにきちんと国民に向かって説明してほしいですね。

工藤: その説明が本当に国民目線なのかということを、有権者はきちんと見たうえで、投票日を本日は年金、社会保障分野で西沢さんのお話をお聞きしました。今日はありがとうございました。

 

参院選マニフェストの読み方について
(年金)-1-

西沢和彦氏 (日本総研調査部主任研究員)
聞き手:工藤泰志(言論NPO代表)

 


 

 

参院選マニフェストの読み方について
(年金)-2-

西沢和彦氏 (日本総研調査部主任研究員)
聞き手:工藤泰志(言論NPO代表)