分科会:食料対話(前半) 印刷 Eメール

生源寺真一氏と張暁山氏の2人が基調報告をしました。
 
 まず生源寺氏はまず歴史から振り返り、次に共有すべき論点について述べました。

 同氏によると、日本は世界の最大輸入国で、穀物の自給率27%(2003)、日本の農家の一戸あたりの面積は、半世紀で3割程度のびただけ。規模拡大が進まなかった結果、効率が悪い農業となっている。

 リタイアがすすみ、意欲のある農家が規模拡大をするチャンスは広がっていると考える。自給率の低下から、農業全体が衰退していると理解している人が多いが、これは必ずしも正しくない。施設園芸(ハウス)、高級果実、加工型畜産では非常に効率的 。いずれも土地をあまり使わない、面積当たり付加価値の非常に高い農業である。
 しかし最近は資源の高騰の逆風を受けている。施設園芸や輸入した飼料を大量に投入する農業の持続性に疑問符がつき始めており、日本の食生活にあった農業を考える気運が高まっている。
 価格の高騰はいったん沈静化するだろうといわれているが、問題は長期であって、食糧自給に不安定要因が大きくなる兆候がある。それは、中国、インドといった途上国の人口の増加、経済の成長、そして、えさ用の穀物や油用の大豆の需要増大である。

問題は食料の安全保障である。
 フードセキュリティには2つの意味がある。ひとつは、災害や国際紛争など不測の事態への備え、もうひとつは、すべてのひとに必要な食料が確保されていることである。一般的には2番目の意味で、貧しい国の食料確保である。日中両国にとっては、どちらの意味も重要である。フードセキュリティには論点が4つある。

1.アジア以外への食料の依存度を高める。このことは、日中・アジアが食料の調達を巡ってライバルになることを示す。競合が激化すれば、価格が引き上げられる。
2.資料、えさ、油用大豆は米国とオセアニアに大きく依存。これからの供給源が問題。
3.従来、コストが高ければ、海外に依存した方がベターという判断だった。しかし、今後、いかにして国内の農業生産力を高めるか。
4.しっかりとした技術を備えた人的な資源。意欲のある人々人材を確保するには、農業経営が魅力的な仕事であることが大前提。魅力を高める新しい動きが生まれている。高付加価値生産や、農産物の加工に力を入れるビジネス。消費者への情報発信。新しいチャレンジとして、中国を初めとした農産物の輸出。県庁に増加している。7,8割がアジア。まだ量は十分ではない。それぞれの地域が得意な食品を生産して、売買しあう。アジアの食糧貿易のネットワークが形成されることにはリアリティがあると考える。

 一方、張暁山氏は以下の新たな問題を指摘しました。まず、バイオ燃料に使うと言うことで、食料に新たな需要が出てきた。国際的な情勢のもとで、食糧問題とエネルギー問題を一緒に考えなければならなくなった。
 中国の需要は国際的な影響も受けているが、国内の影響をより強く受けている。収入増、肉を多く食べるようになったため農産物の需要が増えたが、農産物を作るコストが高まって利益が上がらなくなって農業から他の産業へ移る人が多く、需給アンバランスができた。
生産は1998年に5億1200万tと最高だった。2007年も5億150万tだったが、人口が7300万人増えたので、国民一人当たりでは減っている。
耕地面積は減っている。環境保全のために耕地を林に戻したりもしている。水資源の問題もあり、旱魃、半旱魃の土地が多い。
 中国がwtoに加盟してから、グローバリゼーションのもとで、輸入が増え、食料供給の不安定性が高まった。中国が豚肉不足だから国際市場から買えばいいじゃないかという話を発しただけで、世界の豚肉の価格が20%増加した。大変な数字になる。中国は輸出入大国だが、強国ではない。価格決定権はない。中国も大豆を輸入している。大豆輸入はトップだが、価格を決定する力はない。大きな商社が決めている。食料安全問題は、中国にも同様に存在するといえる。
 中国の食料の自給率は、95%以上ではあるが、輸入するのは豆、芋、穀物。一番大きい部分が大豆。とうもろこしもある。もしも輸入しているこれらの食料を土地の面積に換算すると、中国の消費者の需要を満たすものについて、国内の耕地、水資源を使って作っていると考えると、21ムーが必要になる。これは13%の土地を海外の耕地を借りて作っているということになる。
 豚肉の生産がそうだが、生産が増えれば、値段が下がり、農民は生産を減らす。減ると、値段が上がり、増産をということになる。どのように安定的な食料の生産を確保するか。それが食料の安全保障の最大の問題である。

 2人の基調報告を受けて、パネリストによる意見が表明されました。
 渡辺好明氏は、食糧高騰で一番被害をこうむるのは、貧しい食糧輸入国であるとし、食糧需給を決定するものとして、3つの要素の足し算、および1つの引き算を挙げました。足し算では、

1.中国、インド、ブラジルなどのめざましい経済成長。世界の大豆貿易の3分の1は中国へ。これは長期的要因。
2.アメリカにみられる、バイオマス燃料への転換。これは中期的要因。必要は発明の母で、セルロース主体に代わろう。
3.オーストラリアなど大生産国の不作。これは短期的要因であり、技術で克服できる。

引き算は、サブプライムローンなど投機資金の問題がある。
 また、同氏は、日本について以下のように述べました。

カロリーベースの自給率は先進国で最低。6割海外依存。日本の面積の農地面積の2.5倍を借りている。食料生産に使った水も生産国からはく奪していることになる。バーチャルウォーター日本の食料は海外から600万t輸入。

日本は自給率40%を7年後に45%に増やすことを目標にしている。ただ、食糧自給率は、消費の水準、食生活のあり方に大きく依存。理想に比べて炭水化物少なく、脂肪多い。脂肪を減らし、沢山捨てられている食品のムダをなくすことが必要。

また、二毛作するなど、耕作されていない農地を有効に使い、農業の担い手の数を増やし、質を高める必要がある。

農業は自然の恵みを受けているが、自然の循環をある意味乱しているかもしれない。農業をすることが環境保全に役立っていると言う意見は気をつけないといけない。

 次に、朱長国氏が意見を述べました。食料の安全はつきつめれば、需給受給のバランス。バランスがとれれば安定的、価格も安定的、社会も安定する。足りない種目を輸出するという考え方に立脚して政策を立ててきた。
1.中国の需給バランスの特徴
 国内の食料の自給率が95%に達していること。大豆は輸入に頼っている。日本の状況と似ている。大豆を除き、小麦、米、とうもろこしの自給率は95%越える。
2.中国には豊かな備蓄量、調整能力が強い
 いまは、30年来で、在庫率が2億tと一番低い。FAOが出している17%の最低ラインを遙かに上回っている。
3.国内の穀物価格は安定上昇
 上昇幅が小さい。価格が安定している。人々も安心感を持っている。

 2020年の展望をすると、自給率は95.17%になる見込みとの試算。 現在、食料豊作プロジェクトを実施し、非常に大きな成果を上げている。国は財政予算を支出し、技術開発に注力し、革命を推し進めている。様々な総合措置をとっている。4つの省で4000万トン増産のポテンシャルがあるだろう。政府と地方の力を合わせた計画が必ず実現すると考えている。

中国は無駄が多い、節約する必要がある。農家の穀物ロスは平均4―5%。保管状況を改善すれば、ロス率2%は改善できる。送途中においてロスを少なくできる。食べるところでも改善が可能。以上、4点を改善すれば、年間700万トンに相当する。総じて言えば、2020年を展望し、中国はさらに5000万トンの穀物を増産できる。さらに700万トンセーブ。アジアや世界の食料に中国がそれなりの貢献をしていけると思う。

 また、伊藤博氏は世界の食料貿易をめぐる需給のファンダメンタルが変わってタイトな時代が台頭したと指摘。 安定的な確保が現実的に重要な課題になったと述べた。日中間の貿易では、中国から野菜、鶏肉、大豆かす、とうもろこしなど1兆円輸入。日本は輸入力、中国は輸出国 ウィンウィンの関係構築は重要 地理的に近いと言うメリットがあって、貿易は非常に重大な課題。アジアでの食料ネットワークの構築につながる。(生源寺)

 次に宋洪遠氏が発言。中国の食料生産と将来展望・対策について述べた。中国の食料生産は単収が増えているが、需給が緊迫した状況に直面している。地域からみると、主な生産地域は増えているが、バランスのとれている地域は非常に少なくなっている。効率をあげていかなければならない。生産コストが上がっている。価格変動のコストも含まれている。農業機械のコストも上がってきている。それに比べると、効率が比較的下がってきているので、考えなければならない。

地球温暖化の影響などを受けている。将来は、国内に立脚し、食料を基本的に自分で供給するという姿勢を堅持することである。

そのために、農業生産のインフラ設備の強化、農業の科学技術力の向上、生産・効率の改善が必要である。

 最後に、加藤紘一氏が発言しました。かつて外務省にいたころ、加藤氏は、専門は中国で、中国経済の事情調査などを一生懸命やっていた。35年ほど前に、今日のような詳しい数字を入れた中国側からの説明を聞くことができたらどんなにかよかったかと感想を述べた。当時はデータを集めようと思ってもなかなかなかった。人民日報を何度読んでも、時たま手に入る参考書を読んでも、中国経済の実態はよく分からずに、推測をしていた。
 日中の農業政策の大きな違いは、中国はそれぞれの政府や党の研究機関でこうであるべきだと決めると実施させるが、日本は農水省がこうあるべきだと思っても、農民を説得できないと反乱が起き、地方出身の国会議員を落選させると言うので政治家は、本来と違う主張をしなければいけないという構図です。日中の大きな差である。

我々は、農民のために一生懸命がんばる、票を食べる鬼たちだと言われていた。特にその批判をしたのは、マスコミ界と経済界。世界の食糧は余っているのだから、とうもろこしでも小麦でも大豆でも安く買える、wtoであまり抵抗しないでいい、安いものを買ってくるのが国民のためではないかと言い、われわれは世界を見る力のない保守的な田舎っぽい政治家と言われていた。しかし最近は変わり、メディアも財界もお金を使ってもいいから食料自給率を上げてほしいとなりました。将来ちゃんと食べられるようにしっかりやってくれと言われているのが現状です。

自給率の話ですが、確かに今年は40%です。同じ日本で、1950年ごろは、自給率は73%だった。これがどうして39まで落ちたのか。1つ非常に不思議なのは、自給率が下がるまでの間に、カロリー供給量は3.6%しか落ちない。なのに自給率が73%から39%に落ちている。理由は食べるものの質が変わったからです。肉・チーズなど酪農製品、大豆なたねを中心とした油糧穀物を膨大に輸入して、いい天ぷら、いい肉を食べるようになったからだと思います。日本の場合は、牛肉をたとえば神戸ビーフを1KG食べるためには、とうもろこしを15KG食べさせないといけない。普通の牛肉だと11KG、豚肉は効率がいいから、7KG、鶏はかなり効率よく日本は作っているので、4KG。卵は効率のよいところで2KGのえさで1KGが手に入る。肉と酪農製品は、穀物を非常に贅沢に使って、グルメな食事をしている。

これが行き過ぎて、日本人は太りすぎ、糖尿病、心筋梗塞になり、政府の医療保障に負担をかけている構造。これは日本だけではない。いい食事ができる25年が過ぎて、中国とインドが参加してきて、これまで豚肉しか食べなかった中国が牛肉を食べるようになった。インドはまだ牛肉を食べないからいいが、13億人が中肉などを食べるようになると、所詮、食料の奪い合いを日本と中国とインドでやるというのが、これからの食料状況だと思います。

言論NPOの討論と理解が、世界の穀物需給を変えていくというくらい、重要な討議である。自国の食料自給率を上げること、或る程度の余裕を世界穀物の備蓄に割いて、アフリカの国々がそんなに高い値段を出さなくても買えるような状況を作ってあげて、農業技術の支援をしてあげて、自分で作らせて、お互いに話し合う。大衆をあげることより、食料のありかたをじっくり考えることのほうが、自給率向上のためには効果があるということを認識すべき。

その点で日本は有利。肉を食べなくても、和食は成立できるが、中華料理は無理ではないか。中国がどんな食生活パターンを頭に描くのかが、世界の60億人の食料状況を変えるといえるのではないか。
 
 発言が一巡したあと、増産のための対策や、食生活のありかたをどうすべきかなどについて自由討論が行われた。