分科会:地方対話 印刷 Eメール
 「地方交流は国の外交をどのように補完できるのか」という問題意識のもと、今年新たに設けられた「地方対話」では、「日中の地域間交流と経済連携」をテーマに、現職の大臣を含む両国の自治体の首長らが参加し、議論が行われました。前半部では日本側から、増田寛也氏(総務大臣)、山田啓二(京都府知事)、尾崎正直氏(高知県知事)、香山充弘氏(財団法人自治体国際化協会理事長)が出席しました。中国側からは、夏徳仁氏(中国共産党大連市委員会副書記、大連市人民政府市長)、陳昊蘇氏(中国対外友好協会会長)、王萍氏(中国共産党九江市委員会副書記、市政府市長)、倪斌氏(無鍚市市長補佐、無錫市対外経済貿易局局長)が出席しました。日本側の司会は白石隆氏(政策研究大学院大学副学長)、中国側の司会は唐聞生氏(中国宋慶齢基金会副主席)が務めました。


 最初に基調報告を行った増田寛也総務大臣は、「政府が展開する外交政策と地方政府による地域レベルの交流は車の両輪のようなものだ」と述べ、厚みのある日中関係の構築のためにも、地域の国際化や共通課題の克服は重要だと主張し、そのためのサポートを行っていきたいと語りました。また、交流のかたちが多様化する中、総務省が実際に行っている「JETプログラム」や「Visit Japan」などのキャンペーンについても触れました。最後に、この分科会を「従来のしくみへの評価を行うとともに、新たな機軸の提案につなげる舞台にしたい」と、締めくくりました。
続いて基調報告を行ったのは陳昊蘇氏(中国対外友好協会会長)です。陳氏は都市間の友好提携に言及し「政府間関係が悪化している場合でも地域間関係が良好であれば、それは日中の関係改善に役立つ力になる」と述べました。

この後発言した大連市長の夏徳仁氏からは、交流のかたちが多様化する中で実際に大連市が実施している試みについていくつか紹介がありました。IT産業、環境や省エネ分野での都市間協力の重要性に触れ、日本の省エネ技術を中国の企業に伝えてほしいと述べたうえで、大連市を地域間交流のモデル都市にしたいと語りました。
京都府知事の山田啓二氏は「地方交流とはつきつめると人と人との交流。国の枠組みを越えて、国家レベルの外交を補完していくことが重要だ」と主張しました。京都府が行っている例としては観光誘致を挙げました。山田氏は「日中間の地域交流の窓口になるような機関が必要なのではないか」と提案しました。
九江市市長の王氏は、自然が豊かで産業も盛んな同市の魅力について語った後、「九江市は経済的推進力となる自治体と積極的な交流を行っているほか、環境整備にも力を入れており、サービスの強化に努めている」と実際の取り組みを紹介しました。
 高知県知事の尾崎正直知事は、「高知県の知名度はまだまだ低い。四国4県で協力し、マルチな関係をつくるためのPRを行っている」と述べ、地域間の1対1の関係をマルチな関係にしていく必要性に言及した後、地域間交流を行う際に、行政とどこまで、どのように連携していけばいいのかということについて問題提起を行いました。
 無鍚市市長補佐の倪斌氏は「無鍚市は商業都市として発展を遂げている。ソーラー産業をはじめ、アニメやゲームなどにかかわる文化産業を今後も強みにしていきたい」と語り、「日本企業との間での研究開発なども推進していきたい」と、今後の方針を説明しました。
財団法人自治体国際化協会理事長の香山充弘氏は、自治体の国際化の意義について説明しました。「各自治体は広い権限を持っている」と香山氏は述べ、今後は国ではなく地域が外交プレイヤーとして機能することが重要だと主張したうえで、異なる年齢層の人々を巻き込みながら、地域が国を引っ張っていく必要があるとしました。
 
 ここで前半部分が終了し、コーヒーブレイクに入りました。増田氏と山田氏が退席し、後半部分では新たに溝口善兵衛氏(島根県知事)、石川嘉延氏(静岡県知事)と李秀石氏(上海国際問題研究所日本研究室主任)、朱英璜氏(前中国日報社総編集長)がパネリストとして加わりました。

 朱璜氏は、メディア関係者という立場から問題提起を行いました。朱氏は、言論NPOと中国日報社が実施した日中共同世論調査の結果に触れ、中国国民の対日感情が改善したいっぽうで日本国民の対中感情が悪化したことに言及したうえで「日中間の氷は融けて春が来たが、水はまだ冷たい」と述べ、本当の相互理解はまだこれからであるとの認識を示しました。そのうえで、メディアが地方交流に関してもっと積極的な報道を行い、関係改善に努めていく必要があるとしました。
島根県知事の溝口善兵衛氏は、同県が行っている交流事業(文化交流、教育・学術交流、経済交流など)をいくつかを紹介しました。そのうえで、自治体による地域間交流が実際に住民に与える影響力の大きさについて触れ、「子ども時代に異文化に触れるという体験は将来の相互理解の促進に欠かせない」と述べ、青少年交流の重要性も主張しました。
 

 日本語で発言した李秀石氏(上海国際問題研究所日本研究室主任)は、地域交流と経済発展について意見を述べました。李氏は「中日共同体」を提唱し、両国関係と両国の利害とはもはや切っても切り離せず、中国と日本は運命共同体になりつつあると語りました。視野を広げ、「競争から戦略へ」をテーマに協力強化を図り、アジアや世界の発展に対して貢献していく必要があるとしました。
 静岡県知事の石川嘉延氏は、昨年締結25周年を迎えた浙江省との友好提携に触れ、県主体で行っている交流事業と民間主体で行っている交流事業について、それぞれ説明を加えました。さらに、四川大地震発生の際、同県が東海地震へ備えていたノウハウを生かすことができたとし、災害協力など新たな地域間協力の可能性にも言及しました。
 その後、パネリストと会場参加者との間で質疑応答が行われ、最後に司会の白石氏が議論の総括を行いました。白石氏は、初めての「地方対話」では想像以上に実りのある議論が行われたと述べました。また「地方対話」を来年以降も「常設対話」として本フォーラムに組み込むことが確認されました。さらに、「地方交流は国・民間の交流と同程度に重要な役割を担っており、そのための信頼の基礎をつくる必要があること」「交流を進める上で窓口になるような国の機関が要ること」「今後は環境や観光など、具体的分野に沿って関係強化に努める必要があること」など、いくつかの点においてパネリスト間で合意が得られたとし、会議を締めくくりました。