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評価基準 評点
現時点の到達点についての実績評価(40点) 形式要件(20点) 8
実質要件(20点) 5
実行過程(30点) 12
説明責任(30点) 5
合計(100点) 30

評価の視点

   民主党政権の農業政策の柱は戸別所得補償制度であり、菅政権の100日評価も基本的には昨年モデル事業として実施されたこの制度の本格実施に向けて菅政権がどう取り組んだかが焦点となる。ただし、これらの評価はこれまで同様に形式的な事業の展開に留まらず、この制度が民主党マニフェストで位置づけた農林水産業の再生や成長産業への成長にどうつながるのか、実質的な判断が必要になる。
   中長期的に見れば、日本の農業は、①農業の担い手の確保と②国際化(自由化)への対応が問われている。菅首相は今年10月の176国会の代表演説でTPP(環太平洋経済連携協定)の参加検討を表明したが、これらの表明が日本農業の中長期的なビジョンや農業の構造改革に向けての政策加速にどうつながるものなのか、そのために首相がどうリーダーシップを発揮したのかも評価の対象になる。
 

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実績評価

<形式要件>
   コメの戸別所得補償制度は初年度のモデル事業(実質的なコメの先行導入)が今年4月より実施されているが、2011年度予算では対象を畑作物(大豆や小麦など)に拡大し、総額は2010年度当初比で2385億円増加の8003億円が計上された。農水省関連予算が減少する中で、概算要求と比較しても満額認められており、2年目にして本格実施の段階に入ったと判断でき、形式的には順調に進展していると評価できる。また、「規模加算」についても11年度予算に100億円(5万ヘクタール分)が計上されており、戸別補償に農地の集約を促す姿勢を示したこともプラス評価となる。また農林漁業の6次産業化については、176回国会で「農林漁業者等による農林漁業の六次産業化の促進に関する法律案」が成立した。しかし、酪農、畜産、漁業の戸別所得補償制度についてはまだ実現の見通しは立っていないほか、参院選マニフェストにも書かれていたコメのモデル事業についての検証がこの時点では行われていない。一方、食品トレーサビリティシステムの確立や食品安全庁の設置など、食の安全に関する政策については実質的な進展がないことも評価できない。

<実質要件>
   コメの戸別所得補償制度は、コメの選択的な生産調整を認めたものという側面はあるが、市場価格の低下に伴う財政負担の増大が懸念され、これらを中長期的に正当化させる民主党農政のビジョンはまだ提起されていない。また、戸別所得補償の政策目的として提起されている「小規模農家の維持」と「担い手の育成と産業化」は性質上矛盾しており、これらを完全に両立させるのは困難である。また現在の戸別所得補償の価格は、小規模農家が経営を存続させるか否かという決定を左右するほどの価格(4割の生産調整を前提にすると1haにつき定額部分で年間7万5千円)でもない。
   戸別所得補償政策は今回の予算で本格実施に向けて動いたことは評価されるが、高齢化と担い手不足に悩む水田農業の再生の手掛かりをこの制度はいまだ示せておらず、これらの施策がどう農業の体質強化につながるのか、その道筋が明らかではない。「規模加算」も2011年予算で計上されたことは評価できるが、農地集約をいつまでにどのように進めるかの全体的なプランが示されてはいない。
   特に、菅首相が10月の国会での代表演説でTPPへの参加検討を表明したことで、こうした日本の農業の体質改善のさらなる加速が問われる事態となっている。この首相の発言は党内での強い反発を招いたが、その後、11月30日には官邸に首相を本部長とする「食と農林漁業の再生推進本部」が設置され、来年6月には農業改革の基本方針を策定されることになった。これらの流れと連動するように、今回の農業予算は当初、2011年度からの農業の体質強化や六次産業化に重点を置いた一歩を踏み出すことが強いメッセ―ジとして伝わる内容にすべきとされたが、予算の内容は概算要求時の発想のままで、こうした体質強化に向けて予算の中身の抜本転換を図ったものとは言い難い。
   農業改革の議論は始まったばかりで、現時点での評価は難しい。ただし、TPP参加に向けて、特にコメの戸別所得補償制度を維持しながら、どのように日本の農業の競争力向上が図られ、かつその際、膨らむ所得補償の財源はどうするのかなど、大きな問題が浮かび上がっている。政権基盤が脆弱な菅政権がこうした答えを出しそれを実行できるか、100日時点での判断は難しい。
 

実行過程

   民主党農政の柱となる戸別所得補償制度は、農水省の政務三役を中心として省内に戸別所得補償制度推進本部を設置するなど、これを実行する仕組みが定着しており、民主党のマニフェストの中では目玉事業として優先的に進められている。ただし、菅首相がリーダーシップをとって進めたというわけではない。参議院選のマニフェストは農業を成長産業と位置付けたが、菅首相はそれをどう具体的に動かすかは説明できず、10月の176回国会での所信表明演説では農政に関して一切発言せず、突然、TPPへの参加検討を打ち出している。
   この首相のTPP発言は、農業の競争力の強化をどう進めるかの十分な検討もなく、唐突に行われたもので、それまでに農水省、あるいは農水大臣と協議が行われた形跡もない。そのため、党内の強い反発から、11月9日に閣議決定した「包括的経済連携に関する基本方針」では関係国との「協議の開始」に変更を迫られ、後退を余儀なくされた。
   また、TPPへの参加がGDPに与える影響についても、経済産業省と内閣府はGDPをそれぞれ10兆円、3兆円押し上げる効果があるとの試算が出している一方で、農林水産省は、TPPへの参加で全ての関税が撤廃されると第一次産業の生産額は従来の半分の4兆円にまで減るという試算を出している。しかし、これらの試算について菅首相自身が国会答弁で「政府としての統一した見解を示すことを目的としたものではない」と述べている。これらのことから、TPPへの参加検討について、首相が政府内でリーダーシップを発揮しているとは言い難く、また、農政についての意思決定が行われているのかが外部からは極めて見えにくくなっていることは、透明性という観点から評価できない。
   11月には菅首相自身を本部長とし、他の閣僚もメンバーとして参加する「食と農林漁業の再生推進本部」を官邸に設置しており、その諮問機関である「食と農林漁業の再生実現会議」で議論し、11年6月を目処に基本方針を決定、10月を目処に中長期的な行動計画を策定することにしている。これらは、農業政策全体について官邸がリーダーシップを発揮するための推進体制ができたとして評価はできる。しかし、これはTPP参加検討のための対応策として急に設置された感が否めず、設置までの経緯に関してはマイナスの評価をせざるをえない。
 

説明責任

   菅首相から、日本の農政の中長期的なビジョンや、それをどう実現するかの説明がなされたことはない。前政権においては、戸別補償制度は小規模農家の維持が目的と説明されていたが、首相は参議院選のマニフェストで触れたように、農業は成長産業と位置付けているのみであり、その実現策や戸別所得補償制度との関係、そして、財政負担を正当性化するための適切な農業のビジョンを説明してはいない。
   菅首相は所信表明演説でTPP交渉等への参加を検討することを表明し、「包括的経済連携に関する基本方針」(11月9日閣議決定)でも、農業について「高いレベルの経済連携の推進とわが国の食料自給率の向上や国内農業・農村の振興とを両立させ、持続可能な力強い農業を育てるための対策を講じる」としている。こうした考えは、政府の農業政策は、農家の競争力強化・大規模農家の育成へと大きく方針を急転換したとも判断できるが、この大きな方針転換に対する菅首相自身による説明はなく、むしろ党内の猛反発後、国会答弁でもTPPへの参加は未だ決定したものではないとして、この方針転換については名言を避けている。
   また、3月に閣議決定した「食料・農業・農村基本計画」では、食料自給率を10年度に50%にまで引き上げるという目標を掲げているが、その目標実現にむけた工程表はなく、菅政権下で、この目標をどのように実現していくのかということに対して説明がないことも評価できない。この他、参院選マニフェストでは、戸別所得補償制度を「段階的に」拡大していくこととしているが、具体的にどのような工程のもとに拡大していくのかということについて説明がない。

 

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