2日目-全体会議
【発言録】 分科会報告 印刷 Eメール

司会:白石 隆氏(内閣府総合科学技術会議議員)
劉 江永氏(清華大学国際問題研究所 副院長・教授)

政治対話

 中国側:
白 岩松氏(中央テレビ局 高級編集長)
 
2日間のフォーラムにおいて、お互い議論が白熱する成果を生むことことが出来ました。
私見ではなく、意見をまとめて2点報告します。
 
1.アジアの未来と貢献について話し合われた。
地理的、文化的なアジアの立ち位置を考える必要があります。まずは東アジアの地域に限定し、そこからアジアに広げていく形で行きたい。
2.アジアの夢、将来は、ヨーロッパの夢、将来であってはいけないということ。
ヨーロッパと同じ夢を見たことから、戦争という悲しい過去を招いたのです。
将来は平和なものでなければいけません。その考え方の中で、日中はどういう責任を果たすのか。過去、将来においても、時代の大きな波があり、波を和らげるためには両国の経験を共有し、助け合う精神をもつ必要性があります。中国は、歴史問題を忘れないことも大事ではあると同時に、恨みを残し続けさせないような流れを作ること。日本側は、中国の発展をどのように受け入れるのか。今新しいスタートラインに立っており、今後の両国の努力が必要です。

 日本側:
松本 健一氏 (評論家、麗澤大学経済教授)

政治対話では、日中の学生、政治家が同じ目線で話し合うことが出来ました。2025年を創造し、アジアの国々はどうあるべきなのか。具体的にどういうことを日中が協力していくのか、アジアの未来をどう築いて行くのか。そういう認識に、両国の考え方が変わってきています。将来、世界においてアジアが、GDPが世界の30-40パーセントを占める可能性があり、アメリカのGDPを中国が抜いているかもしれません。推測ではあるが、アジアの未来をどう作っていくのかを、政治家、有識者の間だけでなく、学生も共有し、そのような認識の統一が取れれば、発展性がある議論につながると感じました。

メディア対話

 中国側:
崔 保国氏(清華大学ジャーナリズム・コミュニケージョン学院副院長)
 
メディア分科会ではたいへん盛り上がり、メディアの重要な役割が分かってきました。中国と日本の両国国民は相手国に行ったことのない人が90%もおり、相手国に対するイメージはメディアを通してしかない、ということからもメディアの重要な役割が分かります。
次に、今回の討論内容について、簡単にまとめていきます。
 
1番目は中日共同世論調査のデータ分析で、その中で、中国の日本に対する印象は改善され、マイナス印象は55%で、前年より数値は下がりました。しかし、日本の中国に対するマイナス印象は72%もあり、改善というよりむしろさらに悪くなりました。その理由としては、中国人大学生の対日好感度は高いです。日本に対してよい印象を持っているかという問いで、学生データは世論データより9ポイントと高いということは、今までと違う大きな変化だといえます。次に、「日本といってイメージするものは?」という問いでは、昔は南京問題だったが、今は電気製品やアニメが上位にあります。その理由としては、日本の多くの有識者の努力と中国側メディアによる、日本に関するプラスの報道がなされるよう努力してきた背景があります。また自由に言論ができるインターネットの下、特に中国の若者たちはより活発に発言することができるようになりました。その一方で、日本の中国に対する印象が悪化した原因は、食品安全問題とエネルギー問題が考えられます。
2番目は、やはり毒餃子問題について激しいディスカッションがありました。日本の報道の量が多く、中国の報道の量の50倍もあるというデータもありました。「中国側は報道が不十分で、日本側は視聴率重視で過剰報道があるのでは?」という指摘があり、中日間にはまだ共通認識はできていません。ただ、私たちは、日本側ジャーナリストの専門性の高さと、批判精神を持っている点を学ぶべきだと思います。このジャーナリストとしての専門性、つまりプロの視点から、客観的かつ公正な報道をすることはまさに中日メディアの共通点であると思います。メディアはたしかに重要ですが、誇張しないように注意しなければなりません。劉浩遠さんも会議でおっしゃっていましたが、中日交流の媒介となれるのはメディア以外、映画やドラマなど様々です。
3番目はインターネットについて。メディア分科会はニコニコ動画で生放送され、4000人以上の視聴者がいた。日本のインターネットは非常に普及しているが、中国でも今年は、4億人がインターネットを使用していました。このインターネットの普及は伝統的なメディアにとって、新たなチャレンジをもたらしています。
4番目は中国の政府によるメディア規制問題について。確かにある程度の規制はありますが、今の中国ではメディアの市場化とインターネットによる言論自由の傾向などで、今の中国は情報に関する規制はかなり改善されてきました。一番大事なのは、つまりメディア関係者のかけがえのない役割は大量な情報の中に、専門視点からの分析とすぐれた質の報道内容ということだという結論は、中日両国メディアで合意に達しました。
 
日本側:
山田 孝男氏(毎日新聞政治部専門編集委員)
 
私は印象に残った点について報告します。
まずは世論調査で両国とも相手国に行ったことがないのに、相手国に対するイメージがよくないということについて、両国民は自国のメディアに頼っているところが多いことが分かりました。
また、日中両国のメディアはお互いよく知らないのではないかということです。例えば中国側はツイッターが使えないのではないかという日本側からの質問に対し、実はそうではないよと中国側から反発があり、或いは産経新聞での中国に対するマイナス報道は政府による制限という疑惑など中国側にも誤解があり、両国はお互いよく知らないことが分かりました。
そこで、両国のメディアの信頼関係を築くことが大事なのではないかと考えます。また、フロアから具体案はなかなか出てこないという声があったが、私は具体策を考えるより、こういう対話をすることに意味があると思います。そして、客観的報道とは何かについて、日本側パネリストの小倉さんは「メディアは権力であり、権力だから客観的なわけがない」といいました。また、毒餃子問題を日本側から提起されたが、中国側は「またか」と反発しました。日本側の報道は過剰報道ではなく、消費者視点から欠かせない報道だと主張しました。次に、インターネット革命について議論がありました。メディアという言葉は時代遅れで、ネットで双方の国の事情が知られる。ただ、瞬時に大量の情報を入手できるが、情報量が過剰であり、必要なメッセージは何かなどプロからの、より質の高い情報の重要性も無視できません。
ジャーナリストの専門性は日本、中国だけでなく、世界の全ての国にとって重要なことです。今回は私が第6回目の参加になるが、中国の若いジャーナリストも来場して、活発に発言し、深い内容のディスカッションとなり、今回のメディア対話は飛躍的発展したと思います。
 

経済対話

 中国側:
桑 百川氏(対外経済貿易大学国際研究院院長、教授)  
 
アジアの持続的な発展のために、経済統合をはかることが重要です。中国側のパネリストは、中国のGDPが世界第二位になっても経済強国になったわけではないという。なぜなら解決すべき問題がたくさんあるからです。例えば、輸出依存・地域格差・内需拡大・個人の所得格差・経済発展方式の転換・環境問題などがあげられます。
さらに中国が世界で強国になるには、世界にチャンスをもたらすと思われる必要があります。経済の発展(内需拡大)は多くの投資と貿易のチャンスをもたらしました。このような新しいチャンスを見逃すべきではありません。
金融危機が過ぎ、輸入拡大をすすめ、日本とEU諸国に強大な市場を提供する。中国の発展で多くのチャンスがあるだろう。沿海部だけでなく中西部地域に大量の投資をしていく。中日経済の発展のためにはともに頑張っていくことが必要です。
日系企業は技術協力に目を向けるべきではないか?しかし、これは中国の一方的な求めではありません。双方に利益をもたらします。内需拡大のなかで社会保障制度の整備は不可欠です。労使紛争の低下も重要です。通貨の統合についても中日協力を進めるべきです。さらに経済協力のためにFTAに対する研究を推進し交渉をすべきです。
 
 日本側:
小島 明氏(日本経済研究センター研究顧問)
 
日中両国のパネリストの一致した見解は、リーマンショック以後アジアは一足早く景気が回復した、アメリカは市場経済に対する反省を示したのと異なり、アジアでは市場を修正し、資源配分の是正をすべきという考えであります。
人民元の弾力化政策について。ドル以外の多くの通貨についても上昇がみられ、過度な輸出依存の調整が必要です。労働争議や製造業の比率が高すぎることも問題です。対策としては生産のペースを落とすのではなく、生産のミックスをすることです。
次は持続的成長のための具体的なモデルは低炭素社会の追求で、つまりリサイクルを積極的に進めるということです。科学技術の追求にはイノベーティブな人的資源が重要です。少子高齢化、所得格差の是正は高度経済成長後の日本の失敗の体験として、教訓として活かせるのではないかと思います。
 

地方対話

 中国側:
蔡 建国氏(同済大学国際文化交流学院院長教授)

前半は、防災・減災、環境、高齢化といった問題について話し合われました。具体的には、都市の管理、自然災害の回避方法について議論がなされました。市民が防災に対してどのように目を向けていくのか。災害があったところでどういう政策がされているのか。災害に対する予防の能力を向上して行く必要があります。
後半は、観光、経済について話し合われました。具体的にどのように事業を進めていけばいいのか、中小企業の発展についても話し合われました。今現在、中小企業や県レベルにも目が向き、両国の地方に対するニーズが高まっています。日本の中小企業の中国進出において、具体的には両国が作る協力委員会など、お互いのマッチングができる仕組みを作るべきです。
観光については、日本に中国の方が観光してくることにより、中国人と日本人と人材の交流が深まり、両国のお互いの理解、認識の誤差を埋め合わせていけると思います。お互いが学び合う時代であり、互いの足りないところを埋め合う奉仕の精神が必要です。
 
 日本側:
山田 啓二氏(京都府知事)
 
初めに、この分科会が具体的な解決策を提示できる場であると実感しました。高齢化社会、エコなど、蓄積されたプランを両国のパネリストが紹介し、その考え方や計画をアジアに広めていくよう話し合われました。実務的経験を学びあうことによって、Win-Winの関係になれると感じています。
観光、投資において話し合われました。ビザの緩和がされ、中国の旅行者が日本に観光しにくることにより、さらに人と人との交流がなされ、文化の相互理解に貢献すると感じています。そのためには、受け入れ体制を整えていく必要がある。具体的な相談にのれる支援機構が作れるのではないかと、提言もされました。今回のフォーラムでは、地方対話の可能性について感じることができた貴重な機会でした。
 
 

外交・安全保障対話

 中国側:
呉 奇南氏(上海国際問題研究院学術委員会、副主任、研究員)
 
この分科会は前回までは、安全保障のみの対話でしたが、今年は外交の話し合いも加わりました。率直ですが、落ち着いて実務的な話をすることができました。それぞれの関心について、相手からの真摯な答えがありました。
全体としては5つ問題がありました。中日米のトライアングルの問題ですが、中国側の答えは長期的にみるべきです。トライアングルの関係はおだやかだと感じています。しかしアメリカの東アジアにおけるプレゼンスは認めるが、覇権は認められません。
東アジアには2つの問題がある。台湾と朝鮮半島ですが、台湾問題は落ち着いています。朝鮮半島は6カ国協議の一員として、北朝鮮に働きかけて6カ国協議に復帰させるべきでは?との声もあります。中国と朝鮮は同盟国だとよく言われるが、もはや中国と朝鮮は同盟国ではありません。中国の文書では南中国海は中国の中核的な利益は存在するが、南中国海自体はそうではありません。中国の軍事透明性は高められているので、防衛対話を強化すべきだと考えています。 
 
日本側:
若宮 啓文氏(朝日新聞社コラムニスト)
 
安全保障対話は今年が一番良かったと評価をいただきました。議論の食い違いはありましたが信頼感ができてきているため、冷静な話し合いができました。日本の方針は専守防衛だが、議論では日本が攻めました。中国の軍事拡大が世界の関心ごとになっているからです。
新鮮に感じたのは中国側が、「アメリカと覇権を争う気はない。過去にアメリカと覇権を争って負けた国が2つある。日本とソ連である。」と言ったのに対し、日本からは、「ソ連の敗北は自滅ではないか。民生部門をおろそかにしたからでは?」との声が出ました。さらに日本の失敗はシビリアン・コントロールがなかったからであると述べ、中国にシビリアン・コントロールはあるのかといった疑問が出ました。中国からは軍は共産党の支配下にあるとの返答がありました。
 
【発言録】 全体会議 基調講演 印刷 Eメール
宮本 雄二氏(在中国日本国大使館 前特命全権大使)
 
ご来場の皆様、本日このような形でお話できる機会をいただき大きな喜びを感じ、光栄に思う。第一回 東京‐北京フォーラムは2005年北京で行われたが、国交正常化以降最も厳しい時代、冬の時代であった。これに危機感を感じた人々が民間外交で両国関係を切り拓かなければと始めたものだ。日中間の問題は互いに外交問題であって、国内問題である。相当リスクの高い問題であるが、深刻になればそれに近づきたくなくなるのが人間というものだ。敢えて厳しい時代に対話の場を開かれたことに敬意を表したい。アジアの未来と日中の貢献というテーマの下で、議論の内容も充実していたと聞いた。継続は力なり、と言う。日中両国が支援を強化して、観光などの交流を進めていくべきだ。この2国間関係は重要な発展のチャンスを与えられ、経済のグローバル化によってアジアがまとまる重要性は増している。中国経済の規模はこの10年で3倍になった。もはや日中が戦うことは許されない。すべてが絡み合う世界において、世界に貢献する日中関係を構築すべきだ。日中は狭い世界から解き放たれ、自由な世界の中におかれた。温家宝首相が日本の国会で演説し、日本の過去の侵略に対するおわびを評価した。胡錦濤主席と福田首相の共同声明では、戦後日本の生き様を平和な世界の発展に貢献したと評した。すなわち中国が現状の日本であれば軍国主義は復活しないと思っているということであり、世界の発展のために協力するとに同意したということだ。ただ、これは日本が現状を変えなければということである。これが戦略的共通利益のための互恵関係なのであり、小泉首相時代などの反省から得られる重厚なものだ。確かに台湾や東シナ海の問題はあるが、日本との間に長い間存在した歴史の問題が背景に退くことで、発展のチャンスが与えられた。安定した、予測可能な日中の協力関係を築けるか、経済はWin-Winの関係でなければならず、利益を多くの人が容易に認識してくれるかが問題だ。08年の共同声明の中では、日中か世界の潮流に沿ってアジア太平洋の未来をつくり出すとした。ただ、未だ脆弱な部分はあり、チャンスを生かさなければ関係を発展させることはできない。世論調査においても、日本人の72.0%、中国人の55.9%が相手によくない印象をもっている。日本人の中国への印象は変化が見えず、中国人も歴史の問題を意識している。相互信頼、相互尊敬の関係にしていきたい。ナイーブと言われるかもしれないが、限界の存在を知った上で、それでもやることをやる。まずは会って話すことだ。大規模な交流を推進し、青年交流、自治体交流、観光などを行いたい。日本を訪れる中国人は日本によい印象をもって帰る。この点にかんしてはぜひ来年の世論調査で聞いてもらいたい。人の交流は好感度をあげるのだろうか。質の高い相互理解に支えられないと発展は得られない。中国にとっての台湾問題の重要性を世界にわからせるのは難しく、中国には当たり前でもなぜそうなのかとは言えないと思う。どういう客観的基準で中国の国境は決まっているのか。どうしてひとつでなければならないのか。こういうことは深い知的作業を要す、なんでわからないのか、などと思わず、相手が納得するまで掘り下げること。このフォーラムのような場が発展していくと確信している。安保についてだが、08年の声明ではハイレベルな相互訪問の強化を決めた。安保が政治的信頼に基づくという見解に立っている。中国の軍備増強は客観的事実であり、透明性が重要だ、中国は今年経済規模が日本を抜き世界2位になる。世界の中で大きくなり、時代の要請に答えようとする中国に敬意を表する。世界の中でのあり方を語り、実行することで中国脅威論は自然に消えると考える。

 

 
 蘇 寧氏(中国人民銀行元副総裁)
  
皆様のお話に深い印象を持ちました。司会者はうまく議論をマネージメントしており、パネリストのご発言は素晴らしかったです。
 
アジアの経済発展と両国の経済金融の統合についてお話します。

第一に金融危機の中で、アジア経済は新たな視点を持つことが重要です。金融危機によって、世界経済は大きく低迷しておりますが、欧米に比べてアジアは早く回復することができました。しかし、アジアには不確定要素が存在し、それを慎重に注視する必要があります。アジア経済のパフォーマンスは、ここ十数年の取り組みと関係があります。この十数年間、アジア諸国はプルーデンシャルなマクロ経済政策をとってきました。アジア通貨危機後、アジア諸国はソブリン債務を効率的に運営し、外貨準備を蓄積し、リスク対処能力を強化してきました。内需によって経済成長を牽引してきました。

二番目は金融の安定化です。アジアは大幅な金融改革を実施し、金融機関の自己資本を充実したものとし、会社のガバナンスを改善し、金融監督を強化するなどしました。マクロなプルーデンス政策が重要です。次に、地域における金融協力についてです。金融危機の外部性を認識することが重要です。自国だけで金融危機を防ぐのは無理であり、経済や金融の監督に共同して当たるために、実務上の整備の協力が必要です。また、日中関係がさらに開かれたWin・Win関係になることが重要です。相互補完性を十分に発揮することで、将来の成長余地は大きいものとなると思います。より包容力のあるものになるでしょう。
両国の協力は経済成長の必然的な道です。大同を求め小異を残しながら、貿易を増やし、投資協力、金融、インフラの相互建設、域内のインター・コネクティブな状況を実現するべきです。発展していくことが、共通の願いです。それは、自国だけの利益追求では成り立ちません。協力のメカニズムが確立され、強固なものになりつつあります。経済的に両国がお互いに助け合って発展することが重要です。

三点目として、Win・Winな関係とすることが大切です。中国と日本は大切な隣国同士です。そのためには、3つのことが考えられます。1つは、二国間での経済協力を強化していくことです。日本はアジアの他国にはないブランド力などの強みがあります。中国はいまだに途上国である一方、豊富な人材やフルセットの工業生産能力があります。経済構造の調整を行い、グリーン、ハイテクなどの分野で新たな経済の協力を行うべきです。マクロ経済の対話を強化し、マクロ的観点から有効な政策を維持して、危機からの回復を支え、APEC、G20 などの枠組みを強化すべきです。また、日中両国はドーハ・ラウンドを推進するべきです。3つ目は、金融協力を推進することです。地域金融協力はいまだ初期段階にあります。チェンマイ合意のマルチ化を行い、ASEAN+3、+6などの政策対話を推進することが重要であり、世界経済の急速な発展につながると思います。
 

 

武藤 敏郎氏(株式会社大和総研理事長 前日本銀行副総裁)

フォーラムのメンバーの皆様、ご来賓の皆様、このようなあいさつの機会を得たのは大変光栄です。日本と中国の経済発展はアジアの発展の基盤です。世界経済のエンジンとなってきた日本経済は90年代に入って鈍化しました。資産バブルの崩壊から始まり、名目GDP0.4%でほとんど成長していません。以前は10%を超えていたのにも関わらずです。バブルで構造的な変化を起こっています。アジアの経済のためにもデフレ脱却を進めなければなりません。財政金融政策は政治の強力なリーダーシッ プとアジアとの協力の下、進めていかなければならないと思います。

中国は改革開放以降、経済成長を進め、世界第二の経済大国となりました。理由としては資本の増加と輸出増加があげられます。世界の工場から世界の市場に変わりつつあります。自動車の売上が爆発的に成長しています。雇用者所得を増やすために企業貯蓄が大きすぎることを考えると労働分配率を引き上げた方がよいと思います。現に賃金引き上げのストライキが起こっています。
 
中国の成長モデルを変えるには3つのことが必要です。1つは少子高齢化に伴う社会保障の整備です。消費意欲を拡大するために労働者の将来不安を除く必要があります。サービス産業の拡大や環境・省エネ関連の産業を進めることも必要です。
 
金融緩和政策の変更と価格上昇に歯止めをかけている中国当局のマネージメ ントが功を奏し、バブルの可能性は低い。的確な政策を続ければ成長を続けられるでしょう。しかし、長期的にみると楽観はできません。中国の発展はアジアの発展にとって不可欠です。
 
中国の制約要因について、第一は高齢化の進展です。中国の65歳人口比率は2010年に8%で、日本の65歳人口比率は23%です。このところ35年で15%増えた。中国では今後30年で同じことが起こります。第二は高齢化に伴う社会保障経費の負担の増加です。社会保障制度の持続可能性というのは難しい問題です。第三は環境問題です。都市インフラの不足と農村の荒廃は深刻だ。中国は資源の効率化が不可欠で、1単位あたりの使用エネルギーが中国は日本の6倍、米国の3倍です。 長期的にみてこれらの潜在的要因が顕在化して経済成長は鈍化すると考えます。それに対して、日本は先に経験している国として解決モデルを提示できます。
 
アジアの貿易は活発になってきています。資本移動の自由化や為替レートの完全自由化がより一層貿易を推進させます。人の交流が相互理解の早道です。中国側は豊富な労働力と潤沢な資金があり、日本側は高い技術とノウハウの蓄積、高品質な製品といった強みがあるので、アジアの中でそれぞれの強みを活かして相互補完をして協力していくべきです。
 

 

 孫 尭氏(黒竜江省人民政府副省長)

 地域の統合は世界経済の重要な推進力である。中国東北部は最も重要な経済の中心地です。黒竜江省は日本との交流を活発化しています。海を使う輸送路を作り、資 源・物資・人的往来がそれらを通じておこなわれる。中国の南部地域では一足早く香港などで経済が活性化したが、黒竜江省は中国ではとてもユニークな存在です。とても資源の多いところです。寒いがゆえに雪が多く殺虫作用があり、三大穀倉地域の一に数えられる。冬が寒くて農薬をあまり使う必要がありません。冬場と夏場の温度差が大きいので作物の品質もいい。約1000ヘクタールの穀倉地帯のうち7分の1が黒竜江省に存在します。中国人宇宙飛行士7人のうち2人が黒竜江省出身です。今年の5月にロシアとの間にパイプラインができました。また、黒竜江をまたがる橋を作り、鉄道を通し、間宮海峡を通じて日本とつなげたい。この「海のシルクロード」は3国をつなげる。企業誘致を積極的におこなっているので、日本の企業も黒竜江省の企業とタイアップをお願いしたい。バイオ、科学などの基盤もしっかりしています。原子力発電所の開発では日本との協力を望んでいます。ハルビンなどでより多くの日本企業の進出が行われています。大学も実力があるので、インフラ・観光面も含めて日本と協力したい。日本との協力はこれからの課題であります。
 

 

小林 陽太郎氏(富士ゼロックス元会 長)

おはようございます。第6回のフォーラムは、第1回から第5回までを上回る重質的で率直な講演、討議、分科会だったとうかがって、これよりうれしいものはありません。昨日まで、私が20年ほど毎年主催している会合があり、このフォーラムに出席できませんでした。実は今年、そこでのテーマは「不確実性」でした。哲学者、物理学者、科学思想家、経営者などが2日半議論をしておりました。  

確かに世の中はすべて不確実なものとも言えますが、アジア、世界の将来、日中の関係、それだけでなく日本・中国そのものの現在・将来も、不確実性でいっぱいです。科学者などはどんな考えでしょうか。興味深いのはトランス・サイエンスというものです。全てを科学で解決できるか、不確実性は科学の進歩によって存在しないようにできるかというとそうではありません。科学と政治あるいは経済の重なる部分が増えてきています。科学は事実によるものです。一方、政治は極めて状況的で人間的で合理を許さない分野です。そういう分野が増えてきており、 科学には頼れないときに、どういう態度で臨むべきなのでしょうか。それは、広い深い教養と歴史の正しい認識、そして謙虚さとを併せ持った人間を一人でも多く、政治、経済、外交、草の根に送ることです。相互信頼が大切となります。  

不確実性に対処して問題解決をするには、100点でなくても、さらに進歩の努力を続けることが大切です。世の中の実態とはそういうもので、日本でも、中国でも、先人はそういう能力の積み重ねをしてきました。現在はさらに、過去よりも大きな不確実性があるといえます。だからこそ、このフォーラムで、参加メンバーの信頼醸成を行うことが重要です。率直な飾らない議論の認識が広まりつつあります。私はこのフォーラムのスタートに同意しただけに、東京・北京フォーラムの内容の着実な充実はうれしく思います。アジアの将来において日中関係の重要性ほど確実なことはないといわれれば、その通りです。ただ、それをいかに実現するか、そしてそれを欧米に結び付けるには何が必要かというものがありま す。それには皆さんの議論がつながっているのです。多くのことができましたが、両国関係にはまだ少し脆弱性が指摘されています。お互いに謙虚さと相互信頼を基礎にして、完全にはなくならないが、不確実性を小さくする。そしてそれをアジア全体の喜びとして、現実のものとすることが大切だと思います 
 

 

 呉 建民氏(外交部政策諮問委員会 委員

ご来席の皆様おはようございます。全体会議で考えを述べる機会を得られてうれしく思います。私は4回目の参加ですが、これまで4回の感想としては回を重ねるごと によいものになっているし、影響力も大きくなっていると思います。このフォーラムを創設された方々に敬意を表したい。不屈の精神を持っておこなわれたのだと思います。そういう精神がなければ発展しなかったでしょう。アジアは利益共同体として括らねばなりません。小林陽太郎さんも不確実性ということをおっしゃったが、今、世界は曲がり角にきています。世界には2つの流れがあり、その1つは平和協力の道で、もうひとつは冷戦、対抗の道です。この2つの流れの戦いが21世紀の人々の運命を決める。ここにもまた不確実性があります。力を入れて利益の共同体をつくらねばなりません。意見論争はあるが、どうしたらいいかと考えた時、歴史に鑑みると、共通利益をどう発見し、最大化していくかで発展していくのだと思います。

気候変動、低炭素社会など、科学的発展観を中国の指導者は出しています。こうい う分野は日本が世界のトップクラスです。中日で密接に協力すれば大きなイヴェントを実行できます。たとえば、日本との協力によって、「空気がよくなった」「水がよくなった」と、中国の普通の人に目に見える結果があれば、関係は確固たるものになるでしょう。ドルに他の通貨がとってかわることはできないでしょうが、米国は国と個人で53兆ドル、GDPの3倍以上の借金があります。それなのに、米国は金を何に使うか相談もしてくれない。共通の脅威に直面しているのだし、相談して利益を得て、損失を最小化するためにどうするかも話し合いたい。共通通貨はどうするのか、信頼できる共通通貨ができれば、豊かになるだろうといわれます。 安全保障でも何かできないか。みんな石油は必要でしょう。発展のためには古い固定観念を除かねばなりません。もともとは戦争で20世紀は問題解決をしてきたが、 21世紀の戦争でなにができたか。イラクは。アフガンは。そう言うとアメリカ人も苦笑します。戦争にお金やパワーをつぎ込んでも何も解決できない。それが新たな状況なのです。時代が変わったと考えねばなりません。戦争から平和へ、という大きな変化です。これまでは米ソでどれだけ軍備拡張できたかで世界を牛耳っていくという時代でした。日本も中国も世界を前進させ、古い考えを取り除く。中日関係に問題は避けられないが、共通利益に向かっていき、努力することで互恵関係が築かれ、アジアの将来をよりよくしていけるだろうと思います。
 
 
 
 
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工藤 泰志(認定NPO法人言論NPO代表)

今回のフォーラムは、階段を1つ上がったなと感じました。このフォーラムは2005年に冷え込んだ日中関係の中で議論を進めていこうということで始まったものです。今回は議論の質を上げることと、会場の声を大事にすることを意識したが、ほとんどの分科会が満員で議論が行われた。このフォーラムも今回で6年目となり、継続することは大事であり、かなりいい段階にきたのではないかと思います。しかし、現状に満足するのではなく、常に前進しなければならない。来年に向けての次の一歩を、中国日報とやっていきたいと思います。

 
 
高 岸明氏(中国日報社編集委員会委員、秘書長)挨拶
 
今回のフォーラム開催にあたり、2000名ほど来賓の方々がいらっしゃいました。今年のテーマ「アジアの未来と日中の責任」の下、政治・経済・メディア・地方・安全保障という5つの分科会で、率直に意見を交換し合い、多くの建設的な意見が出ました。会場ではとても活発に議論を行い、現場はとても暑い雰囲気でした。この8月の末の東京の天気のように暑く、どんなに硬い氷でも溶けないわけがないだろうと思います。
 
また、中国と日本の間に存在している多くの問題を発見し、それをさらに深く分析して建設的な意見を出すことができました。これは、皆様の知恵のぶつかりでもあるし、思想の交流でもあると思う。このすばらしい交流ができたのは、このフォーラムがあったからではないかと思います。そして、皆様のおかげで、この東京‐北京フォーラムは本当にハイレベルで新しいアイディアに溢れ、充実したフォーラムとなりました。東京-北京フォーラムは交流の場として、様々な話題と意義ある意見が出され、中日関係の改善に独特な役割を果たしたといえます。
 
この美しい東京で、多くのご来賓のすばらしい発言を聞き、非常に勉強になりました。第6回 東京-北京フォーラムが成功裡 に開催されたことに大変嬉しく思っています。日本から離れるというさびしい気持ちもあり複雑ですが、しかし一番言いたいのは「感謝」です。ご来賓の皆様、参加者の皆様、また言論NPOのスタッフと実行委員会の皆様の努力がないと、このすばらしいフォーラムが開催することができなかったと思います。そして中国駐日本国大使館、中国人民対外友好協会等ご後援くださった皆様に感謝を申し上げたい。またメディア関係者の皆様にも感謝を申し上げたいと思う。そして、同時通訳の皆様とボランティアの皆様とホテルのスタッフにも感謝を申し上げたいと思う。
 
中国ではある古い言葉があります。「千言万語は一つの言葉になる」という言葉があります。私はたくさんのお話をしたいが、ここでは一言で挨拶を終わらせたいと思う。
それは「謝謝」です。ありがとうございました!Thank You!
 
 
 
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  31日 全体会議

「第6回 東京-北京フォーラム」の最終日にあたる8月31日午前9時より、全体会議が行われました。前半部では、日本側から宮本雄二氏(在中国日本国大使館、前特命全権大使)、武藤敏郎(株式会社大和総研理事長、前日本銀行副総裁)、小林陽太郎氏(前新日中友好21世紀委員会日本側座長、元経済同友会代表幹事)、中国側から蘇寧氏(中国人民銀行元副総裁)、孫尭(黒龍江省人民政府副省長)、呉建民氏(外交部政策諮問委員会委員)が、それぞれ基調講演を行いました。後半部は、各分科会から前日の報告が行われ、最後に主催者を代表して言論NPO代表工藤泰志と中国日報社編集委員会委員、秘書長の高岸明から閉幕の挨拶がありました。
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2日目-全体会議  プログラム・参加者一覧 印刷 Eメール

 

2010年 8月 31日 (火)  フォーラム全体テーマ:アジアの未来と日中の貢献
 
 敬称略
9:00 -
 
 全体会議
 
  9:00

10:00







 
 
総合司会


 

 劉 江永
(清華大学国際問題研究所 副局長・教授)
 
 
 日 本 側
中 国 側
基調講演











 

 宮本 雄二
在中国日本国大使館 前特命全権大使

 蘇 寧
(中国人民銀行元副総裁)

 武藤 敏郎
株式会社大和総研理事長、前日本銀行副総裁

 孫 尭
(黒竜江省人民政府副省長)

 小林 陽太郎
富士ゼロックス元会長

 呉 健民
(博覧会国際事務局名誉議長)
 
    分科会報告
   
 10:10

10:50


 
【 政治対話 】 報告
【 メディア対話 】 報告
【 経済対話 】 報告
【 安全保障 】 報告
【 地方対話 】 報告
   
10:50
- 11:50
  ディスカッション
   
11:50
- 12:00
  挨拶