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参院選マニフェストの読み方について(雇用) 印刷 Eメール

山田久
(日本総研調査部主席研究員)
1987年京都大学経済学部卒業後、住友銀行(現三井住友銀行)入行。経済調査部、日本経済研究センター出向を経て、93年日本総合研究所入社。2003年調査部経済研究センター所長、05年マクロ経済研究センター所長を経て、07年より現職。

  

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工藤: 山田さんどうもこんにちは。今回は言論NPOの雇用分野の評価を担当していただき、ありがとうございました。雇用政策では、民主党が自民党より低いのですが、両党とも30点前後と非常に低い評価になりましたね。民主党が自民党よりも低かった。これはどういう理由だったんでしょうか?

山田: 雇用政策というのは、私が考えるに3つの柱があると思っていまして、1つは経済の「柔軟性」に対応しているような雇用制度ですね。例えば雇用調整であったり賃金の調整といった、ある程度経済の状況に合わせて柔軟にできないとダメです。ところがそれだけでは労働者の生活が守れませんから、2つ目として「保障性」、いわゆるセーフティネットですね。これが必要なわけです。それからもう一つの問題として大きいのは今、正規・非正規の問題が大きくなってますから、「公平性」の問題ですね。今はもう正社員だけではやっていけない。非正規、派遣も含めてありますから、それらを認めた上で、どう公平性を作るかと、それが公平性です。今回の民主党と自民党を比較すると、それをどちらもトータルに、整合的に提示されていない。そういう意味で全体が低くなりました。
 その中でも特に民主党が低くなったのは、最初の1点目の柔軟性というところについて、ほとんど記述がないんですね。自民党は一応その部分があるのですが、体系性がない。ということで、全体的に評価が低いのです。

工藤: 「柔軟性」というのはどういうことですか?さきほどの非正規とか、そういう話ではないんですか?

山田: それも含めてですね。

工藤: 含めてですか。しかし、民主党政権はまさに非正規の雇用を原則的に禁止するとか、そういう動きがありましたが、あまりそれが上手くできなくて骨抜きになって、という状況がありましたよね。だからそれに対してやっぱり民主党は何かを言わなきゃいけない、という立場にあった感じがしますがどうでしょうか。

山田: そうですね。民主党は派遣法改正で派遣自体を禁止すると言ったわけですが、なかなかそれでは経済が回りませんので、実体的に骨抜きになっているんですね。骨抜きにしたままで、派遣はやっぱり原則禁止ということにしているのですが、その一方でセーフティネットとして派遣労働者を保護していくための仕組みが必要であるのに、そこも中途半端になっているということです。両面ともどっちつかずになっていますね。

工藤: なるほど。セーフティネットに関しては、民主党はもともと自民党が考えていた時限措置としての求職支援を打ち切り、今年度で終了ということにしました。そうなると、民主党はそれに対して自らのプランを出していかないとセーフティネットのところも穴があいてしまいますよね。

山田: そうですね、対案として恒久措置にすると入っていますが、体系的なものは出ていないですね。特にこの部分というのは、実は職業訓練の仕組みそのものが上手く機能していませんので、うまくいく仕組みを提示しないとダメですけれども、この部分が提示できていないんですね。だから形だけセーフティネットと言っているだけで、実体を伴っていないということです。

工藤: すると今度は自民党なんですが、自民党は今の論点でいけば、今回のマニフェストでは何が足りないんですか?

山田: 整合的に雇用の「柔軟性」、「保障性」、それから「公平性」の三要素を、全体として整合性ある形で設計する必要があるのですが、部分的にそれらを少しずつ加えているだけなんですね。もっと言うと、これは民主党も自民党もそうですが、例えば「同一価値労働、同一賃金」という形で「公平性」は打ち出されているんですが、ではこれを具体的にどうやっていくのかという具体案がないんですね。だから言葉はとりあえず触れているんだけれども、全体として具体的にどうしていくのかが見えない。

工藤: あと、今のセーフティネット、求職支援の場合には、研修など、能力アップさせるための仕組みが自公政権も不十分だと以前から山田さんは仰っていました。それに対して、今度の自民党の公約は何かアイデアが出てきたんでしょうか

山田: 特にそこも出てないですね。だからそういう意味では、政権を取る以前からほとんど基本的にはあまり変わらないですね。もともとの自公政権の提示したものというのは、現状維持なわけです。しかし、例えばセーフティネットについては、特に労働者を移動させていって、そのときに新しい技能を身につけさせていくという「積極的労働政策」を強化しないとダメなのです。そこの部分の具体策が提示されていないのがずっと問題だったんですが、相変わらずその部分は欠けている。

工藤: 民主党はそれを直そうと思ったんですが、ほとんど案がまだ出てない。すると雇用政策は、かなり厳しいですね、日本の課題から見ると。

山田: そうですね。ですからそういう意味で全体的に低めの点数になったわけです。

工藤: では次の質問なんですが、この雇用政策で本来日本の政党(これは民主党、自民党だけに限りませんが)は、何をいま提起すべきであって、しかも有権者はその提起に対してどういう視点で政党の政策を見抜けばいいのか。これについて話していただけますか。

山田: 繰り返しになりますが、3つですね。「柔軟性」と「保障性」と「公平性」。これらを具体的にどういう風に実現していくのかというところのビジョンですね。私はこれは具体的にはですね、非常に大きなポイントになってくるのは、先ほどちょっと言いましたけど職業訓練のあり方なんですね。職業訓練のあり方をもっと深く踏み込んで言うと、社会横断的な能力を認定していって、それをどういう風に育成していくのかという仕組みですね。職業能力の認定制度みたいなものだと思います。そういうものが、一つのパイロット的な政策として、私は必要だと思うんですね。そこの具体的イメージみたいなものも出てくれば、これはまだ入り口に過ぎないんですけれども、大きな前進になっていると思います。
 ところが残念ながら、一部検討するという話は出てはいますが、具体的なところまでは書かれていない。やはり政策として、マニフェストとしてそういう部分も重要な政策ですので、書いてほしいなと。もう一つ重要なのは、雇用政策というのは政府だけではできないものなのです。労働組合とそれから企業サイドが協力しないとできないですよね。そういう意味では政・労・使の3者が具体的に議論をしていって、こういうのを一緒に作っていくという枠組みですよね。そのための仕掛けを政府がつくるという部分についても、きちっとマニフェストで書く必要があると思うんです。それがあって初めて実現するわけですから。ところが、そういった説明は一切ない。

工藤: ないわけですよね。確かに仰るように有権者側から見れば、まず一つは失業してしまった場合に、それに対するきちっとしたある程度の保障ができるような制度があるか。ただそれだけではなく、その中で自分できちっと技能を身につけて、社会、仕事にもう一回戻るためにどういう仕組みがあるかということですよね。こういう点まで、有権者は政党がどういう風に話しているかをまず見抜かなきゃいけないということが一つです。
 あとは最低賃金、お金の問題と、働き方のあり方みたいな将来のイメージですね。派遣労働の方もいますし、いろんな人たちがいていろんな働き方の面もあるんですが、その中でその人たちの人権とかキャリア、能力向上のために多様な仕組みがあって初めてそれらが有機的に動くと思います。そのところで、どういう発言があったらこの政党はまじめに考えてるなと思えるような、そういうキーワードはないでしょうか。

山田: これまでの雇用政策を見ますと、今の仕事を一生懸命守ろうという政策が多いですね。しかし重要なのは世界がどんどん変化してきていますから、新しい雇用をつくってそこに移っていける、だから、能力育成を中心に我々働き手が新しい環境に適応するのを積極的にサポートしていきますよと。必ずしも今の職だけを守るというのではなくて、場合によってはものすごい職を失う可能性は現実的にあると思うんですが、そこを守るんじゃなくて、新しいところに積極的に移していくと。これは実は政権としてはなかなか言いづらいものがある。今の仕事をなくすということもありますから。だから、責任ある発言ということになると、新しい職をつくってそこに移っていくのをサポートしていくということに対して積極的な発言が出てくると評価できるかなと思います。

工藤: では、新しい職業というのはどういうことですか?よく成長戦略との絡みで、イメージだけは出てくるんだけども、それではダメなんですよね。

山田: そう一気になにか解決策があるわけではないんですが、だからこそ、そういったものを積み重ねていきながら、政・労・使が協力していくことが重要なんです。それがないと例えば職業訓練するにしても企業の協力がないと、有効性のあるものができないんですね。

工藤: 今の民主党政権は政・労・使で決まったものを急に変えたということがありましたよね。

山田: 未だにそういう問題がありました。政府で決めたものを最後変えてしまったり。

工藤: そういうのはやっぱりよくないですよね

山田: よくないですね

工藤: すると、やはり雇用政策上のアジェンダは何かっていうと、昔は派遣労働者の人たちがどんどん切られてしまい、年末も越せないということでありましたよね。でもその局面から、その人たちが今度は社会で働けるかという道筋ということも一つのアジェンダになっていて、またもう一つはそういう人たちが働けるようなっていろいろな形でキャリアアップできるような労働市場の問題が出てきて、その先にどういうところに働き場があるかと。こういうことを描けないとダメなわけですね。

山田: そうですね。とりあえず今はそういった問題ではなくて、多様な働き方を認めたうえで、将来的にいかに安定してずっと働き続けられるのか、そしてそこでいかに技能を身につけさせることができるのか。そういうところまでの提示がいると思います。

工藤: 日本の政治は課題に対してきちんと議論し、ビジョンとか未来を提示していかないと、有権者は政治が何のためにこの政策を出しているかが分からない。そういう事態にあることが分かりました。今日は日本総研の山田さんのところに来ました。山田さん、どうもありがとうございました。

 

 

参院選マニフェストの読み方について
(雇用)-1-

山田久氏(日本総研調査部主席研究員)
聞き手:工藤泰志(言論NPO代表)

 


 

 

参院選マニフェストの読み方について
(雇用)-2-

山田久氏(日本総研調査部主席研究員)
聞き手:工藤泰志(言論NPO代表)