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外交・安全保障 印刷 Eメール
評価基準 評点
現時点の到達点についての実績評価(40点) 形式要件(20点) 6
実質要件(20点) 2
実行過程(30点) 1
説明責任(30点) 0
合計(100点) 9

評価の視点

   鳩山前政権で崩れた日本の外交・安全保障を立て直し、この分野で現在の日本に問われている下記の本質的な課題に対して、菅政権として意味のある答を描き、あるいは答を出したか。それに向けて、真の政治主導の下で実態的な進捗がみられ、十分な説明がなされたか。
(A)高齢化・少子化・人口減少社会に入る日本が、これまでの経済力に代わって、どのような国力をツールとして戦略的に用いながら国際社会の中でのプレゼンス確立を図ってきたのか。そのために、どのような外交・安全保障戦略を展開してきたか。
(B)国際情勢や安全保障環境の変化に対して、国としての総合安全保障戦略をどう構築し、それに向けた実効性ある外交・安全保障の努力をいかに進展してきたか。
(C)有事や緊急事態への対処において、有効な危機管理対応をなしえてきたか。
 

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実績評価

<形式要件>
鳩山政権が日本の外交・安全保障を致命的なまでに弱体化させた後、菅政権に問われていたのは、これをいかに立て直し、その上で菅政権として外交・安全保障で何を実現しようとするのかを明確にすることであった。しかし、マニフェストでは、政権として達成すべき外交・安全保障戦略については、散発的に何らかの言及があるのみで、戦略目標が系統的に示されているわけでは何らない。また、外交・安全保障政策の様々な「ツール」についてはほとんど言及すらされておらず、いくつかについてのみ、散発的に列挙されているに過ぎない。同様に、所信表明演説からも、この点で有意義なメッセージは読み取れない。基本方針に相当する部分は、菅政権に問われていたはずの論点をはずしており、何をどう具体的に実現するのか、課題設定そのものが体をなしておらず、その実績評価は困難である。
マニフェストでは、「日米同盟を深化させ、それを世界の安定と繁栄のための共有財産にしていく」旨を謳っていたが、個々の政策対応をみても、グローバルな「インフラ」となりうるような日本独自のイニシアチブはほぼ皆無である。対アフガニスタン政策では、海上自衛隊によるインド洋での給油活動は停止されたままであり、日米同盟に基づく活動はない。また、アフガニスタン・パキスタンへの50億ドルの支援についても、大規模な支援金額を評価する声が国際社会の一部にあるものの、基本的には国連を通じた支援で、日本が現地でオペレーションを展開しているわけではなく、かつて「小切手外交」と海外で揶揄された姿勢との差別化は難しい。イランの核問題でも、国際的な協議や協調のために日本が率先して国際的主導権を発揮したことはなく、日本は、対イラン交渉の主役ともいうべき「国連安保理常任理事国+ドイツ」の蚊帳の外におかれたままである。気候変動対策でも、民主党政権は2020年までに1990年比で二酸化炭素排出量25%削減を公約していたが、その後、ポスト京都議定書の枠組み作り等では日本のリーダーシップなど見受けられない。対北朝鮮政策でも、ミサイルや核を巡る交渉進展のために日本政府が何らかの主導的役割を果たしているわけではない。「核兵器のない世界」の実現に関連しては、鳩山・オバマ会談で、核セキュリティを巡る日米協力を確約したが、予算措置は依然不明である。日中の戦略的互恵関係についても、依然、戦略や全体像が見えておらず、日本側から積極的にイニシアチブを仕掛けることもなかった。むしろ、尖閣列島周辺海域における中国漁船による違法漁業問題など、問題が発生する都度対応するだけで、方針も一貫しないリアクティブな姿勢しか見受けられなかった。唯一、有意義な成果としては、防衛大綱・中期防衛計画の策定だった。

<実質要件>
鳩山前総理は発言や合意内容を頻繁に覆し、政治的主導者としての信頼を失うという、国際的に非常識ともいうべき失態を繰り返していた。それに比べると、ようやくまともに対話ができる人物が総理になったという点では、米国政府をはじめ、諸外国から菅政権は一定の評価を受けてはいる。ただ、それはマイナスをゼロに近づけただけといっても過言ではなく、それ以上に肯定的な評価の対象となり得る外交・安全保障面での成果はほとんどみられない。
   鳩山政権がこじらせた普天間基地問題について、菅政権は、日米合意に基づいて沖縄の負担を軽減するとしている。様々な紆余曲折を経た結果、結局、民主党政権は、自民党政権時代以来の日米合意案の履行を確約するという、旧自民党政権と同じ立場に戻っただけであり、しかも、鳩山政権が沖縄県民の強い反発を煽った結果、日米合意履行の展望が開けない事態に陥っている状況に変化はない。つまるところ、現状では、米軍による普天間基地の使用継続という選択肢しか無く、このままでは、もし普天間基地周辺で住民を巻き込むような事故でも発生すれば、沖縄県における在日米軍基地の存続を揺るがすような事態となりかねず、日米関係を毀損する潜在的リスクは極めて高い。また、日本側の国際合意不履行により、米軍のグローバルな展開戦略の履行が危ぶまれており、日本政府の政治的主導力の欠如が大きく問われている。このような状態は同盟関係として不健全である。また、本来、日米同盟の基盤ともなるべき日本の政治的主導者の能力がこれほどまでに貧弱であるという事実が、世界に広く認識されてしまったことで失ったものは大きいと考えられる。現に、民主党政権下では、中国やロシアが日本に対して挑発的ともいうべき行動を頻繁に繰り返すようになっており、日米同盟の相対的な弱体化が、日本やアジア太平洋地域の安全保障に大きな影響をもたらしつつある。
   ただ、菅政権が日米関係を強化する現実路線へと転換し、日米同盟強化をもって日本の対アジア政策に臨むようになったのはプラスの変化である。しかし、対中国、対アジアについて、日本の戦略は依然、不明確である。FTA進展への努力はみられ、特にTPPは菅総理自身が前向きではあるが、日本国内の農業関係者からの賛同は得られておらず、鳩山前総理が反対の姿勢を表明するなど、むしろTPPを巡って民主党内で対立が深刻化しており、実質的な進展はない。このため、韓国などに大きな後れをとりつつある。このような国内事情のため、東アジア共同体構築に向けた取り組みにおいても日本側のリーダーシップは希薄であり、またAPECの議長国としての日本の存在感も希薄であった。
   また、菅政権の尖閣諸島問題への対応は、稚拙の一言に尽きる。首尾一貫性を欠き、最終的には、外交能力など持たない検察に、日中関係に配慮することを許すという、検察による外交への関与を公的に認めるという前例を作った。そして、検察が、外交的配慮に基づいて国内法の執行手続きを例外化するという前例も作った。本来、このような判断は政治的主導者が責任を持って行うのが通例であったし、ましてや「政治主導」を掲げる政権である。自らの政治的意思を明確に示さなかった菅政権は、政治的責任を放棄したといわざるを得ない。日中関係を悪化させただけでなく、中国側に、「日本は圧力をかければ法手続すら曲げる」との確信を与えた結果となった。この事件後、中国は、尖閣諸島の周辺地域に監視船を常駐化させるようになってしまった。他方、日本の海上保安庁では士気の低下が見受けられており、違法活動を行う中国漁船等に対してどのような法執行活動を行うべきなのか、疑念を抱く状態となっている。菅政権は、日本の国益に対して著しく深刻な悪影響をもたらした、と評価せざるをえない。
   菅政権の外交・安全保障政策において、唯一まともな成果と評価できるのが新防衛大綱の策定である。従来の基盤的防衛力整備に基づいた防衛戦略を改め、日本を取り巻く安全保障の環境変化などに適合すべく「動的抑止」の概念を導入するなど、日本の防衛戦略を現実的に前進させた点で意義が大きい。但し、本構想は戦略理念としては優れているものの、その実現のプロセスや手段は依然、不透明なところが多い。自衛隊の任務役割が増えているにもかかわらず、防衛予算はこの10年間、一貫して削減されてきたため、いかにして新防衛大綱を効果的に履行しうるのか、実効性の保証は不十分なままである。加えて、マニフェストにも掲げられた「防衛性能技術基盤の維持活性化」が、限られた予算内で実効性ある防衛力を担保する上で不可欠であるが、菅政権は具体的な施策を打ち出していない。中でも、このためには武器輸出三原則の緩和が必須と思われるが、菅政権は再び社民党との連携を協調する姿勢を優先させて、これを先送りしたため、「防衛性能技術基盤の維持活性化」にどのような効果的施策を考えているのか、不明である。
   以上、総括すると、視点(A)からみて、鳩山政権が破壊した日本の外交・安全保障の立て直しについては、具体的な進展はあまり実現できず、ましてや、新たな外交戦略については希薄である。視点(B)については、防衛計画大綱の策定は高く評価できるが、その実効性には課題が多い。視点(C)については、まさに外交・安全保障で最も問われる有事対応において致命的な失敗を犯した。総じて、菅政権による実績の評価は著しく厳しくならざるを得ない。
 

実行過程

   鳩山前総理は、何の裏付けもないままに様々な公約をパフォーマンス的に約束したため、結果的に何も実現できず、日本の国際的な信頼を失墜させた。このような非常識かつ低レベルの対外姿勢に比べると、菅政権の外交姿勢は一国としてはようやく「普通」に戻ったといえよう。
   しかし、外交や安全保障の戦略をオール・ジャパンで立案するための政策立案・実行のための調整機能が官邸には不十分なままで、結果的に何ら有効な戦略を構築できていない。特に民主党政権は、「政治主導」のスローガンの下、官僚機構の機能を弱体化させた割には、それにとって代わるだけの政治主導の機能を構築できていないため、いわばガバナンスを崩壊させた状態を継続させていることが最大の問題である。官邸に必要な情報が集約されている形跡も見受けられない。
   脆弱な体制の中で、総理や官房長官といったトップたちには外交の経験がなく、尖閣諸島海域を巡る日中衝突の危機においても、無様なまでに準備不足、経験不足を露呈した。
   全体として、情報収集・分析・共有に基づいて、戦略・政策を構築し、そのために外交・安全保障関連施策を展開していくというプロセスが、政治主導という名の下に、実質的に機能しなくなっている。 
   また、社民党との連携を優先させたため、武器輸出三原則の見直しや防衛生産技術基盤の確保などのマニフェスト公約をあっさりとなおざりにしている。安全保障戦略への影響など、検証された形跡すら見受けられない。
 

説明責任

   鳩山政権以降、外交戦略の新たなコンセプトは何ら打ち出されていない。菅政権のマニフェストも戦略課題を説明していない。例えば、日米関係については、何ら戦略目標を規定しないまま、「地位協定の見直し」という、実務的な二国間協定の見直ししか公約していない。鳩山政権時のマニフェストと同様、「緊密で対等な日米関係」という、空疎かつ内実不明のスローガンが残ったままである。「総合安全保障、経済、文化などにおける関係を強化することによって、日米同盟を進化させる」との説明も、一体何を意味しているのか不明である。普天間基地問題も、政権として何ら見通しを示していない。空疎な言葉ではない戦略やビジョンがあって、その下に政策手段が提示されてこそ、説明責任として評価に耐えうるものになるが、それを欠いている。
   鳩山前政権の何が失敗で、それをどのように立て直していくのか。菅政権として何をしたいのか。これらについて菅政権は国民に説明すべきであったが、外交戦略の見直しや転換について明確に国民に説明した形跡は見受けられない。前政権の失敗を曖昧にしている上、説明責任を問う以前の問題として、国民に説明する外交戦略自体がほとんど無い。
   TPPへの参加について意思表示を行った点は新しい。しかし、それを提示したからには、その実現のために、説得力ある道程についても説明されなければならない。しかし、そうした説明すらなされていない。
   尖閣諸島周辺での中国漁船による違法漁業については、春頃から中国漁船が大量に尖閣諸島周辺海域に来ていた事実すら国民には知らされていなかった。中国の漁船が海上保安庁監視船に衝突した際も、菅政権は、この中国漁船の違法行為を収めた映像を国民から隠蔽しようと図り、また逮捕した中国船長の扱いを巡る外交的配慮については地検の判断に一任する姿勢を取った。「政治主導」をスローガンに掲げるのであれば、本来、外交的配慮については、政治的責任者が意思決定を行うべきではないのか?当初、前原外務大臣は、「国内法で粛々と対処する」としていたにもかかわらず、なぜ保釈したのか。政治的責任者は何ら納得のゆく説明を行っていない。
   以上、菅政権の外交・安全保障に関する説明責任についても極めて厳しい評価を下げざるを得ない。政権としては不合格である。
 

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